第四次産業革命

ドローンから健診データまで、第四次産業革命に向けて前進する日本

東京はドローン配送を認める世界で最初の巨大都市になるかもしれません。2030年までにインダストリアルIoTが日本のGDPを1兆ドル近く押し上げることが予測され、医療分野では精密医療ががん治療に貢献すると期待されています。

東京はドローン配送を認める世界で最初の巨大都市になるかもしれません。2030年までにインダストリアルIoTが日本のGDPを1兆ドル近く押し上げることが予測され、医療分野では精密医療ががん治療に貢献すると期待されています。 Image: 画像:Reuters/Yuriko Nakao

Jeff Merritt
Head of Centre for Urban Transformation; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
Genya Dana
Chief Development Officer, BioMADE

過去数年、日本の物理的インフラやデジタルインフラは将来性の高い大きな進展を遂げています。世界経済フォーラムの「国際競争力指標2017-2018」では、<技術成熟度>の項目で順位を4つ上げ、イノベーションランキングでは世界第8位に。

さらに先を見据え、日本が抱える人口問題に対処する技術の重要性も指摘しています。「団塊の世代が75歳以上となる2025年が迫るなかで、第四次産業革命の技術は認知症関連問題への対応など我が国の社会保障制度を改善する重要な役割を担う」と安倍首相は「未来投資会議」で述べています。

日本はすでに新技術の導入を計画し、実行に移しています。東京はドローン配送を導入する世界で最初の巨大都市になるかもしれません。モノのインターネットの産業利用は2030年までにGDPを1兆ドル(110兆円)近く押し上げることが予測され、医療分野では精密医療が日本人の主な死因であるがんの治療に貢献することが期待されています。

平均寿命を延ばすだけでなく長寿化コストを抑えるためには、日本がこうした新技術を活用できることが前提となります。先に挙げた3つの技術の詳細と、それらがいかにして日本を第四次産業革命のリーダーへと押し上げるのかをみていきましょう。

1. モノのインターネット

日本は、潜在的に何十億個もの「コネクテッドデバイス」を適切に繋ぐモノのインターネット(IoT)への世界有数の投資国です。IoTには日本経済を劇的に変え、国内の人口1億2,700万人の生活の質を向上させる可能性があります。

アクセンチュアとフロンティア・エコノミクスの調査は、いわゆる「インダストリアルIoT」が2030年までに日本のGDPを約1兆ドル(約110兆円)押し上げると予測。日本が抱える高齢化や労働人口の減少という問題を踏まえると、IoTはこの国に残された国際競争力として重要な技術です。リアルタイムデータや自動化の技術によって、IoTはエレクトロニクスや自動車部門などの製造業で世界的に強い地位につく日本の中核として、新たな効率化とコスト削減効果を生み出します。

Image: イメージ図: アクセンチュアおよびフロンティア・エコノミクス

IoTは、日本の都市や高齢化人口の管理に欠かせないツールにもなります。日本は世界で最も密集した都市を持つ国で、人口の9割以上が都市で暮らしています。こうした都市が継続的に発展するためには、空間、エネルギー、その他の限りある資源の最適な利用を促すスマートシティ技術が不可欠です。IoTは健康・医療診断を遠隔から実施することで高齢者介護の在り方も変えています。

2. ドローン

日本では、地方の人口の減少と高齢化が進んでいます。こうした背景から、ドローン宅配サービスは目新しさや利便性以上に、アクセスが困難な地域への輸送手段として期待を集めています。

地方に住む人々の生活の質を維持するためには、ドローンのような技術を通じて小売や社会福祉、農業の自動化を進めることが重要になります。

日本が掲げる<ドローン・イノベーション>は、トップレベルの指導者が深く関与しています。安倍晋三首相はドローンを第四次産業革命を推進する技術の1つとして頻繁に言及しています。2016年に、安倍政権は2018年までに地方でドローン配送を認め、オリンピックが開催される2020年までに東京でも容認する計画について協議しました。これが実現すれば、東京はドローン配送を実施する世界初の巨大都市(定義上、人口1,000万人以上の都市)となるのです。まずは本年、地方でドローン配送を実現することを視野に、電子商取引大手の楽天とコンビニエンスストアのローソンが福島県で食品や小物などのドローン配送を実現するために協業を開始します。

3. 精密医療

急速に高齢化が進むなかで、日本は糖尿病や心臓病、がん、脳障害など、喫緊の医療課題に直面しています。

2016年の日本人の主な死因はがんで、全死因の28.5%。次いで心臓病と肺炎が主要な死因でした。

Image: 画像:厚生労働省(日本)

厚生労働省は、希少疾患やがん、感染症、認知症を解明し、治療法を開発するために、 精密・個別化医療研究に投資しています。精密医療は、DNAなどの個人の生物学的構造や生活習慣の詳細な理解に基づき、がんなどの疾患をより個別化して正確に診断し治療する領域です。多くの精密医療は がん治療を対象 としており、日本国内で幅広く適用することができるでしょう。

現在、がんは日本の主な死因となっていますが、2030年までに経済的に最も負担が大きい疾患は糖尿病や脳卒中(脳内の血流が不足することによる発作)、虚血性心疾患(動脈硬化による心臓発作)になると予測されています。

こうした疾患の治療に向けて精密医療を制度化することも可能ですが、薬物の相互作用や予期せぬ副作用を最小化するためには、現行の治療法と合わせて 安全で効果的な治療を計画するための患者の生物学的、遺伝子的構造の分析が必要です。

世界経済フォーラムは東京に第四次産業革命センターを設立しました。次なる産業革命に向けた日本の取組みに貢献する新しい政策アプローチを支援します。

本稿は世界経済フォーラムのアマンダ・ルッソの協力により執筆されました。

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