食料と水

SDGsのために食料システムの改革を: 2021年に向けた課題

There are four areas critical to achieving a successful transformation of food systems

食料システムの改革には4つのことが欠かせない Image: REUTERS/Shamil Zhumatov

Sean de Cleene
Member of the Executive Committee, Head of the Future of Food, World Economic Forum

2030年までに、私たちが国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指すなら、食料の生産、入手、評価、消費の方法を改革するための行動を、今すぐ起こす必要があります。食ベ物がもたらす健康への影響、生態系サービスへのダメージ、気候変動との結びつき、そして、数百万の小規模な食料生産者が直面している苦境など、あらゆる懸念が急速に拡大していることから、早急な対応が取られる必要性が認識されてきています。

今まさに、取り組まれるべき食料システムの改革。それは同時に、私たちの世代の、強力なリーダーシップが試される機会でもあるでしょう。改革を成功させるには、かつてない規模の協力体制が不可欠。先日招集が発表された、国連の「食料システム・サミット2021」は、食料システムの改革を国家レベルの取り組みへと押し上げ、この改革がSDGsの多くの項目の達成に必要不可欠であることを確認する機会になるでしょう。

これらを踏まえ、食料システムの改革を達成するために、極めて重要で、今すぐ取り組むべき4つのことを紹介します。

1連携と一体感

食料システムの改革には、様々な要素が絡み合うことから、この改革は、複雑且つ困難で、肝心な時にうまく機能しないことがあります。そのため、異なる集団が、食料システムに関する様々な利害を代表し、それぞれ異なる地理的背景を持つ状況にある中で、何が最善の改革方法かを模索する議論が今なお活発に繰り広げられています。2021年のサミットは、「食料システムの改革」が意味することへの理解を共有する、貴重な機会になるでしょう。ただし、ひとつの定められた食料システムは存在しないため、皆で連携し、あらゆるシステムが共通の成果を出せるよう、取り組みを講じる必要性があることを念頭に置く必要があります。

食料システム・サミットの具体的な成果として期待されるのは、各国の主導する食料システム改革を支援するべく、科学的根拠に基づいていて、経済的にも優れた道筋を明らかにし、発展させることです。こういった成果は、今後、意思決定者たちがその地域や組織の中で、気候変動による影響、生物多様生の喪失、食べ物がもたらす健康被害などを含む、食料、水、エネルギーのつながりに起因する問題へ、必要且つ難易度の高い取引や施策を実行し、一丸となり改革に取り組むためのサポートとなるでしょう。

改革の指針は、人々がその中心となっているものが作成されなくてはなりません。そのために、サミットへの準備として、食料システム・ダイアローグのような機会を設け、改革に向けた選択肢についての建設的な対話や議論をすることは有益でしょう。対話がスムーズに行われれば、関係者が集まって共に議論するこのようなプロセスは、食料システムの今後の方向性に非常に良い影響をもたらすと考えられます。

サミットで、ひとつの指標が決まり、先の国連気候行動サミットのように、サミットの持つ意味や目標をまとめる段階まで進むことができれば、今後の変化に向けたさらに大きな一歩を後押しすることになるでしょう。どんな食料をどのようにして人々の元に届けるのか。この、食料の流通パターンを、包摂的な経済成長を増進し、食料や農業のバリューチェーンに直接関わる人々機会を高めることができる方法で、いかに改革するか。この新たな展望に対して、できる限り多くの利害関係者に行動を起こしてもらい、支持してもらえように促すことが、根本的な変化につながります。

2.目的意識を持ったイノベーション

新しい、またはこれから登場する科学的・技術的イノベーション、そして、従来の農業知識・技術の改良は、いずれも食料システム改革を加速させる大きな推進力となります。特に、発展途上地域では、これらのイノベーションは十分に活用されていません。それゆえ、リーダーが改革を進める中で課題となるのは、適切な技術の開発と拡大をサポートするイノベーションシステムを構築すること、それらが公平に実施されること、食料システム改革への信用を築くこと、共通の目的に向かって連携すること、そして組織内の協力体制をサポートすることです。

