米で体験型の金融教育に脚光、VR型企画が人気
米国の学校で体験型の金融教育が広がり始めている。写真はドイツ・ニュルンベルクで撮影された色鉛筆 Image: 2019年 ロイター/Michaela Rehle
米国の学校で体験型の金融教育が広がり始めている。座学で起業の方法を学ぶより、学内でお店を開いてはどうか。需要と供給について教科書を読む代わりに、Tシャツを作って売れるかどうか試してみようというわけだ。
スタンダード・アンド・プアーズの調査によると、米国の成人で金融リテラシーを備えている割合は57%にとどまる。
こうした現状を変えようと、教育向け資金調達ウェブサイトのドナーズチューズとチャールズ・シュワブ基金が組み、体験型教育のアイデアを競わせる「イノベーション・チャレンジ」を始めた。全国の教師から独創的な金融教育(FinLit)プロジェクトを募り、実行のための資金の手当てを助け、どの案が成功するかを見守る。
ネット投票の結果、今年優勝したのはメリーランド州ランハムの学校のVR(仮想現実)型企画だ。生徒はVRヘッドセットを装着して仮想現実上の歴史的名所に旅行するが、まずは行きたい場所について調べて計画と予算を立て、旅費を支払う必要がある。
テキサス州デイトンの学校の「ミッション・トゥ・マーズ」企画も独創的だ。生徒が授業に出席したり宿題を終えたりすると、架空の銀行口座にお金が振り込まれる。そのお金を使ってロケットや惑星探査機を組み立てる部品を購入し、「火星旅行」に出かける。
この他にもVR銀行の設立や、個人の資産運用方法を教える動画の制作、恐竜による金融教育などのアイデアが集まった。
シュワブの地域サービス担当マネジングディレクター、ケーシー・コーティーズ氏は「体験学習は、特に低所得世帯にとって非常に重要だ。実体験型の授業を受ければ学びがしっかりと身につく」と話す。
同氏によると、92%の教師は金融教育が重要だと考えているが、実行している割合は12%にとどまる。教育の資材がないという単純な理由だ。
このためイノベーション・チャレンジでは、上位15の企画を本格的な授業プランへと発展させた。全米の教師が無料でプランをダウンロードし、クラスで使うことができる。実際に使って報告書を提出した教師、先着200人には、将来このサイトで提供されるプランに使える250ドルのクレジットが提供された。
このサイトでシュワブがドナーズチューズと提携し始めた2017年には、企画に参加した教師は350人、生徒は3万6000人だった。今年は既に教師1600人、生徒25万人に増えている。
シュワブは今年、これまでにイノベーション・チャレンジに37万5000ドル、ドナーズチューズに50万ドルを寄付した。企画で生まれた教育資材を利用した教師の98%は、今後も学校で金融リテラシー教育を続ける計画だとしている。
*この記事は、Reutersのコラムを転載したものです。
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