世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2026年6月23日 、中華人民共和国、大連 - 世界経済フォーラムは、「人と機械の協働フレームワーク(Human-Machine Collaboration Framework)」を発表しました。本フレームワークでは、製造業およびサプライチェーンにおける80を超える職種を対象に、人間と機械の協働が進む中で、職種、業務、そして求められるスキルが今後どのように変化していくことが予測されるかを示しています。
製造業およびサプライチェーンは、人間と機械の協働による新たな時代を迎えています。2030年までに、雇用主の86%がAIや情報処理技術によって自社の事業が変革されると予想している一方で、63%がスキルギャップを変革に向けた最大の障壁として挙げています。世界経済フォーラムの「グローバル・ライトハウス・ネットワーク」の事例からは、人材の準備状況がすでに競争力を左右する重要な差別化要因となりつつあることが示されています。先進的な拠点では、人間と機械の協働、デジタルスキルの向上、新たな働き方への投資を通じて、パフォーマンスの向上を実現しています。
世界経済フォーラムはアクセンチュアとの協力のもと、「人と機械の協働フレームワーク(Human-Machine Collaboration Framework)」を策定しました。本フレームワークは、ワークフロー、業務、職種、そしてスキルがどのように変化しているかを組織が理解し、AIや先端技術と共に働く「インテリジェント・オペレーション」の時代に向けて人材育成と労働力の準備を進めることを支援するものです。
世界経済フォーラムの取締役であるキバ・オールグッドは次のように述べています。「製造業は次なるパラダイムシフトを迎えています。今回のブレークスルーは新たな機械ではなく、人とインテリジェントシステムとのパートナーシップです。この移行を成功させる企業は、AIで労働者を置き換えるのではなく、人間の判断力を大規模に拡張しています。本フレームワークは、その未来を意図的に構築するためのロードマップをリーダーに提供します」。
本イニシアチブの中核となるのは、新たに開設されたデジタル・リソースハブです。同ハブでは、製品開発、計画、生産、保守、品質管理、物流、サプライチェーンマネジメントにわたる80を超える産業分野の職種を体系的に整理しています。分析によると、今後10年間で産業分野の職種の4分の3が変化すると見込まれており、そのうち75%は業務範囲が拡大するか、より高付加価値な業務へと移行すると予測されています。
本フレームワークでは、職種を「Elevated(高度化)」「Expanded(拡張)」「Emerging(新興)」「Consolidated(統合)」の4つのカテゴリーに分類しています。また、将来の産業オペレーションにおいて求められるスキル、ツール、行動特性を示した「スキルマトリクス」も提供しています。分析によると、将来の産業分野で必要とされるスキルの約40%は新たに登場する、あるいは重要性が高まるスキルであり、判断力、機械の監督・管理能力、自律型システムに関する説明責任やガバナンスへの需要が高まると予測されています。一方で、こうした新たなスキルに加え、人間ならではの中核的な能力も引き続き重要であり、場合によってはその重要性がさらに高まると考えられています。具体的には、リスク評価と優先順位付け、利害関係者間の対立解消、トレードオフの調整、経営層とのコミュニケーションやストーリーテリングといった能力が、今後も産業現場において不可欠な役割を果たします。
また、本フレームワークでは、製造業およびサプライチェーン分野で今後新たに登場すると見込まれる職種も特定しています。具体的には、サプライチェーン・インテリジェンス・アナリスト、品質自動化技術者、コントロールタワー・ガバナンス担当者、自律型物流スペシャリスト、自律型倉庫・フルフィルメント・オペレーター、ロボティクス・エンジニア/オーケストレーターなどが挙げられます。
「今日の製造業にとって最も重要な優先課題の一つは、人とインテリジェントシステムがシームレスに協働する未来に向けて、労働力の準備を進めることです」と、Western Digitalのグローバル・オペレーション担当チーフであるヴィディヤ・グビ氏は述べています。
「AIと自動化がオペレーションを変革する中、次世代人材への投資と、進化する役割に対応できるよう従業員の継続的なスキル向上を図ることの重要性は、かつてないほど高まっています。『人間と機械の協働フレームワーク』は、人間の可能性をAIや自動化とともに最大限に引き出せる未来を設計することで、組織がこうした取り組みを進めることを支援します」。
リソースハブに加え、本イニシアチブではアクティベーション・プレイブックも提供しています。このプレイブックは、組織、事業拠点のリーダー、エコシステム関係者が人と機械の協働を実践的に導入するための指針を示しています。具体的には、ワークフローの再設計、産業人材のスキル開発、インテリジェントシステムへの信頼構築、そして人材投資と技術導入の整合を図るための戦略を提示しています。
本フレームワークおよび関連リソースは、業界リーダー、政策立案者、研究者、人材開発の専門家との40回以上の協議、世界各地で開催された10回以上のコミュニティワークショップ、さらにライトハウス拠点の視察から得られた知見をもとに作成されました。リソースハブとアクティベーション・プレイブックは、AI時代における産業人材変革のためのエビデンスに基づく基盤を提供します。
ベトナム・ホーチミン市第4次産業革命センター部門長であるレ・チュオン・ズイ氏は次のように述べています。「ベトナムが地域および世界のバリューチェーンの上位へと進む中で、将来の競争力は技術導入だけでなく、人とインテリジェントシステムがどれだけ効果的に協働できるかにかかっています。人間中心の理念に基づく人と機械の協働フレームワークは、人材育成、AI導入、産業変革を未来の働き方という共通ビジョンのもとで整合させるための貴重な基盤を提供し、より強靭で革新的かつ未来志向の産業構築に貢献します」
今後、「人間と機械の協働フレームワーク」は、産業オペレーションの次なる時代に向けて人材育成と労働力の準備を進める産業界のリーダー、政府、教育機関にとって共通の基盤となることを目指しています。本イニシアチブは、将来のワークフロー、職種、スキルを理解するための共通の枠組みを提供することで、製造業およびサプライチェーンのエコシステム全体における、より連携した労働力計画、人材育成、政策立案を支援することを目的としています。世界経済フォーラムは、本フレームワークの導入とその実効的な活用に向けて、産業界、政策立案者、学術界との連携をさらに深めていくことを期待しています。
第17回 ニュー・チャンピオン年次総会は、「イノベーションの波及と深化」をテーマに、2026年6月23日から25日まで、中国の大連で開催されます。
本会合には、各分野から1,700人のリーダーが集い、急速に変化するグローバル環境の中、イノベーションや新興技術がどのように新たな成長モデルを生み出し、経済の前向きなモメンタムを促進できるかについて議論します。