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止まらない世界の「都市化」、エネルギー消費急増に懸念

途上国が大規模な都市化への道を歩むなかで、国民1人あたりのエネルギー消費量も大きく増大しようとしている。写真は上海の金融街。2015年5月15日撮影

途上国が大規模な都市化への道を歩むなかで、国民1人あたりのエネルギー消費量も大きく増大しようとしている。写真は上海の金融街。 Image: 2019年 ロイター/Aly Song

John Kemp
Senior Market Analyst, Commodities and Energy, Reuters

過去40年にわたる中国の都市化は、人類史上最大の民族大移動と表現されてきた。なにしろ数億人もの人々が村から街、そして巨大な都市へと移り住んだのである。この人口移動に伴い、労働生産性と家計所得が大幅に上昇する一方で、中国は世界最大のエネルギー消費国へと変貌した。

もっとも、都市化は世界的な現象でもある。世界銀行のデータによれば、世界の総人口のうち、村落地域に暮らす人々の比率は1960年代初頭の3分の2から、昨年は45%まで低下している。高所得国では例外なく都市化率が高い。都市化とエネルギー消費の増加、所得の上昇は歩調を合わせて進行する。都市化によって地方の余剰労働力が吸収され、農地をより大規模で効率的な単位に再編しやすくなり、村落地域の生産性が向上する。

また、これまでより大規模な市場を生み出すことから、いっそう複雑な製造業・サービス業の発展が可能となり、都市の生産性はさらに向上する。

中国は恐らく、過去に先進諸国が歩んできた都市化の過程(国際連合「都市・村落の人口増大パターン」、1980年)を半分ほど進んだ段階にある。中国に続いて、やはり多くの人口を抱え、急速に成長しつつある他の開発途上国が同じ都市化のプロセスに入りつつある。こうした国々が中国同様、大規模な都市化への道を歩むなかで、国民1人あたりのエネルギー消費量も大きく増大しようとしている。

中国の「民族大移動」

中国の国家統計局によれば、この国の村落人口は1995年に8億6000万人でピークに達し、2017年までに5億7700万人まで減少した。同じ時期、都市人口は3億5200万人から8億1300万人へと増えた。増加率は年平均3.9%になる。中国では20世紀半ばから都市化がゆっくりと進んでいたが、1978年以降、改革・開放路線の開始とともに顕著に加速した。それでも、2017年時点で人口の41%は村落地域で暮らしており、この比率は米国(17%)、英国(17%)の2倍以上である。

中国の現在の都市化水準は、米国勢調査局のデータと突き合わせると1950年代の米国とほぼ同じである。経済開発協力機構(OECD)加盟国と同じ道をたどると想定すると、中国の都市化は今後20〜30年は続く可能性が高い。中流階級の水準に達する家計が増えるにつれて、都市化のプロセスにより今後も国民1人あたりのエネルギー消費量は大きく伸びていくだろう。

エネルギー消費量の増加

最近の歴史的な事例すべてにおいて、都市化と経済発展のプロセスに伴い、国民1人あたりのエネルギー消費量は大幅に増加している。都市中心部の人口密度が高まることで、たとえば公共交通の利用増大や、より小規模でコンパクトな住居の利用促進などにより、エネルギー消費が減少する場面もあるだろう。だが、人口密度の高まりと都市化によって生産性が上がると所得をが増え、冷暖房や照明、動力、交通などのエネルギー関連サービスへの総需要が増大する。

どの例を見ても、都市化の進行と、それに伴う可処分所得の多い中産階級の世帯数増加によって、正味のエネルギー消費は大きく増大する結果となっている。さらに、人口密度の高まりと市場の集中化によって、ますます多様化するエネルギー集約型の財・サービスを提供しやすくなり、これが総エネルギー消費を引き上げる傾向もある。

1978年の改革開放路線の開始以来、中国国民1人あたりのエネルギー消費量は年4%以上のペースで増大している(世界銀行「世界開発指標」、2019年)。蘭州大学の研究者によれば、2000年から07年にかけて、村落地域から都市地域に1人移住するごとに、年間の国民1人あたりエネルギー消費量は石炭換算で1000キロ以上増えた計算になるという(「中国の都市化における家計のエネルギー消費量及び炭素排出量に関する調査」 、2011年)。

中国の都市化が続くことで、今後数十年にわたり、国民1人あたりのエネルギー消費量は大きく増大する可能性が高い。

中国以外の都市化はどうか

インドの総人口に占める村落人口の比率は、1980年代の80%に比べれば低下しているとはいえ、依然として67%と高い。中国に比べれば都市化は大幅に遅れており、1880年代の米国とほぼ同じ水準だ。中東・北アフリカ(35%)、サブサハラ・アフリカ(60%)、中央アジア(40-70%)、インドを除く南アジア(60-80%)、東南アジア諸国(25-65%)も、村落人口の比率が比較的高くなっている。

中国とOECD諸国の経験が参考になるとすれば、これらの地域・国でも、21世紀中盤を大きく過ぎても都市化が続く可能性が高い。これはつまり、開発途上国でエネルギー消費量が大幅に増加することを意味する。だからこそ、今世紀半ばまでにあらゆる資源の消費量が増加するとみられているわけだ。

エネルギー需要の増大によって、化石燃料、クリーンエネルギーいずれも消費が増える。需要に応えるには巨額の投資が必要になる。そして二酸化炭素排出量の目標達成は非常に困難になる。

*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。

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