コロナ禍で電動キックボードに脚光、シェアリング好調
立ち乗り式の電動キックボードはもはや、子供の遊具ではない。 Image: 2021年 ロイター/Charles Platiau
立ち乗り式の電動キックボードはもはや、子供の遊具ではない。コロナの時代に、都市交通に欠かせない一部となっている。公道での電動キックボード利用を許可する都市も増えている。この結果、シェア電動キックボード事業を手掛ける欧州の新興企業が活気を取り戻しつつある。
スマートフォンを持っている人ならだれでも電動キックボードを借りて短距離の移動に使えるサービスは既にあったが、高い運営コスト、安全上の懸念、激しい競争といった問題に悩まされていた。そこを襲ったのがコロナ禍と外出制限。昨年3月当時は、米事業者バードは従業員の3分の1を解雇。ザ・インフォメーションによると、競合する米ライム社は5月、79%の企業価値評価引き下げを受け入れて配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズの資金注入を仰いだ。
しかしその後、移動時にソーシャルディスタンスを取る行動様式が広がるにつれて、多くの都市居住者が公共交通機関に代わる通勤手段を求め、電動キックボードを試すようになった。ロンドン、ニューヨーク、パリなどの主要都市は電動キックボードの公道走行を合法化する一方、認可制を通じて電動キックボードのシェア事業者の数を制限する制度を導入した。
スウェーデンの新興企業ボイ・テクノロジーはこれまでに、欧州の諸都市の約3分の2から認可を確保。同社によると、昨年9〜11月の利用件数は前年同期比で85%伸びた。マッキンゼーの予測では、コロナ禍が収束しても、その後も世界のシェア電動キックボード利用はコロナ禍前の水準を12%上回る。
需要が増える一方、コストは下がってきた。運営費の中でも大きいのは修理や調整、再充電、キックボードの再配置のコストだ。ボイ、ライムのほか、ベルリンを拠点とするティア・モビリティの計3社はいずれも維持費と再配置費の半減につながる交換可能電池を開発した。
この結果、事業の黒字化が進んでいる。利用者は通常、借りたキックボードのロック解除に1ドル(約104円)を払った後、1分間0.1〜0.2ドルの利用料を課される。1台につき収入を試算すると、30分間の利用が1日3回あったとして、最大20ドル近くを得られる。このシナリオで、さらにコストが収入の半分だと想定すると、電動キックボード1台の購入代金が500ドルなら事業者は2カ月未満で回収できる。
ボイとティアは昨年6月には黒字化した。ティアは11月、ソフトバンク・グループを筆頭とする投資家グループから2億5000万ドルを調達し、企業価値評価は約10億ドルとなった。ライムは6〜9月期にEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が黒字になった。
ただ、電動キックボードの利用は冬に落ち込むため、この事業が季節商売であることには変わりない。一部の都市では、1日当たりの収入が前述の計算よりずっと少ない。また、利用者が増えると交通安全上の懸念も高まり、規制当局から認可を取り消される恐れもある。とはいえ、シェア電動キックボード事業者が今、軌道に乗っているのは間違いない。
〈背景となるニュース〉
- ライムは昨年11月19日、第3・四半期(6〜9月)にEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が黒字化したと発表した。併せて新たな電動キックボードのモデルを披露した。
- ロンドン交通局は11月17日、2021年初めに電動キックボードの公道試験走行を始め、参加する事業者を最多で3社選ぶと発表した。
*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。
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