世界経済フォーラム 広報統括（日本）栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2025年1月21日、スイス、ダボス・クロスタース – 世界経済フォーラムは、AIが包括的な経済成長と社会進歩を促進する方法を概説した新しいレポートを発表しました。AIには経済と社会を再構築する力がありますが、その恩恵の公平な分配は、依然として大きな課題となっています。レポートでは、リーダーたちが公平性の懸念を払拭し、AIを地域のニーズに合わせて調整して、すべての人々のための持続可能かつ長期的な経済成長を促進するための戦略が提示されています。
KPMGの協力を得て作成されたレポート「インテリジェント・エコノミーの青写真（Blueprint for Intelligent Economies）」では、国家、地域、グローバルの各レベルにおいて、イノベーション、開発、展開、導入といったAIのあらゆる段階を支える9つの戦略的目標が概説されています。本レポートは、同フォーラムの「地域連携によるAI競争力イニシアチブ」の一部であり、AIへのアクセス、インフラ、先進的なコンピューティング、スキルの格差について取り上げています。実行可能な洞察を提供し、成功事例を紹介することで、AIの成熟度に関わらず、各国政府やその他の主要なステークホルダーによる、より包摂的かつ強靭なAIエコシステムの推進に向けた取り組みを支援します。
「AIを活用した経済成長と社会進歩の実現は共通の目標ですが、国や地域によって出発点は大きく異なります」と、同フォーラムのAI、データ、メタバース部門長であるキャシー・リーは述べています。「この青写真は、意思決定者がインパクト志向の協力や実用的なソリューションを見出し、AIの潜在能力を最大限に引き出すための羅針盤となるでしょう」。
国および地域のAI戦略を、各国政府、企業、起業家、市民社会、ユーザーなど、すべてのステークホルダーが積極的に関与する形で設計してはじめて、地域のニーズに対応することができます。本レポートでは、ハイレベルなリーダーシップによって支えられ、地域社会との緊密な連携によって策定されるAI戦略を提唱しています。このアプローチは、責任あるガバナンス、データプライバシー、AI政策がイノベーションや投資に与える地域への影響といった主要な課題の解決に役立つでしょう。
南アフリカのソリー・マラツィ通信・デジタル技術大臣は、次のように述べています。「AIの大きな可能性は、世界中の多くの地域でまだほとんど活用されていません。包摂的かつ競争力のあるAIエコシステムの確立は、すべての国にとって重要な優先事項となるでしょう。国、地域、世界レベルで行われる複数のステークホルダー間の協力が、すべての人々のAIによる成長と繁栄を促進する上で不可欠です」。
本レポートは、グローバルな専門知識を活用し、各国の様々なAI開発の段階に合わせた枠組みを提供。あらゆる地域が独自の課題に直面している中で、他地域での成功事例を応用することの重要性を強調しています。例えば、AIインフラやエネルギー資源を共有する地域的な枠組みは、各国の資源の限界を克服するのに役立ちます。また、中央集約型のデータバンクは、多様なコミュニティのニーズを反映した包摂的な地域データセットを作成することができます。官民による補助金で、手頃な価格のAI対応デバイスへのアクセスを広げ、AI技術を採用して事業の拡大を図る地域のイノベーターを支援することもできます。
アラブ首長国連邦に本社を置くテクノロジー・投資企業グループE&のハテム・ドウェイダル最高経営責任者（CEO）は、次のように述べています。「すべての国には、AIを通じて経済や社会の進歩を促進する独自のチャンスがあります。これを実現するためには、AIの進化の各段階で、すべてのステークホルダーが積極的に関与し、政府が意図的なリーダーシップを発揮する協力的なアプローチが必要です。地域およびグローバルな協力体制は、共通の課題や機会に対処し、AIの主要機能への公平なアクセスを確保し、その変革がもたらす可能性を責任を持って最大限に活用し、すべての人々に持続的な価値を生み出すための重要な手段となり続けるでしょう」。
本レポートでは、効果的なAI戦略を推進するための9つの戦略目標が概説されています。中でも、グローバルな国家AIプログラムにとって最も重要な戦略目標として、以下の3つを特定し、詳細に説明しています。
本レポートでは、国家、地域、世界レベルにおける協調的な取り組みを通じて戦略的目標を推進するための、多層的な青写真が提示されています。基盤となる第一層では、持続可能なエネルギー、責任あるAIインフラ、多様なデータ管理、効率的な投資チャネルに重点を置いています。第二層では、AIをワークフローやデバイスに組み込むことで、イノベーションを促進し、各分野でのAIの導入を加速させ、各分野の成長を推進します。第三層では、人を最優先とし、AIの社会的影響を導くためのスキル開発、労働力の強化、倫理的な枠組みを強調しています。
また、本レポートでは、世界的なAIの導入を加速させる上で、官民連携が果たす重要な役割についても強調。各国政府が支援的な政策を実施し、イノベーションと継続的な学習プログラムを奨励することで、AIが持つ成長を促す強力なエンジンとしての潜在能力を解き放ち、インテリジェント時代において世界中の労働者がAIを活用し、活躍できるようになります。
AIへのアクセスを拡大するというビジョンに基づき、AIガバナンス・アライアンスは、AI能力の向上を目的とし、地域に特化した現場密着型のプログラムを提供する「地域AI活性化ネットワーク」を立ち上げます。この取り組みにより、中東、アフリカ、東南アジアにおける地域的な課題への対応、レジリエンスの高いAIバリューチェーンの育成、地域AIエコシステムの参加促進、データガバナンスに関する地域的な取り組みの推進を目指します。同プログラムは、2025年にかけて、地域内の多様なステークホルダーによるプラットフォームを通じて開発される予定です。
同イニシアチブは、特に政策立案者やビジネスリーダーたちを支援し、より公平かつ責任ある地域AIエコシステムを構築することにより、包摂的な成長と反映の共有を促進することを目的としています。詳細はこちら。
2025年1月20日から24日までスイスのダボス・クロスタースで開催される世界経済フォーラム年次総会は、「インテリジェント時代における連携」をテーマに世界有数のリーダーたちを招集して行われます。本会合では、テクノロジーが急速に進歩する時代における5つのサブテーマ「成長の再構築」、「インテリジェント時代における産業」、「人材投資」、「地球環境保全」、「信頼の再構築」に焦点を合わせ、より持続可能かつ包摂的な未来を形作るための新たなパートナーシップと洞察を促進します。詳細はこちら。
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