グローバル・ライトハウス・ネットワーク2025 世界経済フォーラム、製造業のホリスティックな転換を推進する 12の拠点を新たに認定

発行済み
2025年09月15日
2025
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世界経済フォーラム 広報統括(日本) 栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org

  • 世界経済フォーラムは、新たに12拠点をグローバル・ライトハウス・ネットワークに迎えました。同ネットワークは、製造業における最先端技術の先駆者である、201の主要産業拠点で構成されるコミュニティとなりました。·顧客中心主義における飛躍的な成果を認められた2拠点をはじめ、4拠点が生産性、4拠点がサプライチェーンのレジリエンス、2拠点が持続可能性、そして1拠点が人材育成においてそれぞれ認定されました。
  • ライトハウスの最新グループはは7カ国にまたがり、中国から6拠点、メキシコ、シンガポール、タイ、トルコ、カタール、フランスからそれぞれ1拠点ずつが選出されました。
  • 日本からは、2020年にGEヘルスケア・ジャパン(日本、東京都日野市)、日立製作所(日本、大みか事業所)に認定されたのを最後に、今日に至っています。
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2025916日、スイス、ジュネーブ – 世界経済フォーラムは、新たに革新的な12の拠点をグローバル・ライトハウス・ネットワークに迎え、主要な生産施設とバリューチェーンの総数を201としました。これらの拠点では、デジタル技術を大規模に活用し、顧客中心主義、生産性、サプライチェーンのレジリエンス、持続可能性、人材育成において卓越した成果を実現しています。

ライトハウス(灯台=指針)の最新グループには、卓越したオペレーションを形作る3つのトレンドが見られます。それは、AIや高度な分析技術を活用し、協調的な意思決定に基づく革新的な取り組みを推進していること、組織が高度に連携し、個々の拠点を超えてサプライチェーン全体にその影響力を拡大していること、人材開発とネットワーク全体での持続可能性への取り組みが相乗効果を生み出し、パフォーマンス向上の新たな可能性を切り開いていることです。中国、メキシコ、フランス、タイ、トルコ、カタール、シンガポールに展開するこれらのライトハウス拠点は、多様なグローバル展開を反映しており、グローバル・ライトハウス・ネットワークを通じてベストプラクティスの共有や業界、地域を超えた迅速な進展を実現していきます。

世界経済フォーラムの取締役兼アドバンスド・マニュファクチャリング、バリューチェーン部門長、キバ・オールグッドは次のように述べています。「未来を形作る組織とは、今日すでにホリスティック(全体論的)な変革を推進し、デジタル革新、レジリエンス、持続可能性、人材開発、顧客中心主義をあらゆる活動に統合している組織です。ライトハウスの新たなグループは、業界やセグメントを超えて先進的な企業がこのビジョンをどのように実践に移し、業務の卓越性と社会的影響力において新たなグローバル基準を打ち立てているかを示しています」。

今回認定されたグループは、全体として労働生産性を40%向上、リードタイムを48%削減しました。また、前年と比較して、AIと生成AIを活用したユースケースが増加しており、実装された上位ユースケースの最大50%を占めています。これらの取り組みにより、製品不良率41%減、エネルギー消費量28%減、サイクルタイム44%短縮など、多岐にわたる効果が確認されました。

シーメンスAGおよびデジタルインダストリーズCEOであり、グローバル・ライトハウス・ネットワーク・アンバサダーのセドリック・ナイケ氏は、次のように述べています。「かつてはコストと規模の最適化を目的としていたグローバルサプライチェーンは現在、近接性、リスク管理、レジリエンスの観点から再定義されつつあります。グローバル・ライトハウス・ネットワークは、『グローカリゼーション』の進む現代において、ニーズを強みに転換できる製造業の力を示しています。テクノロジー、持続可能性、そして従業員のエンパワーメントに焦点を当てた新たなライトハウスは、変革がもたらす柔軟性と競争優位性を明確に証明しています」。

