第四次産業革命

産業界がオートメーションによりイノベーションを起こす方法

Man operating automated tooling machine on an ipad.

ソフトウェアを中心としたデータ駆動型のオートメーションを利用し、有意義な変化をもたらすこの機会を逃してはなりません Image: Getty Images/iStockphoto

Peter Herweck
Francisco Betti
Head, Global Industries Team; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
  • 産業セクターは、柔軟性に欠け、イノベーションよりもベンダーの囲い込みを優先する、閉鎖的な独自のシステムが主流となっています。
  • 真にオープンで相互運用可能な規格をオートメーションツールに適用しなければ、あらゆる面コストがかかるため、新型コロナウイルスのパンデミックからの復興を果たすためには、大胆な行動が必要です。
  • 変化は、世界的なコラボレーションによってのみ可能です。私たちは、産業界のエコシステム全体にユニバーサルオートメーションに向けた議論に参加するよう呼びかけています。

世界がパンデミック(世界的大流行)からの立て直しを図る中、産業界は世界経済の回復の中心的な柱となる絶好の機会を得ています。その実現には何が必要なのでしょうか。

パンデミック以前から、産業生産性の伸びはわずか0.7%に留まるなど、悪い方向に向かっていました。世界的な景気後退の中、第2四半期の世界の製造業の生産高は11.1%減少し、下半期にはってようやくある程度回復しました。

もし、私たちが新型コロナウイルス感染拡大による混乱から学んだことがあるとすれば、アジリティとレジリエンス(強靭性)が現代の産業に不可欠であるということです。効率性と持続可能性に真の変化をもたらすために、私たちは今、大胆な行動を起こす必要があります。

オープンというだけでは不十分

産業セクターは今まさにディスラプション(創造的破壊)の時を迎えています。産業セクターは、柔軟性に欠け、イノベーションよりもベンダーの囲い込みを優先する、閉鎖的な独自のシステムが主流となっています。多くのオートメーションサプライヤーが表面的には「オープン」なテクノロジーを謳っていますが、現在のオープンオートメーションは必ずしもオープンとはいえません。なぜなら、多くのサプライヤーは、あるベンダーのソフトウェアを別のベンダーのハードウェア上でも動作させることができる、ベンダーに依存しないシステムを採用していないためです。その結果、企業は本来支払う必要のないエンジニアリング費用を負担し、イノベーションの展開を遅らせることになります。これは、アジリティの低下やビジネス機会の損失につながります。

Even before the pandemic, industrial productivity growth was moving in the wrong direction.
パンデミック以前から、産業生産性の伸びは悪い方向に向かっていた Image: UN Industrial Development Organization

真にオープンで相互運用可能な規格をオートメーションツールに適用しないと、あらゆる面でコストがかかります。これは、至るところに存在する課題で、世界中で産業活動が阻まれています。この難局を突破することは、ベンダーからOEM(委託者のブランドで製品を製造する)メーカー、機械メーカー、システムインテグレーター、そして、エンドユーザーに至るまで、すべての関係者にとって重要です。今日の多くの最重要課題と同じように、最終的にそれを可能とするのはコラボレーションです。

惰性の代償とは

閉鎖的な独自のシステムをベースにテクノロジーを構築し続けている限り、イノベーションは阻害され、システム、機械、人間による「チームワーク」がもたらす生産性が低下します。不必要に大規模な技術的努力、モジュール化(効率向上のための手法)の欠如、レジリエンスやイノベーションを阻害するようなことは許されません。

コミュニケーションがとれないチームは生産性を上げることができません。現在の閉鎖的なオートメーションシステムも、サードパーティのデバイスと統合や連携、アップグレードを簡単に行うことができないため、同じような問題に直面しています。

現在のパラダイムにおいて、産業界のビジネスと労働力は、閉鎖的な独自のシステムによって阻まれ続けており、最優先分野であるイノベーション、効率性、持続可能性、アジリティの妨げになっています。このままでは、世界経済の低迷に支えられて最適化されていない産業が残ってしまいます。

産業界の岐路

今まさに、転換期が訪れています。現在の産業オートメーションシステムのアーキテクチャは、産業界の発展に十分な役割を果たしてきましたが、第四次産業革命を完全な形で実現するためには、テクノロジーモデルを根本的に変えていく必要があります。

