<報告書発表> 世界経済の見通し、地政学的逆風とAIによる追い風の狭間で不透明感強まる

発行済み
2026年05月28日
2026
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世界経済フォーラム 広報統括(日本)栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org

  • 調査対象となったチーフエコノミストの約9割が、今後1年間で世界経済成長が減速すると予測。一方、世界的な景気後退の可能性があると見る回答は13%にとどまりました。
  • ホルムズ海峡の封鎖によるエネルギー価格、食料価格の上昇やサプライチェーンの混乱を背景に、94%が今後1年間で世界的なインフレ率の上昇を予測しています。
  • 92%が今後1年間でAI導入の拡大を見込む一方、生産性向上効果が産業全体に波及するスピードについては、慎重な見方が広がっています。
  • 『チーフエコノミスト・アウトルック』の全文はこちら。ニュー・チャンピオン年次総会2026の詳細はこちら。ソーシャルメディア上のハッシュタグは、#amnc26、#2026夏季达沃斯、#innovation26 。

2026年5月28日、スイス、ジュネーブ - 世界経済フォーラムが発表した最新の『チーフエコノミスト・アウトルック』によると、ここ数週間で世界経済の見通しは急速に悪化しています。

調査対象となったチーフエコノミストの約9割が、今後12カ月で世界経済成長が減速すると予測しており、年初時点で見られた慎重ながらも楽観的な見方は後退しました。背景には、中東地域における紛争の激化とホルムズ海峡の封鎖により、世界経済への大規模なショックに対する懸念が高まっていることがあります。

チーフエコノミストは、現在のホルムズ海峡封鎖について、昨年の関税を巡る混乱よりも深刻な混乱要因であると位置づけています。封鎖が年後半まで続いた場合、その影響は新型コロナウイルスの危機に匹敵する規模に達する可能性があり、世界のサプライチェーン、エネルギー価格、食料価格への影響をさらに増幅させると見られています。また、調査対象者の94%が、今後1年間で世界的なインフレ率が上昇すると予測しています。

世界経済フォーラムのサーディア・ザヒディ常務取締役は、次のように述べています。「ほんの数カ月前まで、チーフエコノミストのコミュニティは、慎重ながらも楽観的な見方をしていました。しかし、中東地域における紛争によって状況は一変しました。すでに現時点で、この状況による経済的な傷跡は今後数カ月にわたって残ると見込まれています。混乱が長引くほど、その長期的なコストは、最も負担能力の低い人々に重くのしかかることになります」。

地域ごとに分かれる経済の見通し

最も大きな影響を受けると見込まれているのは、中東・北アフリカ地域です。数カ月前には比較的明るい経済見通しが示されていましたが、現在では調査対象者の88%が「弱い」または「非常に弱い」成長を予測しており、今回の調査で最も大きな悪化を示した地域となりました。一方、他地域の見通しは分かれています。サブサハラ・アフリカではインフレ期待が大幅に上昇し、調査対象地域の中で最も高い水準となっています。また欧州では、成長鈍化とインフレ懸念の高まりを背景に、スタグフレーション・リスクが強まっています。これに対し、インドと米国については、内需と投資に支えられ、比較的堅調を維持すると見込まれています。

リセッション・リスクは限定的も、市場の変動性は高まる見通し

急速な見通し悪化しているものの、今回の調査結果は深刻な景気後退を示すものではありません。大多数のチーフエコノミストは、今後12カ月以内にリセッションが起きるとは予測していない一方、短期的な経済回復力についても慎重な見方を示しています。今後の展開は、混乱がどの程度長引くかに大きく左右されます。短期間で収束すれば回復の余地は残されるものの、封鎖が長期化した場合、世界経済への負荷はさらに強まると見込まれます。

金融市場への圧力も高まる見通しです。回答者の79%が、プライベートデット市場のボラティリティ上昇を予測しており、プライベートクレジット市場ではストレスの兆候も見られています。また、74%が公的債務市場、68%が株式市場におけるボラティリティ上昇を見込んでいます。

AIへの期待は依然高いものの、見方は慎重化

AIは引き続き世界経済にとって追い風と見なされており、92%のチーフエコノミストが、今後1年間で人工知能の導入拡大を予測しています。一方で、AI導入による生産性向上が実現するスピードについては、より慎重な見方が広がっています。2026年1月時点の調査結果と比較すると、ほぼすべての産業で「顕著な生産性向上」が実現するまでに、より長い時間を要すると見込まれています。

情報技術分野および教育分野のみが従来の期待水準を維持しており、生産性向上の遅れが特に大きいと見込まれているのは、エンジニアリング、建設、公益事業、医療・ヘルスケア、ケアサービス分野です。

『チーフエコノミスト・アウトルック』について

本報告書は、世界経済フォーラムのニューエコノミー、ソサエティ部門による官民のチーフエコノミストを対象とした広範な協議および調査を基に作成されています。本報告書は、同フォーラムの「成長の未来イニシアチブ」を支援するものであり、持続可能で包摂的な経済成長に向けた対話と具体的な行動への道筋を促すことを目的としています。今回の調査は2026年4月6日から17日にかけて実施されました。本報告書は、世界経済フォーラムの フューチャー・オブ・グロウス・イニシアチブ(Future of Growth Initiative) を支えるものであり、新たな経済環境における成長について、企業と政府の対話を促進することを目的としています。

ニュー・チャンピオン年次総会2026について

第17回 ニュー・チャンピオン年次総会は、「イノベーションの波及と深化」をテーマに、2026年6月23日から25日まで、中国の大連で開催されます。

本会合には、各分野から1,500人のリーダーが集い、急速に変化するグローバル環境の中、イノベーションや新興技術がどのように新たな成長モデルを生み出し、経済の前向きなモメンタムを促進できるかについて議論します。

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