顧客中心主義のライトハウス

本カテゴリでは、技術を活用した設計や調達と、バッチサイズ、リードタイム、製品コスト、性能の最適化により、市場投入スピードとカスタマイズ性の両面で優れた成果を達成した生産拠点が選出されました。新しい顧客中心主義のライトハウスは、以下のとおりです。

1. イートン・エレクトリカル・エクイップメント(中国、常州):在庫管理単位(SKU)が164,000点、新規カスタム設計が年間5,000点以上という複雑なポートフォリオを管理するため、デジタルトランスフォーメーションを導入。機動性とコスト効率の向上を図っています。また、AIとシミュレーション技術の適用により、設計サイクルの大幅な短縮を実現。先進的なロボット技術の導入により労働生産性が向上し、生成AIとデジタルツインソリューションを採用することで対応力も強化しました。その結果、リードタイムが39%短縮され、業務効率を50%向上し、収益は129%増加。これらはすべて、従業員の増員なしに達成されています。

2. メトラー・トレド・インターナショナル(中国、常州):顧客ニーズの個別化志向と市場の細分化が進む中、受注の34.8%が単品注文という状況を受け、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを開始。AIによる製品構成の高速化、再構成可能なモジュラー型クラスターワークステーション、機械学習を活用した溶接検査とクローズドループ調整機能による品質維持など、49の第四次産業革命(4IR)ユースケースを導入しました。これにより、納期遵守率98.4%、リードタイム22%短縮、ネットプロモータースコア84.9を達成しました。

生産性のライトハウス

技術革新を活用した変革により、コストと品質において卓越した成果を達成した生産拠点を認定。資産活用率の向上、作業者の能力向上、および資源管理の最適化を実現した事例を対象としています。新しい生産性のライトハウスは以下のとおりです。

1. グローバルファウンドリーズ(シンガポール):人材不足や自動車向け新デバイスを含む需要急増に対応するため、同社のFab 7拠点では、プロセス複雑化の増大、より厳格な品質要求への対応、試作開発の加速化を目的として、60件以上の4IRユースケースを導入。ホリスティックに変革を実施する担当チームを構築し、AIベンダーや大学と連携して、機械学習ベースの予知保全、遠隔サポートの実現、機械学習を活用した品質管理、ワークフローのデジタル化という四つの重点領域で取り組みを進めました。その結果、労働生産性が40%向上し、新製品導入における試作期間が30%短縮されました。

2. ハイアール・ウォッシング・エレクトリカル・アプライアンシズ(中国、上海):ハイエンド市場の需要に応えつつ、地域的なコスト圧力と品質への期待に対処するため、2022年に立ち上げた新たな生産拠点で、自社開発の産業用IoTプラットフォームと、生成AIを活用した3Dモデリング、深層学習などの先進技術を活用。生産量を37%増加、納品効率を40%向上させ、転換コストを33%削減しました。

3. カタール・シェルGTL(カタール、ラスラファン):カタール国政府に代わって世界最大級のガス・トゥ・リキッド(GTL)プラントを運営。天然ガスから1日あたり26万バレルの液体炭化水素を生産するこの施設において、初期段階の資産健全性と信頼性に関する課題に取り組みました。構造健全性を実現するAI技術など、45以上の4IRソリューションを導入し、最前線にある現場チームを強化した結果、5年間で、サイト全体の処理能力を9%向上、信頼性を99%に改善、排出量を7%削減、設備寿命を最大50%延長という成果を達成しました。

4. トンウェイ・ソーラー(中国、眉山):競争の激しい太陽電池市場において、電力変換効率(PCE)と品質の向上を目標に、デジタルトランスフォーメーションに重点を置いて取り組んでいます。導入した50以上の4IRユースケースの大半は、AIを基盤としたものであり、具体的には、機械学習によるプロセス最適化の推進、生成AIを活用したメンテナンス、高度なAIアルゴリズムによる欠陥分析などが挙げられます。この変革により、電力変換効率は12%向上、欠陥率は41%削減、変換コストを37%削減し、二酸化炭素排出量を33%削減しました。

