上空の覇権を目指す競争:ドローン配送の優位性を決定づける3つの要素
大事なのはドローン技術ではなく、技術をどのように利用するか Image: REUTERS/Scott Audette
- グーグルとUPSに続き、アマゾンは、米連邦航空局(FAA)にドローン配送プログラムを認可された3番目の企業となりました。
- この新たな市場をめぐる覇権争いが始まっています。
- 勝者と敗者の分かれ目にもなる3つの質問を紹介します。
アマゾンのドローン配送プログラムが米国で認可されたと発表されました。消費者向け荷物配送におけるイノベーション競争は続いています。
この画期的な認可を連邦航空局(FAA)から獲得した企業は、アマゾンが3社目です。自律型空輸システムの利用拡大によって、地方に住む人々に対し、より短時間で荷物を届けることが可能となります。
アルファベット(グーグルの親会社)が100%出資するドローン配送サービス、ウィング・アビエーションとUPSフライトフォワードも、この認可をすでに取得していますが、アマゾンは既存の物流システムにシームレスに統合できる可能性のあるビジネスモデルを持っていることから、今回ようやく認可されたことで、先駆者としての役割を果たすことになるでしょう。
アマゾンのサービスにドローン配送を組み込み、プライムエアを利用して30分以内の配送オプションを作成することは、これまでで最も明確な形でのドローン配送であり、他の承認された2つのオペレーションと比較しても、競争上の優位性が高いと言えます。ジップラインやウイングコプターのような革新的なスタートアップ企業は、アフリカと欧州で成功を収めている米国外のドローン革命をリードしていますが、アマゾン、グーグル、UPSは、より広範囲にわたって配達の環境を再定義していくと見られています。
FAA認可という一つの目標において、グーグルとUPSはアマゾンよりも先行しているわけですが、ドローン配送に関しては、テクノロジーよりもドローンの利用方法が成功のカギを握るということが、ここ数年で証明されています。ルワンダとガーナでドローンを使って血液や個人防護具(PPE)を配送することで、ドローンの可能性を再定義した、サンフランシスコのドローン配送会社ジップラインは、日頃から、同社はあくまで物流会社であり、ドローンビジネスは付随的なものとしています。ジップラインの最も重要なイノベーションは、サプライチェーンの管理、既存のワークフローとの統合、およびそのプロセスにおけるステークホルダーへの継続的な教育を通じて実現されたものです。
米国の大手企業における、いかに示す3つの違いを見ることで、どの企業が配送競争に勝利するのかについての洞察を得ることができます。
1. ドローンの製造元はどこになるのか
アマゾンとグーグルは、自社でドローンを製造していますが、UPSはしていません。ドローンの自社製造にはリスクが伴います。シリコンバレーで言われているように、ハードウェアはハード、つまり困難なものです。もともとはテック企業であるアマゾンとグーグルは、最初から独自のハードウェアを開発し、認可に向けて社内で機体開発を続け、より厳密なイノベーションプロセスとより迅速な進化を生み出しています。
両社はまた、自社の業務を維持・管理するための接続技術の開発も継続的に行っています。これは、自社のニーズに合わせて開発プロセスを合理化し、迅速な進化を推進するため、必要な形にぴったりと合わせて機体を変更することができるという利点があります。
一方、UPSはマターネット、ウイングコプター、ジップラインといった革新的なスタートアップ企業に投資し、提携することに価値を見出してきました。提携によってリスクを削減し、選択を通じて設計を変更し、顧客のニーズを満たすという、最も得意とする側面に集中することができます。認可の達成と実行については、UPSはポートフォリオ企業に依存することになりますが、ドローンをトラックのように扱うことで、ドローン利用を最適化することが正しい方法なのかもしれません。
2. 既存の物流ネットワークがあるかどうか
UPSとアマゾンは、巨大な物流ネットワークと既存の需要を持っていますが、グーグルにはそれがありません。どのような製品であっても、顧客は必要です。UPSやアマゾンは、ドローン配送に関しては自社が顧客となっていますが、グーグルは、ドローン配送のために、アマゾンやUPSといった標準的な配送ネットワーク以外の企業と提携する必要があります。
ここで真に問われるのは、テクノロジーの統合を目指すサプライチェーン企業と、物流ネットワーク全体の一部を構築し、改良することを目指すテック企業の、どちらを選ぶかということです。これまでのところ、グーグルの配送ネットワークは、小規模企業を対象としたテストに重点を置いており、オーストラリアにおけるブリトーやドッグフードの配送、フィンランドにおける焼菓子の配送、最近では、米国における食料品の配送などが目立っています。
他方、UPSは、フロリダ州の高齢者コミュニティに処方箋薬を配送する物流の専門知識を適用し、UPSのパートナー企業は、システムの認可を目指しています。アマゾンは、連邦航空局(FAA)初の無人航空機システム(UAS)統合パイロットプログラム(IPP)を介して、米国で実際の事業活動を試す機会を逃したため、英国ケンブリッジで商品のオンデマンド配送を試験的に運用することができたものの、顧客を対象とした運用テストはかなり制限されていました。
3. テクノロジーにおけるXファクターは何か
Xファクター - 米国のドローン配送競争に参加している3大企業はいずれも、技術面で差別化要因を持っています。グーグルXラボからスピンアウトしたウイングは、高解像度マッピング、自律技術、ヘルスセンサーデータなど、急速な変化や応用のための触媒となり得る、あまり知られていない技術や開発中の技術など、グーグルの他の製品との緊密なパートナーシップを活用できます。
商品開発から消費者行動、配送に至るまで、電子商取引に対する明確な理解と電子商取引における優位性こそが、アマゾンの差別化を生み出す源泉となっています。UPSが有するサプライチェーンと物流管理におけるグローバルな経験、消費者と政府の両者からの信頼が相まって、必要とされる社会的受容を促進するためにカギとなる、知恵と特性を提供できるかもしれません。
テクノロジーと配送における3つの巨大企業の競争が、まさに私たちの頭上で激化しています。この競争に勝つのはどの企業でしょうか。ドローンに関する自社のビジョンをサポートし、加速させるためのふんだんな技術を有するテック大手のグーグルか、他社の最重要商品を取り扱うことで信頼をすでに獲得している、従来型サプライチェーンと物流配送会社であるUPSか、それとも、テクノロジーに精通し、これまで以上に早く荷物を受け取りたいという既存の顧客ベースを持つアマゾンのプライムエアでしょうか。
時間が経過しないと正解は分かりませんが、ドローン配送の革命が、すでに始まっていることは間違いありません。
この記事はフォーブスに最初に掲載されました。
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