世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
スイス、ジュネーブ、2024年5月7日 ー 世界経済フォーラムが発表した新しいレポートでは、地球観測(EO)データの経済的・環境的価値を2つの側面から紹介しています。このデータによって、2030年までに世界全体で累積3兆ドル以上の経済的利益がもたらされる可能性があり、同時に気候や自然に関する幅広い解決策を推進することができます。
デロイトの協力を得て発行されたレポート「Amplifying the Global Value of Earth Observation(地球観測がもたらすグローバルな価値の増幅)」は、EOデータの適用、すなわちEOアプリケーションを通じたサステナブルな価値の増進にコミットする産業、技術、気候のリーダーたち40人の視点を統合したものです。本レポートでは、EOテクノロジーがもたらす経済的な可能性をセクターごとに分類し、このテクノロジーを世界に普及させることが、いかにネイチャーポジティブでネットゼロのグローバル経済への移行を促進するかを示しています。
同フォーラム取締役のジェレミー・ジュルゲンズは、次のように述べています。「地球観測は第四次産業革命に不可欠な要素です。このテクノロジーは、AI(人工知能)、デジタル・ツイン、気候テクノロジーと融合し、経済の繁栄と持続可能な成長のための強力なツールとなるでしょう」。
農業、鉱業・石油・ガス、政府、電力、サプライチェーン・運輸、保険・金融サービスという6つのセクターがEOテクノロジーから予測される経済価値の94%を占めますが、ほぼすべてのセクターや業界の組織が恩恵を受けることができます。その鍵となるのは、EOデータが提供する直接的な環境的利益と間接的な経済的利益という2つの価値です。
例えば、農業では作物の健康状態に関するより詳細な情報を得た農家が、よりサステナブルな施肥や灌漑を行いながら作物の収穫量を向上させることができます。金融サービス、特に保険事業者では、EOデータを活用して環境リスクをよりよく理解し、軽減することができます。環境的にサステナブルな資産運用を優先して選択する投資決定も行われやすくなるでしょう。こうしたさまざまな例が、データ主導の意思決定が環境と収益の両方に利益をもたらすことを示しています。
デロイトのグローバル・サステナビリティ・リーダーであるジェニファー・スタインマン氏は、「EOデータの利用が主流になるにつれ、ほぼすべての業種の組織が、サステナビリティに関するこうした貴重な洞察から恩恵を受けられるようになるでしょう」と述べています。「組織が自然への影響や依存度を理解し、持続可能性に関する規制を遵守し、ネイチャーポジティブでネットゼロの経済に貢献する戦略を策定する上で重要な役割を果たすのが、EOデータなのです」。
レポートによると、EOデータの世界的な価値は、現在の2,660億ドルから6年後には7,000億ドル強に膨れ上がるとの予測。これはベルギーのような中規模経済国のGDP(6,280億ドル)に匹敵し、2023年から2030年の間にグローバルGDPに累積3兆8,000億ドルの貢献をもたらす可能性があります。アジア太平洋地域は、2030年までにEOの価値で最大のシェアを獲得し、潜在的な価値は3,150億ドルに達するでしょう。また、アフリカと南米は、最大の成長率を実現できると考えられています。
さらに、EOデータによって毎年2ギガトンの温室効果ガスが削減できる可能性があります。これは、現在の欧州連合(EU)の自動車総数のほぼ2倍に相当する4億7,600万台のガソリン車の年間総排出量に匹敵します。より広い意味では、EOデータの利用が増えれば、イノベーションが刺激され、効率化が促進され、リーダーたちはリスクをより適切に管理できるようになるでしょう。
本レポートによると、このようなテクノロジーは幅広い分野で期待されていますが、分野や地域を問わずその普及を促進するにあたり、課題がないわけではありません。障壁には、EOアプリケーションの認知度の低さ、専門人材の不足、ばらばらな規格、複雑なEO市場をナビゲートする難しさなどがあり、結果としてこのテクノロジーのグローバルな普及が制限されてしまいます。
EOテクノロジーがもたらす経済的・環境的な変革の機会を解き放ち、最大限に活用するためには、情報に基づいた先見的な政策立案とリーダーシップが不可欠です。サステナブルな経済成長を促進し、来るべき世代のために地球に利益をもたらすには、需要を刺激し、AIやその他の実現技術の利用を促進し、地球データをユビキタスにするために必要な主要標準を確立することに焦点を当てた、バリューチェーン全体にわたる協力的な行動が不可欠です。
世界経済フォーラムの地球観測コミュニティについて
世界経済フォーラムの地球観測コミュニティは、主要な地球観測データ提供者、利用者、関連する専門家で構成され、気候や自然の解決に向けた地球観測の変革の可能性について理解を深め、前進させるために活動しています。同コミュニティは、世界経済フォーラムの第四次産業革命部門および自然と気候部門と提携しています。
世界経済フォーラム産業戦略会議(Industry Strategy Meeting)2024について
2024年の世界経済フォーラム産業戦略会議(Industry Strategy Meeting)は、「破壊の時代におけるビジネス変革の形成」をテーマに、産業界の最高戦略責任者、各国政府、アカデミア、市民社会、世界経済フォーラム・イノベーター・コミュニティの代表が一堂に会する会合です。詳細はこちら。
デロイトについて
デロイトの法人構成に関する詳細はこちら。
<ご参考>
世界経済フォーラムの アジェンダ を 日本語 | スペイン語 | 中国語で読む
フォーラムの インパクトの詳細を知る
フォーラム ストラテジック・インテリジェンスとトランスフォーメンション・マップ
フォーラムの動画/写真、X @wef|@davos|Instagram|リンクトイン|ティックトック|ウェイボー |ポッドキャスト| フェイスブック|YouTubeでフォローする
英文プレスリリース配信登録
世界経済フォーラムは、世界官民両セクターの協力を通じて世界の現状の改善に取り組むことを目的とする国際機関です。1971年に設立された同フォーラムは、政府、ビジネス界、学術界および市民社会の第一線で活躍するトップリーダーと連携し、世界をより良くすることを目的に様々な活動を行っています。(www.weforum.org)