イノベーションの計画に密接に関連して、農業と栄養分野の研究施設や団体の取り組みを拡大する必要もあります。そして、国内外の機関が、官民協力の下に取り組み、食料システムの素早い改革に迅速に対応していくことが求められます。改革をサポートする近代的な研究計画への新たな展望と支援を打ち出す時に、このようなサミットがひとつの節目となることが望ましいでしょう。

3.改革に向けたインセンティブ

食料システム改革の可能性を存分に引き出すためには、現状を大きく変え、改革をより適切に実施していくために、適正なインセンティブの導入や、今行われている実際の取引を新たなシステムに対応させることが必要になります。

食料システムの改革を推進する人たちをしばしば悩ませるのは、実績ある解決策を、採算の取れない実施困難なものにしてしまう、現実の、または予測されるコストの問題です。さらに、インセンティブがうまく整備されていないことによる、数多くの壁が改革を阻みます。これらの壁は、財政的課題、姿勢、知識不足、システム上の課題の4つに分類されます。効率的な改革を実現するためには、適正なインセンティブの導入が、新たなシステムの実施と拡大を妨げる問題を解決するためのコストに対し、大きな効果を発揮するでしょう。例えば、市場に基づいたインセンティブ、複合的な財政メカニズム、公的財政のインセンティブ、資本補助金、そして財政面以外のインセンティブなどが考えられます。

4.アクション型のアプローチを可能にするプラットホームの重要性

上述した内容を踏まえると、2021年に開催される国連の食料システム・サミットは、関係機関の取り組みを促すだけではなく、2030年のSDGs達成に向けて監視、報告すべき行動を示す役割を果たさなければなりません。食料システムの複雑さは、現行の国際的アプローチが十分でないことを証明しています。健康、食料、土地利用、地域経済の発展、移住、紛争、投資など、多国間で様々な問題が複雑に絡み合っている状況を考えると、仕方のないことかもしれません。地域特有の問題に加え、消費者や生産者特有の問題に対処し、成功しているパートナーシップや連携体制は増えてきていますが、これまで個々が断片的に行ってきたこうした取り組みが、今後、食料システム全体を網羅するグローバルな取り組みへと変遷していかなければなりません。

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認められた成功例となることや、それに基づき共有できる成果を出していく一方で、課題の性質、緊急性、規模の変化に対処する、より体系的、且つ解決志向型のアプローチを考え、試していかなければなりません。例えば、様々なセクターや地域の関係者が官民で協力し合い、従来の組織の枠を超え、全体的な展望を持って取り組めるアクション・アプローチのプラットホームを作ること。このようなアプローチの原理はシンプルですが、非常に大きな影響力があります。大切なのは、活動を育てていくことであり、活動の所有権が誰にあるかではありません。つまり、グローバルにあつらえられた解決策ではなく、地域全体で発揮するオーナーシップ、組織よりもプラットホーム、取り組みを重複させず、連携して強化すること、共通の解決策や行動重視の考え方を最初から取り入れること、これらのことが重視されます。連携して情報を収集し、プロジェクトを推進する大規模な組織として先日創設された、フード・アクション・アライアンスは、「行動のためのプラットホーム」アプローチを実際に行っているひとつの例です。

Food systems are key to the UN's Sustainable Development Goals
食料システムは国連のSDGsでも重視されている Image: UN

目標に沿った食料システム改革の計画を実行していく

2021年の食料システム・サミットが、単にカレンダー上の国際イベントのひとつではなく、各関係機関が早急にこの問題に注視してリーダーシップを発揮し、食料システムが、包摂的、持続可能、効率的、健康的、且つSDGsに沿ったものになるように、今まさに世界全体が連携し合う時だと確認する場になることが求められます。改革がうまく実行されれば、発展途上国全体の、農村地域における貧困を減らすだけでなく、世界の経済、健康、環境問題に良い効果をもたらす、包摂的で持続可能な市場の成長に向けた、歴史的な機会となります。一方で、改革に失敗すれば、飢餓や健康、社会不安や環境に関するリスクを、一層拡大させることになるでしょう。

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