オーストラリアの太陽光、シンガポールに電力供給へ
未来は明るい。 Image: REUTERS/Rebekah Kebede
ノルウェーからイギリスに電力を供給する全長720kmにおよぶ送電線が2年前に完成した際は、世界最長の送電線として話題を集めました。そして今度は、シンガポールの再生可能エネルギー企業がその5倍の長さの海底送電線の敷設に乗り出しています。
プロジェクトを進めているのはサン・ケーブル社。オーストラリアのノーザンテリトリーで太陽光を利用した発電を行い、3,800kmの海底送電線を使ってシンガポールに電力を送る計画です。完成した暁には世界最長の送電線となり、オーストラリアはグリーンエネルギーの一大輸出国になります。
ノルウェーからイギリスに送られている電力は水力発電によるものですが、オーストラリアでのこのプロジェクトが実現すれば、持続可能なエネルギーの輸出は新たな段階に入ることになります。世界を見渡してみても、再生可能エネルギーは地産地消されているケースがほとんどです。
サン・ケーブルは15,000ヘクタールの敷地面積を誇る世界最大の太陽光発電所の建設を計画しており、10ギガワットの発電量と電池貯蔵システムにより、ノーザン・テリトリーの州都ダーウィンに電力を24時間供給するとともに、シンガポールの電力需要の5分の1を賄う予定です。
環境に優しい水素の製造
西オーストラリア州のピルバラ地域では、さらに大規模なグリーンエネルギープロジェクトが進行中です。プロジェクトを打ち出したのは、エネルギー分野のリーディング企業による合弁会社のアジアン・リニューアブル・エナジー・ハブ(AREH)。太陽光発電と風力発電を組み合わせて最大15ギガワットの電力を発電する計画で、世界最大の太陽光+風力ハイブリッド発電所の誕生を目指しているとのことです。
ただし、上記のふたつのプロジェクトはいずれも現時点では計画段階にすぎません。AREHは発電所の建設予定地である6,500平方キロメートルの土地を所有する先住民のニャングマタ族とともにプロジェクトを進めています。
AREHの計画では、発電した電力の5分の1を観光の町ブルームを含む周辺地域に供給し、残りを水素製造施設で利用する予定になっています。
その狙いは、水素発電による電力を地元の鉱物産業に供給すること。そして、オーストラリアを原料(高炉で使用されるコークスなど)の輸出国から最終製品の製造国へと移行させることです。
CO2排出量の削減
オーストラリアは現在、コークス用炭と鉄鉱石では世界最大、液化天然ガス(LNG)については世界第2位の輸出国であり、金の可採埋蔵量も世界一です。
世界経済フォーラムが発表した2019年のエネルギー転換指標ではオーストラリアは第43位となっていますが、この順位の低さは、発電が石炭に依存しているために環境持続可能性のスコアが低かったことが主な理由です。
オーストラリア政府は、グリーンエネルギーへ転換すれば電気代が上昇すると主張しています。この点について世界経済フォーラムは、エネルギーの転換にかかるコストを公平に配分して、低所得者層が燃料貧困に陥らないように配慮する必要があることを報告書において強調しています。
産業をグリーン化するとともに再生可能エネルギーの主要輸出国に転じることができれば、オーストラリアはCO2の排出量も削減できるでしょう。他国に輸出している石炭、石油、天然ガスを含めれば、オーストラリアは現在世界の排出量の5%に責任を負っています。その要因のひとつはLNGの輸出で、昨年比で22%増加していることです。
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