サプライチェーン・レジリエンスのライトハウス

サプライチェーン・トランスフォーメーション(計画、フルフィルメント、物流など)を通じて、サービス品質と機動性において卓越した成果を達成するための生産拠点を認定。透明性の向上と運転資本管理の最適化を図ります。新しいサプライチェーン・レジリエンスのライトハウスは以下のとおりです。

1. レノボ・セントロ・テクノロヒコ(メキシコ、モンテレイ):北米最大の拠点として、80以上の市場に向け、2,000社の海外サプライヤーと52,000のSKU(在庫管理単位)を定期的に管理。同時に、品質への重視の高まりやメキシコにおける労働環境の変化に対応しています。半数以上がAIおよび生成AIを活用した60以上の4IRソリューションを導入し、リードタイムを85%、物流コストを42%、品質損失を56%、二酸化炭素排出量を30%削減。同時に、生産性を58%向上させました。現在、同拠点は同社のグローバルデジタルモデル工場としての役割を担っています。

2. ミデア・リフリジレーション・エクイップメント(タイ、シーラチャ):複雑な越境サプライチェーン、顧客品質問題、研修障壁に対処するため、72のデジタルおよびAIソリューションを導入。これにはクローズドループ品質システムや生成AIを活用した人材育成が含まれます。その結果、受注リードタイムを43%短縮、顧客クレームが32%減少し、従業員の資格取得速度が62%向上しました。

3. トルコ・ペトラル・リファイナリー(TUPRS)(トルコ、イズミット):
2014年に残渣アップグレードプラントを稼働させた後、原油種類の多様化、製品の複雑化、港湾販売による桟橋混雑の増加といった課題に直面。これに対応するため、バリューチェーン全体にわたる計画、在庫、物流を統合する、デジタルトランスフォーメーションを開始しました。AIを活用した予測および最適化ソリューションを導入した結果、納品信頼性は85%から95%に向上、平均トラック積載時間が75%短縮、予測業務の労働生産性が48%向上し、二酸化炭素排出量が8%、水使用量が31%削減されました

4. ユンナン・バイヤオ・グループ(中華人民共和国、昆明):
急速に変化する消費者ニーズに対応し、電子商取引の変動性や地方市場拡大を管理するため、主要生薬原料の品質ばらつきと栽培地域の分散化という課題に取り組みました。衛星センシング、産業用IoT、大規模言語モデルなど、40以上の4IRソリューションを導入した結果、原料返品率は78%減少、在庫日数は38%短縮、欠品率は30%削減。より安定かつ迅速な供給体制を確立しました。

持続可能性のライトハウス

先進的なソリューションを通じて、エネルギー、排出量、水、廃棄物の削減において業界をリードする成果を達成した生産拠点を認定。これは、ネットゼロ、脱炭素化、サーキュラー・エコノミーの実現というホリスティックな目標の達成に向けた取り組みの一環です。新しい持続可能性のライトハウスは以下のとおりです。

1. ハイセンス日立エアコンディショニング・システムズ(中国、青島):
持続可能性目標の達成に向け、製品ライフサイクル全体にわたる排出量削減のため、27の4IRソリューションを導入。対象は、社内の冷媒漏洩(スコープ1の96%)、研究開発業務(スコープ2の46%)、資材調達および顧客サイトでの使用(スコープ3の90%以上)でした。IoTと高度な分析技術を活用し、冷媒漏洩を56%削減すると同時に、主要プロセスの再設計によりスコープ1および2の排出量を48%削減。顧客サイトにおける環境パラメータの最適制御戦略により、製品使用に伴うスコープ3排出量を28%削減しました。

