仕事と働き方の未来

地方への移住促進 ― 各国の取り組み、移住のインセンティブとは

田舎への逃避行…テレワークで地方移住が容易になりました。

田舎への逃避行…テレワークで地方移住が容易になりました。

Victoria Masterson
Senior Writer, Forum Agenda
  • ポルトガル、アイルランド、オーストラリアなどの国々は、地方移住のインセンティブを提供しています。
  • 2020年、人口わずか115人のイタリアの村は、4万4,000ユーロ(約4万7,000ドル)以上の移住資金を提供しました。
  • 新型コロナウイルス感染拡大とテレワークによって以前よりも移住の可能性が開け、地方に移住したいと思う人が増えています。

田舎はあなたを必要としています。あなたが移住したいと言えば、助成金を提供してくれる地方がたくさんあるのです。

パンデミック(世界的大流行)によってテレワークが実施されるようになったことで、地方移住の可能性が開かれました。

ここでは、地方移住助成金の事例を紹介します。

ポルトガルにおける地方への移住

2020年、ポルトガルはEmprego Interior MAISInland Employment PLUS)(エンプレゴ・インテリオル・マイス:内陸部雇用プラス)という地方移住助成金制度を開始しました。

この制度では、地方に移住する労働者は最大4,827ユーロの資金を申請することが可能です。フィナンシャルタイムズ紙によれば、ポルトガルの多くの村において、これは小さな家の家賃一年分をまかなうことができる金額。ただし、申請者は一年以上滞在することが条件です。

アイルランドでの移住のインセンティブ

アイルランドでは昨年、政府がRural Future policy(地方の未来政策)の一環として、地方の町や村に労働者を誘致する計画を発表しました。この計画には、地方に移住する労働者への移住助成金や租税優遇措置も含まれています。

また、アイルランド政府は10億ユーロのRural Regeneratin Fund(地方再生基金)を通じて、地方に高速インターネットアクセスを備えた400のテレワーク・ハブを作る資金を提供しています。これらのハブは、市役所や劇場、映画館などの建物を改造して作られる予定です。

A tweet from @wef
これまで、地方は都市に人を奪われてきました。テレワークという新しい時代は、人の流れを変えるきっかけになるかもしれません。 Image: Twitter/@wef

地方移住を求めるイタリアの呼びかけ

イタリア南部では2020年、中世の趣きを残す村、サント・ステファノ・ディ・セッサーニオ自治体(住民115人)が、年間最大8,000ユーロの助成金を三年間にわたって交付するといった移住計画を立ち上げました。

この計画には、「破格の家賃」で提供される家や、スタートアップ企業に対する最大2万ユーロの返済不要の助成金といったものまで含まれています。

この自治体は、地方の「過疎化・砂漠化」と闘いたいのだと言います。サント・ステファノ・ディ・セッサーニオの115人の住民のうち、41人が65歳以上で、20歳未満はわずか13人だそうです。

米国やオーストラリアへの移住

米国北東部のバーモント州では、転入してくる労働者に最大7,500ドルの費用を支給。

本制度では、バーモント州のホームオフィスやコワーキングスペースでテレワークを行う労働者を対象としたNew Remote Worker Grant(新テレワーカー助成金)なども提供しています。

オーストラリアもまた、地方に移住する場合、最大6,000オーストラリアドルを支給するなどの移住支援を実施。

このほか、スペイン、ギリシャ、スイス、クロアチアなどでも、金銭的な移住インセンティブが提供されています。

A chart showing the percentage of U.S. adults who said they'd prefer to live in a small town/rural area
パンデミックによって、アメリカでは都市から地方への移住が加速しています。 Image: Gallup

テレワーカーは移住が容易に

地方は長い間、雇用、人材、投資をめぐって都市と競争してきました。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大以降、テレワークという新しい働き方によって、人はどこにいても仕事ができるようになったのです。

アンケート調査を見ても、地方移住への関心が高まっていることがわかります。2020年のギャラップ(Gallup)社の調査によると、米国の成人の約半数が「小さな町か田舎に住みたい」と回答しています。

マイクロソフトが最近行った31カ国31,000人を対象とした調査「2022 Work Trend Index(2022年ワーク・トレンド・インデックス)」では、1990年代半ばから2010年代前半に生まれたZ世代の労働者の52%が、テレワークができるようになったため移住を検討していると回答しています。

デジタル・デバイド(情報格差)を解消し、必要なオンラインサービスや機会へのアクセスをグローバルに可能にするため、世界経済フォーラムは2021年年次総会で「エジソン・アライアンス」を立ち上げました。「エジソン・アライアンス」は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための基盤としてデジタル・インクルージョンを最重視する官民双方のリーダーたちで構成され、「2025年までに、最低でも健康、金融、教育の分野において安価でアクセス可能なデジタル・ソリューションを提供することにより、世界中の10億人の生活を向上させること」を目標に取り組んでいます。

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