エネルギー転換

ニュージーランドに初めて導入される電動航空機と、電動飛行を取り巻く現状

The electric plane will be used for flight training and pleasure flights in New Zealand.

ニュージーランドで、電動航空機が飛行訓練と遊覧飛行に使用される予定 Image: Pipistrel Aircraft

Douglas Broom
Senior Writer, Forum Agenda
本稿は、以下会合の一部です。変革のパイオニア・サミット
  • ニュージーランドに、同国初となる電動航空機が納入されました。
  • 北米では、さらに大型の商用電動航空機が試験飛行中。
  • 何百台もの、電動エアタクシーの開発も進められています。
  • ハイブリッド旅客機は、その試験プログラムをすでに完了しています。
  • しかし、大手飛行機メーカーは、完全な電動旅客機の運用までにはまだ数十年かかるとみています。

ニュージーランドは、初の電動航空機が納入されたことで、航空におけるカーボンフリーの未来を模索する国々の仲間入りをしました。

スロベニア製の2人乗りのこの飛行機は、飛行訓練、そしてゼロエミッション飛行の体験を希望する人たちを乗せた、遊覧飛行に使用される予定です。このような飛行機は、ニュージーランドにとっては初ですが、世界全体では多く見られるようになってきています。

The cockpit of the Pipistrel Virus SW 121 electric plane.
電動航空機、ピピストレル ヴァイラスSW121のコックピット Image: Pipistrel Aircraft

2019年12月、シアトルを拠点とする電動航空エンジンメーカーのマグニックスは、カナダのコミューター航空会社、ハーバー・エアが所有する水上飛行機の従来のエンジンを電気エンジンに交換して改造、飛行させたことで、世界初の商用電動航空機による飛行に成功したと発表しました

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試験飛行はわずか4分間でしたが、マグニックスは、同量の予備電力を確保することで30分間の飛行が可能だとしています。そして、2020年6月、同社はこれまでで最大の商用電動航空機となるバッテリー駆動の9人乗りセスナ・グランドキャラバンを飛行させ、さらなる成功を収めました。

カーボンニュートラルな成長を達成するには?

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、飛行機の搭乗者数は3分の1に激減し、世界中の航空会社は大きな打撃を受けました。しかし、この危機以前に、すでに航空業界は航空機がもたらす環境への影響について、一部の乗客たちから厳しい目を向けられていました。

2009年には、航空業界は、その年以降のカーボンニュートラルな成長目標を設定し、世界の炭素排出量の約2〜3%を占める排出量を2050年までに半減するとしました。直近の調査によると、46%の人々が、カーボンニュートラルなフライトにはより多くの金額を支払っても良いと回答しており、乗客も、炭素排出量を削減するためのアクションを求めていることが分かりました。

では、電動航空機はその一助となるのでしょうか?バッテリーは重要な課題のひとつです。軽量化されてきたとはいえ、まだ重量の課題は解決せず、長距離飛行の実用的なエネルギー源とはいえません。

例えば、英国のラフバラー大学で応用航空力学の講師を務めるダンカン・ウォーカー氏による試算によると、電力のみに依存した場合、A380スーパージャンボの航続距離は15,000キロからわずか1,000キロに減少するとしています

航空業界におけるイノベーション

より小規模の、業界の末端を担う航空会社にとっては、状況はより楽観的です。ニュージーランドが試験運用中の2人乗りのピピストレル機は、1回の充電で1時間の空中滞在が可能な上に、30分間の予備電力を残すことができます。短時間の遊覧飛行にはこれで十分です。

Airbus’s E-FanX has already completed test flights.
すでに試験飛行を終えているエアバスの「E-FanX」 Image: Airbus

エアバスとロールスロイスは、4つのジェットエンジンのうち、ひとつを2メガワットの電動モーターに置き換えたハイブリット旅客機「E-FanX」の試験飛行をすでに終えています。エアバスもボーイングも、電動航空機への取り組みを進めていますが、ボーイングは完全な電動旅客機の運用までにはまだ数十年かかるとしています

エアバスは、水蒸気のみを排出する一連の水素駆動の旅客機の開発にも取り組んでいます。これは、バッテリーを十分に軽くすることができれば、電力と水蒸気を併用することができるようになるので、電力を除外しようというものではありません。

一方、ボーイングの次のイノベーションプログラムには、小型の電動垂直離着陸機が含まれています。そして、ドローンスタイルの垂直離陸推進システムを活用した電動エアタクシーは、世界各地の100社以上で開発が進んでいる、とBBCは報じています。

つまり、規制当局からの承認が得られれば、近い将来、電動エアタクシーや小型飛行機が実用化される可能性は大いにあります。しかし、電動旅客機の誕生は、バッテリー技術が進化してより軽く、強力になるまで待つことになるかもしれません。

ゼロへの挑戦

国連は、ゼロカーボン・リカバリーに向け、企業、都市、地域、投資家の支援を動員し、気候変動を引き起こす炭素排出を削減するためのアクションを加速させていく世界的なキャンペーン「レース・トゥ・ゼロ」をスタートさせました。

世界経済フォーラムは、11月10日から12日にかけて「レース・トゥ・ゼロ・ダイアログ」をオンラインで開催。企業および公共部門のリーダーたちが集まり、航空を含むさまざまな業界でゼロカーボンを達成する方法を議論しました。

そして、11月16日から20日にかけ開催された、世界経済フォーラムの「変革のパイオニア・サミット2020」は、新型コロナウイルスのパンデミックの余波を受け、よりレジリエントで持続可能な世界を構築するための機会をいかに活用するかという点を焦点に、議論がもたれました。

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