気候危機に対応するには ― 解決策を共有するため、5人の若者が集結
気候変動対策をリードする若者たち Image: Callum Shaw/Unsplash
- 気候問題について話し合うため、世界のリーダーたちが「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」に出席しました。
- 世界経済フォーラムでは、多面的な解決が求められる気候危機への対処について、5人の若者に尋ねました。
- 彼らの答えは、社会的正義、自然への投資、循環的思考、食料システムに切り込んで改革するべき、というものでした。
グラスゴーで開催されたCOP26で世界のリーダーたちが一堂に会する中、若者たちは地球規模の危機の多面性と巨大さをどのように捉えているのでしょうか。また、気候変動に対処するため、世界は若者に何を望んでいるのでしょうか。
当フォーラムでは、「若者の気候アクションチャレンジ(Youth Climate Action Challenge)」の創設に参加した5人の若き主催者と活動家に、気候危機に対処するため、どのような取り組みをしているか、また、他の若者には何ができるのかを尋ねました。
この記事で紹介する若者たちは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、各地域で運動を牽引する活動家のネットワーク、グローバル・シェイパーズ・コミュニティに属しています。彼らは、個別の活動やハブ・プロジェクトを通じて、アクションと変化を起こしています。
ここでは、より公平で持続可能な世界を作りたいと願う彼らの力強いメッセージをお届けします。
若者主導の解決策をサポート
ウォレ・ハモンド氏(ナイジェリア、アブジャハブ)
気候変動は、世界中の関心を集める話題です。自分の世代だけでなく、後世のためにも持続可能な未来を築きたい、という熱意を持った一人の若者として、私は「マルチメディア・ストーリーテリング」を通じ、気候変動というテーマに関する認識を高め、「誰一人取り残さない」正しい移行を提唱しています。
私のような多くの若者たちも、気候危機に取り組むためにさまざまな行動を起こしています。若者の意見を「国が決定する貢献(NDC)」に反映させるため、全国青年気候協議(National Youth Climate Consultation)の下に、ナイジェリアの若者たちが集結しました。イェトゥンデ・ファデイイ氏は、REESアフリカ(REES Africa)やベクターエネルギー(Vectar Energy)を通じて、再生可能エネルギーによる環境・気候問題の解決に取り組んでいます。
ネットゼロに向けた国際競争の中で、政府、リーダー、企業、機関は、世界全体で気候変動対策を拡大するために、若者主導のソリューションに支援を提供する必要があります。そのためには、若者の気候アクションチャレンジのように、環境に配慮した持続可能な世界を構築するための革新的なアイデアを取り入れ、支援するプログラムが重要となるのです。
公平で持続可能な食料システムの構築
サスキア・チメンガ氏(ボツワナ共和国、ハボローネハブ)
現在、人類を支えている食料システムは、土地被膜の変化、温室効果ガス排出の大きな原因の一つとなっています。このアプローチが生物多様性、地下水資源、土壌の栄養状態に壊滅的な影響を及ぼすことは周知の事実です。気候危機の影響により、世界中の食料安全保障に過度のストレスを与えることになり、最も脆弱なコミュニティにとっては特に深刻な問題となっています。
私は、アフリカ南部の山間部に位置する小さな王国、レソトで暮らしたことがあります。人々は、スーパーで食料を買う経済的余裕がないにもかかわらず、ダム計画や都市化、長期的な異常干ばつによって、伝統的な農業による自給自足の術さえも失っていました。そして、さまざまなネットワークを通じて、新たな食料システムを模索する若者がいること、そしてすでに開発の取り組みが始まっていることを知りました。これは、素晴らしいことだと思います。
私は、パートナーとともにパーマカルチャーに挑戦し、彼の故郷の村でデモンストレーションガーデンを始めました。最近では、ヨーロッパの若者が主導する「より良い食料システムのためのマニフェスト(manifesto for better food systems)」に触発され、アフリカ諸国の人々を集めて、アフリカ大陸の持続可能な食料システムのビジョンを目指して活動しています。
気候変動に配慮したコンセプトを生産工程に組み込む
ルーシー・トン氏(中国、北京ハブ)
ミレニアル世代は、人類の気候変動緩和策の成否を目の当たりにする世代になるはずです。私たちは、自分たちの未来を形成する意思決定者になりたいのです。
