<報告書発表> 次なる新興テクノロジーが、エネルギー、医療、インフラへのアクセスを拡大 ~2026年の新興テクノロジー・トップ10~

発行済み
2026年06月23日
2026
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世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org

  • 世界経済フォーラムの2026年版「新興テクノロジー・トップ10」レポートは、エネルギー、医療、インフラ分野における革新的な技術を特定しています。
  • 本レポートでは、今後3~5年以内に実社会でのインパクトが期待される10の新興テクノロジーを取り上げています。対象分野はエネルギー、医療、インフラに及びます。·これらの技術は、エネルギーや医療、重要資源へのアクセス拡大に貢献し、地理的条件や既存の資源状況への依存を軽減する可能性があります。
  • 2026年ニュー・チャンピオン年次総会の詳細はこちら。ソーシャルメディアでのフォローは、こちらから。#amnc26、#2026夏季达沃斯#、#InnovateScaleImpact。報告書全文はこちら

2026年6月23日、中国、大連 – 世界経済フォーラムは、2026年版「 新興テクノロジー・トップ10」レポートを発表しました。本レポートでは、今後3~5年以内に経済や社会を大きく変革する可能性を秘めた、技術的ブレークスルーを特定しています。

主要な学術出版社であるFrontiersとの協力のもと作成された本レポートは、研究段階での進展が大規模な実社会への応用へと移行しつつある重要な転換点に近づいている技術を分析しています。

報レポートでは、商業的および社会的な普及段階に近づいている10の新興技術を紹介しています。

1.エブリシング・トゥ・グリッド(Everything-to-grid)エネルギー

建物、自動車、工場、データセンターなどが、エネルギーの消費者であると同時に供給者としても機能し、必要に応じて蓄電した電力を送電網へ供給できるようになります。エネルギーシステムのレジリエンス向上と地域の再生可能エネルギーの有効活用が期待されます。

2.直接リチウム抽出

従来は数カ月を要したリチウム抽出を数時間で実現し、土地や水の使用量も大幅に削減します。電池材料として重要なリチウムの新たな供給源を開拓し、サプライチェーン強化に貢献する可能性があります。

3.パッシブ放射冷却材料

太陽光を反射し、熱を大気中へ放出することで、電力を使わずに建物や設備を冷却する材料です。エネルギー需要を削減するとともに、高温地域におけるレジリエンス向上に寄与する可能性があります。

4.PFAS分解技術

「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」とも呼ばれるPFAS(有機フッ素化合物)を分解する新技術です。従来の処理では除去が困難だった汚染物質を水源や環境から取り除くことが期待されています。

5.精密発酵

微生物を利用して特定の成分や素材を効率的に生産する技術です。食品、化学製品、医薬品の製造をより少ない資源で実現する新たな方法を提供する可能性があります。

6.エクソソームによる薬剤送達

細胞が自然に生成するエクソソームを活用し、体内の特定部位へ治療薬を正確に届ける技術です。脳を含む従来は到達が難しかった部位への治療を可能にする可能性があります。

7.個別化mRNAがんワクチン

患者の腫瘍に固有の変異を免疫系が認識できるよう訓練する技術です。治療後のがん再発防止能力の向上が期待されています。

8.創薬のための量子シミュレーション

分子間相互作用をこれまでにない精度で再現し、有望な医薬品候補の発見をより迅速かつ効率的に行うことを可能にします。

9.ワールドモデル

複数の種類のデータを活用し、AIシステムが物理環境について共通の理解を構築する技術です。機械による予測、計画立案、現実世界との相互作用の高度化が期待されます。

10.格子ベース暗号

現在のコンピューターだけでなく、将来の量子コンピューターによる解読にも耐えうる暗号技術です。量子コンピューティングの進展に伴うデジタルインフラの安全性確保に貢献する可能性があります。

