ウイグル人権問題に直面するアパレル企業、難しい産地把握
新疆の加工工場で、収穫したばかりの綿花にゴミがないか探す作業員ら Image: 2021年 ロイター/Dominique Patton
世界的なアパレルブランドのサプライチェーン(調達・供給網)が厳しい「身体検査」を受けている。米政府は、中国の新疆ウイグル自治区でウイグル族が強制労働をさせられているとの調査結果を踏まえ、同地域で生産された綿製品の輸入差し止めを開始している。一部の有名アパレルは、米国境に入るところで製品が立ち往生する事態になるかもしれない。
綿製品は、さまざまな地域から取り寄せられた原綿が混じり合う形になりやすく、それから種などを取り除き、紡績作業を行う。そうした性質上、産地追跡は難しい。米ギャップは既に、世界の綿の相当部分が新疆産との事実が同社の世界的サプライチェーンに間接的にもどれだけ影響し得るかについて、より良く理解しようとしている表明した。
しかし、実際には産地追跡が難しいことも認めている。米ラルフローレンは、素材産地追跡では取引先に協力してもらうことで、仕入れ先が妥当であることを確実にしようとしていると主張している。自らでは製品の綿が厳密にはどこから来たのかを明らかにするのが不可能なこうした企業は、これからの立場が危うくなりかねない。
米税関・国境取締局(CBP)はこれまでのところ、新疆と直接に結びつく可能性が最も高い案件の摘発にまず乗り出し、約100件の輸入を差し止めた。だが、特にCBPがどこかの大企業を見せしめにし、目こぼしはないことを示したいなら、現行の規制の文言だけでも有力上場アパレル企業の評判を標的にすることができるだろう。
CBPが、ある輸入製品に新疆産の綿が含まれている合理的な疑いがあると判断する場合は、そうでないと立証する責任は、輸入業者が負わなければならない。輸入業者は製品と素材の産地を追跡し、全工程で強制労働にかかわりがないことを証明しなければならない。
証明できなければ、米アバクロンビー・アンド・フィッチといった全店舗の約75%が国内にあるカジュアル衣料企業には、重大な影響が生じる可能性が出てくる。ギャップやスポーツブランドの米ナイキも影響は大きいだろう。米国での売上高が、全て綿にかかわるわけではないのだが、この2社の米国での売上高は、それぞれ約80%と40%に上っているからだ。
米政府が最も悪質な違反者だけを取り締まると決めるなら、企業はサプライチェーンの「透明性を高める」努力をして見せさえすれば難を逃れられるかもしれない。しかし、企業にとっては、米政府の標的になっているとの風評リスクが生じるだけで、もう割が合わなくなる。
英ファストファッションのブーフーは今月2日、同国スカイニュースでCBPから調査されていると伝えられると、株価が3%下落した。同社としては調査は把握していないと声明を出しても、株価は下がった。多国籍型のアパレルブランドの綿サプライチェーンにとって「知らなかった」は、もはや通用しない事態になっている。
<背景となるニュース>
- 米税関・国境取締局(CBP)は1月13日、米国の全港湾で中国・新疆ウイグル自治区の綿製品とトマト加工品の入境を禁止した。
- 輸入品については、生産や原材料収穫を含めた全てのサプライチェーン段階で強制労働にかかわっていないことを確かにする責任が輸入業者に課せられている。
*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。
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