世界経済フォーラム 広報統括（日本）栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2025年3月26日、中国、香港特別行政区 – 世界経済フォーラムの発表した「グローバル・リテール・インベスター・アウトルック2024」では、若い個人投資家への持続的なシフトが起きていることが示されています。13の経済圏を対象とした今回の調査では、Z世代の30%が成人早期に投資を開始していることが分かりました。これは、X世代の9%、ベビーブーマー世代の6%と比較すると高い割合です。Z世代の86%が初めて就職するまでに個人投資について学んでいるのに対し、ベビーブーマー世代では47%にとどまっており、世代による金融習慣の変化が浮き彫りになっています。
ロビンフッド・マーケッツとボストン コンサルティング グループ（BCG）の協力を得て実施された今回の最新グローバル調査では、新たなテクノロジートレンドも強調されました。また、若い世代はテクノロジーやAIを活用した金融アドバイスにもよりオープンであり、Z世代とミレニアル世代の41%が、AIアシスタントに投資運用を任せることを許可すると回答しています。同じ回答は、ベビーブーマー世代ではわずか14%でした。
同フォーラムの金融市場とレジリエンス部門長、ナターリャ・グセバは「若い世代や新興市場の個人投資家は、富を築き、経済的な安定性を得るために、投資への関心を高めています。投資家の層がこのように継続的に変化していることを踏まえると、リーダーたちは小口投資の現状を見直し、すべての投資家が自身の経済的目標を達成できるよう、適切な金融教育と投資ツールを確実に提供することが重要です」と述べています。
小口投資家の傾向
調査では、個人投資家は投資信託、債券、株式といった従来からの投資よりも暗号通貨の方が、容易に取り組めて理解が簡単だと考える傾向が強まっていることが分かりました。理解が難しいことを理由に29%が株式を避けている一方、同じ理由で暗号通貨を避けているとした回答者は24%にとどまりました。また、暗号通貨を保有している44歳未満の投資家のうち、半数以上がポートフォリオの少なくとも3分の1を暗号通貨に割り当てています。
金融上の優先事項は、短期のニーズへとシフトしています。2024年には、投資家の51%が緊急時の貯蓄を優先事項として挙げており、2022年の41%から増加。一方、退職後に向けた十分な蓄えを重視する人は、48%から42%に減少しました。
非投資家にとって、最大の障壁は資金不足と金銭的損失への不安です。半数以上が、初等教育の段階で投資について学んでいれば、より自信を持って取り組めただろうと述べています。
また、若い投資家ほどAIによる金融アドバイスに前向きです。さらに、新興市場の個人投資家の48%が、年齢を問わず、AIアシスタントに投資運用を任せると回答しています。
ロビンフッドの投資戦略担当シニア・ディレクターでCFA資格を有するステファニー・ギルド氏は「AI搭載商品のような革新的な金融アドバイスツールは、従来の金融アドバイスでは高額すぎて利用が難しい場面で、不足を補う役割を果たす可能性があります」と述べています。「参入障壁を低くし、デジタルアドバイスに本質的なガイダンスを追加するイノベーションは、金融アドバイスをより身近なものにし、より多くの人がより自信を持って市場に参加することを可能にします」
小口投資のメリット
BCGのマネージング・ディレクター兼パートナーであるディーン・フランクル氏は次のように述べています。「個人による資本市場への参加は、長期的な経済的安定を実現する可能性を秘めています。小口投資家に最高のツール、教育、アクセスを提供するために、業界のステークホルダーの連携が必要です」。
調査より、個人投資家の支援に向けて個人投資家向けエコシステムに関わるステークホルダーが実施することのできる以下の対応が明らかになりました。
1. 個人投資家を優先する金融商品とプラットフォームの開発 - 資本市場に足を踏み入れる新しい世代が増える中で、進化する投資家のニーズに応えるには、新たな金融商品とプラットフォームが必要となります。従来は機関投資家向けに特化していたものを拡張し、不確実性、資本制約、市場の変動性などの主な障壁に対処する商品を作ることで、個人投資家の参加、信頼、より良い成果を促進することができます。
2. テクノロジーの活用による利便性の向上 - テクノロジーによって、個人投資家が金融アドバイス、ポートフォリオ構築、教育をより簡単に、手頃な価格で利用できるようになります。AI主導のソリューションは、金融アドバイスのプロセスを合理化し、より利用しやすい価格帯でのポートフォリオ設計やアドバイザリーサービスを可能にする可能性を秘めています。
3. 個人投資家の支援と保護を実現する政策の実施 - 効果的な政策とは、投資家が自信を持って市場をナビゲートするための必要なツールを投資家に提供するものです。また、同時にイノベーションを促進し、個人を保護するものでなければなりません。これには、年金の自動加入の拡大、手数料のみで利益相反のないアドバイザリーモデルの推進、個人がそれぞれの財務目標に沿ってリスクを管理できるよう支援する、強固な投資家保護枠組みの導入などが含まれます。
調査方法
世界経済フォーラムは、ロビンフッド・マーケッツおよびBCGの協力を得て、オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、アイルランド、日本、シンガポール、南アフリカ、アラブ首長国連邦、英国、米国の1万3,000人以上を対象に調査を実施。2024年9月に調査会社のダイネータが実施したこの調査では、投資家および非投資家の嗜好、行動、ニーズを探り、得られた洞察から「グローバル・リテール・インベスター・アウトルック2024」が作成されました。回答者は全員18歳以上です。
＜ご参考＞
世界経済フォーラムの 寄稿文 を 日本語 | スペイン語 | 中国語で読む
フォーラムの インパクトの詳細を知る
フォーラム ストラテジック・インテリジェンスとトランスフォーメーション・マップ
ソーシャルメディア: @wef｜インスタグラム｜リンクトイン｜フェイスブック｜ティックトック｜ウェイボー｜スレッズ | ワッツアップでフォローする
動画 wef.ch/videos | YouTube
ポッドキャスト wef.ch/podcasts | YouTube
英文プレスリリース配信登録