サーキュラー・エコノミーは地球を救う
サーキュラー・エコノミーは、役目を終えた製品を循環させ、生産システムの最適化を実現します Image: REUTERS/Luc Gnago - RC16ECE14CE0
- サーキュラー・エコノミーは、地球を救う手段であると同時に巨大な市場機会でもあります。
- サーキュラー・イノベーションへの対応に苦慮している多国籍企業と、規模を拡大するためのリソースが不足している起業家の間にはミスマッチがあります。
- 「サーキュラー・アクセラレーター」は、サーキュラー・イノベーションを重視する主要なグローバル組織と、循環型ソリューションの拡張を目指すディスラプター(破壊的イノベーター)を結びつけ、連携してゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)の取り組みを進めます。
2021年を迎え、企業は、地経学的緊張の高まりから差し迫った気候危機まで、あらゆる課題に直面しています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標達成年まで10年を切り、「行動と遂行の10年」と呼ばれる今こそ、リーダーたちはインパクトをもたらす行動を起こさなければなりません。
今こそ変革の時
ホリスティックなサーキュラー・エコノミーモデルへの移行は、環境破壊を食い止め、生物多様性と自然に重点を置く上でも、そして、将来の競争力を高めていく上でも非常に重要です。サーキュラー・エコノミーの概念では、役目を終えた製品は循環され、生産システムに還元。廃棄物が出ないようになります。その結果、原料はできるだけ長く、生産的に使用されるようになり、新たな生産は希少資源の消費を伴うものではなくなります。
サーキュラー・エコノミーは、2030年までに4.5兆ドルを超える新たな市場機会を生み出すと考えられています。この移行を加速化できるかどうかは、革新的な新しいビジネスモデルと、ディスラプティブ(破壊的)な技術革新の導入にかかっています。アクセンチュアの分析でM&A投資の約30%を占めるという新しいビジネスモデルに重点を置くことに加え、デジタル、物理学、生物学に関する新しいテクノロジーを採用することで、新たな機会を促進し、組織のトリプルボトムラインを達成することができるでしょう。
真のサーキュラー・エコノミーへの道を切り開くには、エコシステム全体での連携が不可欠です。今日、サプライチェーンやプロセスがますます複雑化している多国籍企業は、絶えず進化するサーキュラー・イノベーションの動向を把握するのに苦慮したり、循環型ビジネスへの移行に向けた新しい運用モデルの導入に必要な機能が不足していたりする場合があります。対照的に、起業家はこれらの問題を解決するためのディスラプティブ(破壊的)なソリューションを持っていても、それを、スピード感を持って再現し、拡張させていくための資本、リソース、ネットワークを欠いている場合があります。
サーキュラー・イノベーションのスケーリング
このエコシステム全体のミスマッチは、どのように解決できるでしょうか?多国籍なアクターとディスラプティブ(破壊的)なプレイヤーをうまく結びつけることができれば、バリューチェーン全体のステークホルダーがイノベーションを十分に活用し、インパクトをもたらすためにターゲットを絞ったビジネスモデルに重点を置いて、新たな地球規模課題に効果的に対応できるようになります。世界経済フォーラムが、産業廃棄物からいかに経済的価値を生み出すかという根本部分の変革を進める企業、政府、個人を毎年表彰する「サーキュラー・アワード・プログラム」は、大きな成功を収めたのち、さらに行動志向のプログラム「サーキュラー・アクセラレーター」へと発展。アクセンチュアがアングロ・アメリカン、エコラボ、シュナイダーエレクトリックとのパートナーシップのもと、SDGs達成のためのイノベーションを目的とした、世界経済フォーラムのクラウド型デジタル・エンゲージメント・プラットフォーム「アップリンク(UpLink)」上で開催しているオンラインプログラムです。
