再生可能エネルギーを貯蔵するための4つの技術
水力は今後も再生可能エネルギーとして世界最大の電力源であり続けると予測されている。 Image: REUTERS
- ヨーロッパ諸国と中国は、貯蔵した水を動かして発電する揚水発電の新規導入容量で、世界をリードしています。
- 米国、オーストラリア、ドイツなどでは、グリッド(電力網)に電力を供給する大規模な蓄電池の建設が進んでいます。
- 熱エネルギー貯蔵の設備容量は、2030年までに3倍になると予測されています。
- 機械的エネルギー貯蔵とは、物質の動きや重力を利用してエネルギーを貯蔵するシステムです。
太陽が顔を出さない、風が吹いていない時、私たちはどのように再生可能エネルギーを利用すればよいでしょうか。
多く得られる時にエネルギーを貯蔵し、再生可能エネルギーを必要な時にすぐ利用できるようにすることが鍵となります。
世界の再生可能エネルギー容量は記録的な水準に達していますが、化石燃料に頼ることなくエネルギー需要のピークとボトムのバランスを調整していくには、エネルギーを貯蔵する技術が欠かせません。ここでは、その4つの貯蔵技術を紹介します。
1. 揚水発電
揚水発電とは、発電所の上部と下部に貯水池を作り、電力需要が低い時には上部の貯水池に水を汲み上げて貯めておき、電力需要が高い時に下部の貯水池に水を落とすことでタービンを回転させて電力を生み出す発電方式です。
国際エネルギー機関(IEA)は、揚水発電を含む水力発電は、今後も、再生可能エネルギーを利用した方式としては世界最大の電力源であり続けると予測しています。水の動きを利用したこの発電方式は、電力システムの脱炭素化に向けて極めて重要な役割を果たすとIEAは述べています。また、電力需要のギャップに対応する上でも非常に有効です。
IEAの「再生可能エネルギーに関する年次報告書2020」によると、2025年までにヨーロッパで新たに建設される水力発電設備の半分以上が、スイス、ポルトガル、オーストリアを中心とした揚水発電設備になる見通しです。中国でも、2023年から2025年の間に新設される水力発電容量の半分以上を揚水発電容量が占めることになりそうです。
2. 蓄電池
化学反応によって発生するエネルギーを電気に変換する電池は、1800年代から存在しています。
現在、テクノロジーの進化とコストの低下により、グリッドスケール蓄電池が記録的な成長を遂げています。グリッドスケール蓄電池とは、グリッド(電力網)に供給できる大容量のエネルギーを貯蔵できる蓄電施設で、そのエネルギー容量は増加の一途をたどっています。米国カリフォルニア州では、2021年1月にモス・ランディング・エネルギー貯蔵施設が稼働を開始しました。4,500基の電池ラックで構成される300メガワットのリチウムイオン電池が設置されている世界初の蓄電池施設で、現時点で世界最大のグリッドスケール蓄電システムとなっています。
グリッドスケール蓄電システムの構築計画は、オーストラリア、ドイツ、日本、英国、リトアニア、チリでも進行中です。
3. 熱エネルギー貯蔵
熱エネルギー貯蔵は、建物や工業施設でよくみられる技術で、再生可能エネルギー源からの余剰エネルギーや廃熱などを貯蔵して冷暖房や発電に再利用します。
水などの液体や、砂や岩などの固体は、熱エネルギーを貯蔵できる物質です。また、物質の化学反応や化学変化を利用することでも、熱エネルギーを貯蔵や放出ができます。
熱エネルギー貯蔵の身近な例としては、建物に設置されている貯水槽です。
国際再生可能エネルギー機関が2020年に公表した報告書「イノベーションの展望2020:熱エネルギー貯蔵」の中で、2019年に234ギガワット時(GWh)だった熱エネルギー貯蔵の設備容量は2030年には800GWhを超え、世界の市場規模が3倍になる可能性があることが示されています。
4. 機械的エネルギー貯蔵
機械的エネルギー貯蔵とは、物質の動きや重力を利用してエネルギーを貯蔵するシステムです。
例えば、円盤を回転させてエネルギーを蓄えておき、必要な時に電力として取り出す「フライホール技術」がこれに該当します。
「フライホイール技術には、現在の送電システムを強化できる多くのメリットがあります」と、米国のエネルギー貯蔵の事業者団体であるエネルギー貯蔵協会は述べています。
都市や工場において必要時にエネルギーを供給する技術として、1870年代から利用されている圧縮空気エネルギー貯蔵も、、機械的エネルギー貯蔵のひとつです。これは、空気やガスを圧縮して貯蔵しておき、電力が必要な時に加熱・膨張させ、タービンで発電する技術です。
今年、英国で開催される国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、気候変動対策における再生可能エネルギーとエネルギー貯蔵技術の役割が、重要なテーマのひとつとして取り上げられる予定です。
COP26の目的は、ゼロカーボン・エコノミーへの転換とパリ協定の目標達成を加速させることです。パリ協定とは、2015年に世界の196の国と地域が合意した枠組みで、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に抑え、可能であれば1.5℃に抑えることを目標としています。
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