2. シュナイダーエレクトリック国際配送センター(フランス、エブルー):
資源の不足、規制、顧客の要求に対応するため、同拠点を初の循環型流通センターへと転換。「より良く、より長く、繰り返し使用する」というエンドツーエンドのモデルを導入し、大規模なサーキュラリティを実現しました。主要なイノベーションには、3,000点以上のSKUの注文、回収を可能にするデジタル顧客プラットフォーム、製品と修理、再生、再包装を連携させるデータモデル、包装、輸送、エネルギー分野における循環型ソリューションなどが挙げられます。これらの取り組みにより、使い捨てプラスチックを40%、エネルギー消費量を18%削減しました。

人材育成のライトハウス

先進的なソリューションを通じて、業務設計と安全、人材計画、採用とオンボーディング、育成、効果において、従業員に革新的な影響をもたらす生産拠点を認定しました。新しい人材育成のライトハウスは以下のとおりです。

1. ハイアール・リフリジレーター・マニュファクチャリング(中国、重慶):
若い世代の労働者における高い流動性と生産性向上の課題に、創業以来の理念である「人単合一」モデルを適用。管理中心の組織からサービス中心の組織へと転換しました。個別化された昇進パス、ポイント制のイノベーション奨励プラットフォーム、複数時系列予測を用いたチームレベルのスマートな労働力計画など、35の4IR人材育成ソリューションを導入し、離職率は40%減少、参加率は61%に上昇しました。

本発表に合わせ、ライトハウスが人材の定着、アップスキリングとリスキリング、再教育に向けた新たな手法をいかに先駆的に推進しているかを明らかにした、世界経済フォーラムのインサイトレポート『Empowering Frontlines: Retaining, Training, and Upskilling Industrial Workforce(現場力の強化:産業人材の定着、育成、アップスキリング)』が発行されます。同レポートはFrontline Talent of the Future(最前線人材育成の未来)」イニシアチブの一環として作成。このイニシアチブは、先進的な拠点から実証済みの戦略を抽出し、組織が最前線の労働力を効果的に採用、育成し、参画させて、未来の工場やサプライチェーンにおける人間中心型で高パフォーマンスな業務体制の構築を支援することを目的としています。

グローバル・ライトハウス・ネットワークについて

2018年に発足したグローバル・ライトハウス・ネットワークは、生産性、サプライチェーンのレジリエンス、顧客中心主義、持続可能性、人材育成において卓越した成果を上げた、世界を代表する産業拠点の成功を集め、認定する取り組みです。このグローバルコミュニティは現在、31カ国、35のセクターに拡大。複数の業界において1,000のソリューションを展開している201の拠点で構成されています。

同ネットワークは世界経済フォーラムがマッキンゼー・アンド・カンパニーの協力を得て設立したイニシアチブであり、グローバルな製造業の未来を形作るために連携した業界リーダーたちから成る諮問委員会の助言を受けています。諮問委員会には、フォックスコン・インダストリアル・インターネット、コチ・ホールディング、マッキンゼー・アンド・カンパニー、シュナイダーエレクトリック、シーメンスが参加。また、ネットワークに参加する拠点およびバリューチェーンは、独立した専門家パネルによって認定されます。グローバル・ライトハウス・ネットワークへの参加申請の次回受付は、2025年12月に開始される予定です。

持続可能な開発インパクト会合2025について

2025年の「持続可能な開発インパクト会合」は、9月22日から26日までニューヨークで開催され、様々な分野や地域から1,000人を超える世界のリーダーが一堂に会します。2026年の世界経済フォーラム年次総会に先立って開催される同会合は、同フォーラムが年間を通じて取り組む活動の一環であり、多様なステークホルダーによる対話と行動を通じて、持続可能な開発の進展を加速することを目的としています。

すべての意見は、著者によるものです。世界経済フォーラムは、独立かつ中立なプラットホームとして、​グローバル、地域、産業のアジェンダを形成する話題に関わる議論の場を提供しています。

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