今回選出された技術の多くは、今後のシステムがより分散型で、個別化され、資源効率の高いものへと進化していく可能性を示しています。

世界経済フォーラムの取締役であるステファン・メルゲンターラーは、次のように述べています。「これらのテクノロジーは、それぞれが単独でも大きなインパクトをもたらす可能性があります。しかし、それらを総合的に見ると、イノベーションが向かう新たな方向性が浮かび上がってきます。エネルギー、医療、製造分野における新たな潮流を示すとともに、食料安全保障、気候変動、治療法の限られた疾病といったグローバルな課題に対し、私たちが技術を活用するあり方について、従来の考え方を見直す契機となるでしょう」。

エブリシング・トゥ・グリッド型エネルギーシステム、直接リチウム抽出、精密発酵といった技術は、生産システムが中央集権的なインフラや従来の地理的制約への依存を減らしていく可能性を示しています。また、パッシブ放射冷却材料は、これまでエネルギー集約型の冷却システムに依存してきた地域において、エネルギー需要や環境負荷を管理する新たな手法を提示しています。

さらに、今回取り上げられた複数の技術は、価値創出が利用地点のより近くでシステムを生産、適応、最適化する能力にますます依存するようになる可能性を示唆しています。個別化mRNAがんワクチン、エクソソームによる薬剤送達、創薬のための量子シミュレーションはいずれも、計算技術、モデリング技術、標的送達システムの進歩によって実現される、より個別化された治療や分子設計への移行を示しています。

特に、生産システム、エネルギーシステム、先端製造がより分散化・適応化していく分野では、従来の天然資源や資源賦存量に加え、インフラ、技術力、導入・展開能力がますます重要になると考えられます。

また本レポートは、PFAS分解技術、パッシブ放射冷却材料、格子ベース暗号といった技術が、産業界や政府による長年の環境、インフラ、安全保障上の課題への対応方法をどのように変革し得るかについても指摘しています。これらの技術のいくつかは、これまで解決が困難で、長期にわたり存在し、あるいは経済的に実現不可能と見なされてきた制約を克服できる可能性を示しています。しかし、こうした潮流が実社会での成功につながるかどうかは、インフラ整備の状況、規制の適応、製造能力、市民からの信頼、そして長期的な投資といった要因に左右されます。

Frontiersのチーフ・エグゼクティブ・エディターであるフレデリック・フェンター氏は次のように述べています。「どの技術が真の転換点に近づいているのかを理解するためには、利用可能な最良のエビデンスと専門知識へのアクセスが不可欠です。オープンサイエンスは、世界中の研究者が互いの成果を基盤として研究を発展させることを可能にし、発見を加速するとともに透明性と信頼性を高めます。この共有された基盤こそが、長期的な社会的利益をもたらすイノベーションを特定し、発展させるうえで重要です」。

ドバイ・フューチャー財団(Dubai Future Foundation)との協力のもと作成された本レポートでは、2031年までにこれらの技術がどのように進化し、普及していくかを左右する条件についても分析しています。対象には、インフラ整備の状況、ガバナンス、投資、そして社会的受容が含まれます。これらの要素は総じて、今日の新興技術が将来、幅広い社会的インパクトをもたらすかどうかを決定づける重要な役割を果たすことになります。

「新興テクノロジー・トップ10」レポートについて

今回で第14版となる「新興テクノロジー・トップ10」報告書は、科学技術の変化に対応するための信頼性の高い洞察を提供し、リーダーの意思決定を支援することを目的としています。

本報告書は、科学者、研究者、未来予測の専門家(フューチャリスト)の知見をもとに、今後5年以内に社会実装が進み、幅広い社会的利益をもたらすと期待される10のイノベーションを特定しています。

掲載技術は、AIを活用した学術文献の分析に加え、投資動向やエコシステムの潮流に関する分析、さらに専門家による評価を組み合わせた厳格な選定プロセスを経て選出されています。

ニュー・チャンピオン年次総会2026について

第17回 ニュー・チャンピオン年次総会は、「イノベーションの波及と深化」をテーマに、2026年6月23日から25日まで、中国の大連で開催されます。本会合には、各分野から1,700人のリーダーが集い、急速に変化するグローバル環境の中、イノベーションや新興技術がどのように新たな成長モデルを生み出し、経済の前向きなモメンタムを促進できるかについて議論します。

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