このプログラムは、サーキュラー・イノベーションを重視する主要なグローバル組織と、循環型ソリューションの拡張を目指すディスラプター(破壊的イノベーター)とを結びつけるものです。アクセラレーターのミッションは、メンターシップ、共同イノベーション、戦略的アライアンスといった相互に有益なプログラムを通じて、グローバルな循環型社会への移行を促進することです。また、初期段階から成長段階にあるイノベーターや既存のパートナーに、価値とインパクトを等しくもたらすと同時に、アクションに焦点を置いたパートナーシップを通じて、サーキュラー・エコシステムを強化する役割も担っています。
サーキュラー・アクセラレーター・プログラムへの参加には、初回の募集で、200社を超える革新的で、独創性、多様性に富んだ企業からの応募がに寄せられました。競争率の高い多段階式選考プロセスを経て、17社の優れたスタートアップ企業が選出されました。選ばれたスタートアップ企業は、サーキュラー・トランスフォーメーションに必要な3つのソリューションタイプ、「製品と生産の革新」「消費のあり方の変革」「価値の回復」のいずれかに分類され、それぞれの力が合わさることで、バリューチェーン全体を網羅し、特定の「循環」課題に対応していきます。それぞれの事例を紹介します。
1. 製品と生産の革新
「製品と生産の革新」クラスターに入るのは、新しい設計アプローチや原料、成分におけるイノベーションを活用し、先駆的な製品、包装、製造ソリューションの設計と提供に取り組むイノベーターです。その一社、マレーシアのスティックスフレッシュ社は、生鮮食品の賞味期限を最大14日間延長する特許技術を持つイノベーターです。スティックスフレッシュ社の100%植物ベースの50セントコインサイズのステッカーは、新鮮な果物が自衛のために作り出す化合物を再構築し、細菌や真菌の活動によって引き起こされる腐敗反応を遅らせる自然のバリアを作り出します。世界で生産される食品の3分の1が廃棄されていると推定される中、気候危機と戦うための最大のソリューションは、食品廃棄物の削減です。
2. 消費のあり方の変革
現在私たちは、地球が自然に再生することのできる資源の1.75倍を消費しており、このままでは2050年までに2倍以上の資源を消費するようになると推測されています。バリューチェーンの一歩先へ目を向けた「消費のあり方の変革」クラスターでは、この深刻な現実に取り組んでいます。イノベーターたちは、製品のサービス化、製品使用期間の延長(修理、中古市場など)、シェアリングプラットフォームを含む、循環型消費の新しいモデルの構想に取り組んでいます。チリのスタートアップ企業、アルグラモ社のオムニチャネル・クロスブランドプラットフォーム技術により、ブランドや小売店は、スマートで再利用可能な包装を使用して、可能な限り低価格で消費者に商品を販売できるようになります。第四次産業革命のテクノロジーを取り入れたアルグラモの包装流通システムは、同社の特許取得済みの「パッケージング・アズ・ア・ウォレット」技術やIoT(Internet of Things)接続自動販売機などのイノベーションを実現しています。プラスチック包装の20%を再利用モデルに変換することでもたらされるビジネスチャンスは100億ドルと推定されており、包装の再考は環境面での重要性に加えて、ビジネスとしても優先して取り組むべき重要課題です。
3. 価値の回復
「価値の回復」クラスターは、現在の「資源を採し、作り、捨てる」という、もはや目的に合っていないリニア型システムをループ型にしていくソリューションを重視しています。このグループは、製品の再利用と、廃棄物や使用済み製品からのその潜在価値の回復を可能にする新しい方法の確立に成功したイノベーターによって構成されています。ニュージーランドを拠点とする革新的な都市鉱山企業、ミント・イノベーション社は、電子廃棄物の流れから有価金属を回収するための低コストでスケーラブルなプロセスを開発しています。国連の推定によれば、電子廃棄物として処分されている貴金属は年間100億ドルを超えています。ミント・イノベーション社のクリーンなプロセスは、湿式製錬法と生物工学を活用してこの廃棄物の流れを最小限に抑え、貴金属における完全なサーキュラー・エコノミーを実現します。最近2,000万ドルの資金調達をした同社は、英国とオーストラリアのバイオリファイナリー工場への委託を計画中で、実現すれが毎年最大3,500トンの電子廃棄物を処理できるようになると見込まれています。
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