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気候変動対策に挑むビジネスリーダーが、目標を見直すべきその理由とは

Tackling climate change will require working toward shared goals such as developing solutions to scale carbon capture or decarbonize infrastructure.

気候変動対策には、CO2回収の規模拡大やインフラの脱炭素化のためのソリューション開発など、共通の目標に向けた取り組みが重要。 Image: Photo by Markus Spiske on Unsplash

Shunichi Miyanaga
Chairman of the Board, Mitsubishi Heavy Industries
本稿は、以下会合の一部です。ダボス・アジェンダ
  • 気候変動対策には、CO2回収の規模拡大やインフラの脱炭素化のためのソリューション開発など、共通の目標に向けた取り組みが重要。
  • 気候変動対策に関する共通の目標を達成するためには、企業が実績のある技術を拡大し、必要な資金を動員することが重要。
  • 気候変動への取り組みを効果的に実施するためには、企業は「成功」を再定義し、地球のために長期的にポジティブな変化をもたらす共通の目標にシフトすべき。

今日、多くの国が地球温暖化対策の重要性と緊急性を認識していますが、温室効果ガス排出量のネットゼロを実現する最善の方法や、そのためのコストをどのように分担するかについては、依然として大きなばらつきがあります。残念なことに、私たちが住んでいる世界は二極化しており、これが文化間、地域間、さらには世代間などで多くの対立を生んでいます。その結果、信頼の低下を招き、気候変動対策の進捗を遅らせるばかりでなく、他の社会的・政治的課題にまで波及してしまうのです。

この課題に取り組み、最終的に信頼を築く上で、企業は重要な役割を担っています。企業は時として各国政府よりも機敏で、地域社会が単独で行うよりも大きなリソースを集めることができます。しかし、地球に長期的な変化をもたらすためには、企業は成功を再定義し、目標を共有することにシフトしなければなりません。考え方やアプローチを変えることで、気候変動の目標を達成するための取り組みや協力体制を構築するために必要な信頼と支援を得ることができるのです。

今後の課題

130カ国以上が、2050年またはそれ以前に、ネットゼロエミッションを達成することを約束していますが、その達成方法について詳細なロードマップを定めている国はほとんどありません。昨年11月にグラスゴーで開催されたCOP26サミットの新たな誓約のすべてを実行したとしても、地球の気温は、2050年までに産業革命以前のレベルより少なくとも1.8℃上昇すると言われています。もし私たちがこの約束を実行しなければ、気温は2〜3℃上昇し、地球に壊滅的な結果をもたらす可能性があります。

Climate change goals
Climate change goals Image: Visual Capitalist

持続可能なシステムとソリューションを構築するためには、多くの変革が必要です。しかも、迅速に。IEAや他のグループが設定した優先事項には以下が含まれています。

  • 既存インフラの脱炭素化。例えば電力会社が、石炭や石油からよりクリーンな天然ガスや、最終的にはアンモニアや水素のようなゼロカーボン燃料に切り替えることを支援する。
  • CO2回収・有効利用・貯留技術(CCUS)のスケールアップと、産業部門における回収から輸送、貯留、利用に至るバリューチェーンを構築する。
  • エネルギー、産業、長距離輸送部門に生産、輸送、貯留、そして複数の利用先を網羅した、水素エコシステムを構築する。

CO2回収の規模拡大やインフラの脱炭素化などの目標に取り組むためには、実績のある技術を拡大し、必要な資金を動員するために、企業が注力する必要があります。また、それぞれの目標から社会共通の目標への転換も必要です。

Climate Change Pledges
Climate Change Pledges Image: IEA

変化を加速させるために必要な取り組み

共通の目標は、1つの組織だけでは達成できません。そのためには、他の企業と協力して、単独では提供できない様々な能力を最大限に発揮する新しい取り組みが必要です。

  • 競合企業との連携 協力関係を築くためには、これまで提携してこなかったような企業と緊密に連携し、専門知識や部門の能力をフルに活用する必要があります。かつては競合としか考えていなかった企業や、スタートアップ企業、業界団体、学術機関との協力を意味します。
  • データの共有 新しいソリューションやビジネスモデルの多くは、部門を超えて共有されるデータに依拠しています。環境への影響を正確かつ標準化したデータを提供することで、リーダーが気候目標に向けた進捗状況を測定し、行動を加速するのに役立ちます。
  • 競争に対する新たなアプローチ 競争の本質は変化しています。持続可能かつ強靭性のあるソリューションを構築するためには、新しいパートナーシップにより、多くのパートナーによって構築された能力を最大限に活用する新しいビジネスモデルを開発しなければなりません。企業として利益を得るためには、一部の知的財産を機密にしておく必要がありますが、協業も進んでいます。

その一例が、ノルウェーの第三者施設で行われた当社グループ独自のCO2吸収液の実証試験です。この新しい吸収液を使って、排ガス中のCO2の95〜98%を回収することに成功しましたが、これは現在の業界標準をはるかに上回るものです。このような技術を共有することで、パートナーとのネットワークを構築し、業界の標準を設定することで、より大きなビジネスの機会を得ることができると期待しています。

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信頼関係を築くための新しいアプローチ

このようなパートナーシップや取り組みが成果を上げるためには、オープンで信頼性の高いものであることが重要です。高い信頼性は、企業が社会に深く根ざし、個々の利益を超えた責任を負うことを受け入れている証です。私は、企業にはこのような責任があり、社会全体の幸福と進歩のために働かなければならないと考えています。そして、やみくもに利益を追求するのではなく、意識的かつ明確に行動することが必要です。

これは重い責任であり、しばしば「ESG」や「持続可能性」と呼ばれるものが真に意味するところでもあります。これはまさに、「人の資本主義」と合致するものです。このアプローチは、特定の国や企業の成長のためだけではなく、世代を超えて持続可能な繁栄を共有することに価値を置いており、未来に向けて地球規模での新たな成功の形を描くのに役立つのです。

企業は、多様なステークホルダーの意見に耳を傾けなければなりません。それだけでなく、顧客、サプライヤー、従業員、投資家、そして地域社会全体の行動に良くも悪くも影響を与えることができ、また実際に影響を与えていることを理解する必要もあります。企業と社会は相互に影響しあっているのです。

これはここ数十年の間、特定の先進国では敬遠されていたものですが、新しい考え方ではありません。自然や地球のためだけでなく、重要な利益をもたらします。特に世界の情勢に対する不安から、社会に不満を持ち、孤立している多くの若者のニーズに応えることもできます。私たちは、新しい世代が持続可能な未来を築けるようなシステムを構築することができるのです。

自分のこと、「今」のことだけを考えていてはいけません。つまるところ、人間と違い、社会は生き続けるのです。そのためには、四半期や1年単位の短期的な視点ではなく、長期的に人と地球を守るための新しい指標で成功を測る必要があります。

リーダーとして、私たちはより良いコミュニケーションを図らなければなりません。私たちがこれまで行ってきたことや、将来の計画、そしてそれらがステークホルダーにどのように影響するかについて、すべてのステークホルダーに伝える必要があります。難しい質問から逃げてはなりません。批判を受け入れ、適応していかなければならないのです。対話によって信頼を回復し、共通の目標に向けより早く前進することができます。それにより、シンプルな好循環が生まれるのです。あまねくステークホルダーが、より良い世界を作るため、責任ある市民としてそれぞれの役割を果たさなければならないのです。

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