現在、私たちは、産業の持続可能性とオペレーションの環境効率の見直すために必要な計算能力とコネクティビティを備えています。環境保護のために残された時間が刻一刻と過ぎていく中で、ソフトウェアを中心としたデータ駆動型のオートメーションを利用して有意義な変化をもたらすこの機会を見逃すわけにはいきません。

また、これまでとは違った方向に向かう将来には希望があります。アクセンチュアは、2030年までに、産業用IoT(IIoT)は世界経済に何兆ドルもの利益をもたらすだけでなく、世界中の製造業の生産性と効率を向上させる可能性があるとしています。世界経済フォーラムがボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と共同で発表したレポートによると、製造業者の72%がアドバンスドアナリティクス(高度なデータ分析)の重要性が増しているととらえており、80%がデジタル化とデータに基づく洞察によって生産性の向上が達成できると考えています。

ユニバーサルオートメーション

IT産業が、オープンなオペレーションプラットフォームの利点をお採用しました。今度は、産業界が後に続く番です。ユニバーサルオートメーション(オープンでソフトウェア中心の産業システム)とは、「プラグアンドプロデュース」のオートメーションソフトウェアコンポーネントの世界のことで、顧客の特定の問題を証明された方法で解決するものです。これは、産業用オートメーションのアプリストアの始まりと考えられます。そして、実現する技術はすでに存在しています。オープンソースのオペレーティングシステムであるLinuxは、コンピュータのオペレーティングシステムの標準化に貢献しました。同じように、産業界でも異なるベンダー間で使用できる、標準化されたオートメーションレイヤーの構築するために、相互運用性と移植性の規格である「IEC61499」を使用することができるようになります。

技術的な障壁を取り除くことで、ユニバーサルオートメーションは、製造ラインや産業プロセスを、必要に応じてエンジニアがリモートで迅速に再プログラムすることを可能にします。変化する消費者の需要パターンに対応するには、このようなアジリティと生産性の向上が欠かせませんが、同時にパンデミックによる制約にも対応しなければなりません。

プラグアンドプロデュース型の産業オートメーション

相互運用性と移植性の規格「IEC61499」を採用することで、現在、産業界が直面している多くの課題を軽減することができます。ベンダー間で共通の規格を採用することで、異なるハードウェアシステムやソフトウェアシステムの相互通信が可能となり、先端技術を活用できるようになります。

ユニバーサルオートメーションによって、オートメーションの導入に伴い発生する、多くの問題を解決します。また、リファクタリング(ソフトウェアの外部的振る舞いを保ちつつ、理解や修正が簡単になるように内部構造を改善すること)に余分な時間とリソースを費やすことなく、新たなテクノロジーの導入、アップグレード、統合することが可能です。堅牢なオートメーションインフラにネイティブに搭載されたでサイバーセキュリティーが高いITアーキテクチャとテクノロジーを活用することで、メーカーは高度なデータ駆動型アプリケーションを容易に統合することができます。

さらに、相互運用可能なシステムは、メンテナンスや効率面でも大きな可能性を秘めています。単一でオープン、かつ多様なオートメーションシステムがあれば、メンテナンスエンジニアは不具合を迅速に発見・修正し、革新的なメンテナンス技術を取り入れて問題を回避することができます。これには、工場設備資産などが故障する前に修理するプロセスである改良保全や予知保全が含まれます。この手のメンテナンスは、リスクを低減し、予定外のダウンタイムを最小限に抑え、多額の費用がかかるシステム障害に発展する前に小さな故障に対処することができます。実際に、予知保全を行うことで、予防保全との比較では約8〜12%、事後保全との比較では最大40%のコスト削減が可能になります

これまでとは違う未来が、すぐ手の届くところまで来ています。ユニバーサルオートメーションは、生産ラインの自己構成能力や自己修復能力を備えたインテリジェントな自動オペレーションを実現することができるでしょう。

コラボレーションなくして実現は不可能

この新たな産業の生産性と効率性を実現するための最初のステップは、コラボレーションです。私たちは、産業界のエコシステム全体にユニバーサルオートメーションに向けた議論に参加するよう呼びかけています。有意義な変化を起こすには、信頼を築き、導入における障壁を取り除き、データを共有する新しい方法を見つけ、標準化されたアプローチを用いてイノベーションを続けなければなりません。次世代の産業技術を共に発展させることにコミットしてこそ、未来の産業、人類、地球のために、より良い現実を共有することができるのです。

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