第四次産業革命

より公平な世界に必要な、より公平な技術 - その理由は?

NEC's Shinya Takashima demonstrates a facial recognition system that identifies people even when they are wearing masks, amid the coronavirus disease (COVID-19) outbreak, at its headquarters in Tokyo, Japan, January 6, 2021. Picture taken on January 6, 2021.  REUTERS/Kim Kyung-Hoon - RC2R2L9LNA38
Jeremy Jurgens
Managing Director, World Economic Forum
  • 2021年4月6日~7日、第1回「グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット」が開催
  • リーダーにとっては、テクノロジーによる解決策に留まらず、活動規模拡大の機会となります
  • リーダーは、公平かつ責任ある世界を形成するため、テクノロジーを設計、開発し、実装する方法を問う責任があります

今後10年間、技術的なソリューションの波は私たちの生活のあらゆる部分に影響を与え、変化させていくでしょう。こうした新たなソリューションは、既存の問題を解決する可能性もあれば、問題を悪化させ、新たな問題を引き起こす可能性もあります。テクノロジーは、進歩と弊害の両方になり得るため、今こそ、私たちが望む公平で責任ある未来を形作る時なのです。

インターネットのリスクとチャンス

世界は、人類(経済的・社会的ウェルビーイング)と地球(気候、生物多様性)に関するさまざまな課題に直面しています。こうした問題は相互に関連しており、リーダーが未来のリスクとチャンスを検討する場合、第一に考慮されなければなりません。

これらの問題に対する解決策を拡大するには、新興テクノロジーやフロンティア・テクノロジーを含むイノベーションが不可欠です。例えば、ルワンダでは、人口100万人に対して放射線技師が1人しかいません。AIを活用した放射線画像診断が熟練した専門家と比べても劣ることのないレベルに達している今、高品質な診断をより多くの人に提供できるようになっています。

また、遠隔医療の進歩により、数百万もの人々が医療を受けられるようになりました。AIを搭載した医療ボットは、医療へのアクセスをさらに広げます。先頃ある出版物で取り上げられたように、こうしたテクノロジーは、ルワンダを「デジタル医療が世界で最も進化した国のひとつ」にする可能性もあるのです。

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テクノロジーは、複数の問題に同時に取り組むことを可能にします。例えばインドでは、ドローンや衛星画像は、小規模農家に質の高い市場情報や病害虫の検出方法を提供する以上の機能を果たすようになります。経済的なレジリエンス(適応、回復できる力)を高め、さらには飢餓を防ぐことにもつながります。

一方で、技術的なソリューションにも課題があります。AIにより放射線診断のアクセスが向上しているものの、ほとんどが欧米の患者を対象としたトレーニングを受けています。それが、患者の治療にどのような違いをもたらすかについては十分にわかっていません。

さらに、こうした放射線診断のデータはほとんどが米国のサーバーに保管されます。患者の情報を保護するガイドラインを設けるとともに、他国の規制の枠組みを考慮に入れた手順にする必要があります。

その他にも、さまざまな疑問が浮かび上がってきます。こうしたソリューションは、インクルージョンを念頭に置いて設計できるのでしょうか?今後も人間を中心に沿えたソリューションは可能なのでしょうか?こうした疑問を抱え、急速にトランスフォーメーションが進む中で、重要な3つ目の課題、つまり、新しいソリューションが公正かつ責任を持って設計されていることを保証するテクノロジー・ガバナンスです。

トランスフォーメーションの形成

世界経済フォーラムの第四次産業革命日本センター(C4IR)は、こうした問題を提起し、活発な議論を促し、そして何よりも解決策を試行するために設立されました。C4IRは、各国政府、企業、市民社会のリーダーと連携して、リスクを軽減しながら最大の利益を得るためのテクノロジー導入の新しいアプローチを開発するための、マルチステークホルダーの協力をまとめるハブです。

例えばルワンダでは、C4IRでは、データとプライバシーを保護するため、AI活用に関する政策の策定を支援。同センターは、各国政府のリーダーや議員と協力して、世界のモデルとなる法律を整備しようと取り組んでいます。またインドでは、農業、健康、モビリティなどの分野で同様の協力関係を模索しています。

C4IRを設立してからの数年間で、私たちは短期的なニーズやひとつの課題だけに囚われず、広い視野で取り組むことの重要性を学びました。また、問題を全体的に捉え、段階的な発展を受け入れることで、システム全体の変化を形成する方法を直接体験してきました。

このような議論は、当然ながら、さまざまなステークホルダーがいるからこそ成り立つものです。各種セクター、産業、地域からの意見に耳を傾けることで、意思決定者は、さまざまな状況下で及ぼされる影響を明確に認識し、持続的なフレームワークやベストプラクティスを設計することができます。

しかし、重要なのは、私たちの生活にテクノロジーがどのように適合していくかを問う姿勢です。テクノロジーのトレードオフを議論できるシンプルなスペースを提供することで、その影響をより深く理解することができるようになります。ニーズやテクノロジーが進化する中で、こうした取り組みは重要な優先事項になります。

こうした議論の重要性を強く印象づけるべく、C4IRでは、今年4月に第1回グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミットを開催します。日本の支援のもと開催される2日間のイベントでは、最先端のテクノロジーを紹介するとともに、より公正かつ責任あるソリューションの設計に関する認識向上を図ります。ビジネスリーダー、起業家、学者、政策立案者が一堂に会し、緊急性の高い問題について、活発な議論を展開します。

イベントが終了しても、こうした議論の重要性は変わりません。議論の核となる精神、そして生活におけるイノベーションの場所を形成する意欲を数日、あるいは数か月で失っては意味がありません。

テクノロジーは急速に進化しています。今、形成されたモデルは、今後数十年にわたり、私たちの暮らしや仕事の進め方を形成することになります。現代のリーダーたちは、テクノロジーだけでなく、デジタル時代における責任あるアプローチを拡大することができるのです。

グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミットとは?

新興テクノロジーやフロンティア・テクノロジーは、社会、経済、医療などのさまざまな課題の解決に活用できます。しかし、取り組み方を誤ると、解決しようとした問題をさらに悪化させることにもなりかねません。

こうした問題を踏まえ、世界経済フォーラムでは、2021年4月6日~7日、第1回グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミットを開催します。シニアリーダー、CEO、取締役、スタートアップ企業、イノベーター、起業家、学者、政策立案者、市民社会が一堂に会し、新しいテクノロジーに不可欠なガバナンスや手順に関する問題を議論し、共有するための協力的で中立的な空間を作るべく、日本の支援のもとで開催される世界初のイベントです。

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