気候変動は、社会のすべてのセクターにまたがる組織的な革命であり、トップダウンとボトムアップの両サイドからの対策が必要です。持続可能な変革を実現するには、循環型設計が成功の鍵です。つまり、気候変動と社会に配慮したコンセプトを製品の根幹に組み込むのです。
グローバル・シェイパーズ北京のハブでは、地域にインパクトを与えながら、このテーマを探求していきたいと考えています。イニシアチブ「Scale360°」の一環として、北京のハブでは、地元の若者を招き、デザインシンキングを通じて、食品業界が循環型社会を実現するための戦略を提案しています。中国の代表的な宅配サービスや、人気の高い包帯型の食品パッケージ、バリューチェーンにおける農業分野などをテーマにしています。これによって「世界の工場」である中国のサーキュラー・エコノミーへの移行に弾みがつき、世界がネットゼロの未来に向かって進んでいくことが期待されます。
自然への投資
ラファエル・アロンソ氏(メキシコ、メキシコシティハブ)
人間には、システム、知識、技術があります。そして自然には、優れた再生能力があります。母なる自然に奉仕するということは、自らの資源を良い方向に使うことを意味します。
これまでになく私たちは力を合わせ、真に変化をもたらすためにインセンティブを調整することができるのです。スタートアップ企業は、衛星画像、ビッグデータ、リモートセンサーなど、破壊的技術を活用することができる一方で、企業は、ネットゼロ、あるいはそれだけに留まらず、ネイチャーポジティブな生産システムに取り組むことができます。そして、資産家や資産管理者は、自分のリソースをどこに割り当てるかを選択することができるのです。
投資をグリーン化し、グリーンなビジネスチャンスに投資するという点において、この10年間が非常に重要です。北米の広大な草原を回復させ、砂漠化を効率的に防ぐポートフォリオに投資することを想像してみてください。さらに、ラテンアメリカの熱帯雨林を中心に、システム全体で農法を変えることを想像してみてください。カルティボ・ランド(Cultivo.Land)社などのプラットフォームは、関連するすべてのステークホルダーを集め、今すぐ大胆な行動を起こすことが可能です。さらに、若者の気候アクションチャレンジなどの革新的な取り組みは、気候変動対策の規模拡大を後押しします。今こそ、企業の参加が必要です。今すぐ、自然に投資しましょう。
母なる自然に奉仕するということは、自らの資源を良い方向に使うということです。
”循環型アプローチの導入
ハンナ・バラード氏(カナダ、モントリオールハブ)
私たちは、世界の気候、社会構造、経済、地政学的状況、医療制度など、様々な面で多次元的な地球規模の危機に直面しています。変化を起こすのは簡単ではありませんが、循環型アプローチに真摯に取り組むことで、よりインクルーシブ(包摂的)なシステムを構築することができるはずです。
ドーナツではなく、サーキュラー(循環型)を考えてみませんか。ケイト・ラワース氏の著書「ドーナツ経済学が世界を救う」は、活動家たちがつながり、資源を再利用し、ベストプラクティスを共有する「ドーナツ経済アクションラボ(Doughtnut Economy Action Lab)」につながっています。アムステルダムから東京まで、地域のコミュニティや政府がドーナツ経済の概念を導入しています。行動を起こすプロセスをより持続可能なものにすることで、活動家はその活動をより持続させることができるのです。
ちょうど円を描くように、ステークホルダーをつなぐことで、変化が起こります。世界中の人々が代替手段を求めており、その要求に応えるべく、イノベーターたちが立ち上がっています。東南アジアでは、インキュベーションネットワーク(Incubation Network)が、地域のプラスチック廃棄物に取り組む起業家を支援する取り組みを行い、カナダでは、キッズコードジェネス(Kids Code Jeunesse)が、世界の最も若いステークホルダーに気候危機について知ってもらおうと、「#kids2030チャレンジ」を開始しました。これらの若者たちは、学ぶことに満足せず、問題に対処するための独自のソリューションを模索しています。
若い活動家たちは、資源やエネルギーを有効に活用するため、円を描くようにステークホルダーをつなぐことで、私たちを持続可能な明るい未来へと導いてくれる可能性を秘めています。しかし、そこに辿り着くにはサポートが不可欠なのです。
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