世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子 naoko.tochibayashi@weforum.org
2024年1月15日、スイス、ダボス - クロスタース - グローバル経済が逼迫した金融情勢、地政学的対立、人工知能(AI)の急速な進歩といった逆風にさらされ続けている中で発表された、最新の「チーフエコノミスト・アウトルック」によると、グローバル経済の見通しは依然として低迷し、不確実性に満ちたものになっています。
チーフエコノミストの半数以上(56%)は、今年の世界経済は弱含みになると予想しており、43%は横ばいか強含みと見ています。また、労働市場と金融情勢についても、来年は緩和されるとの見方が大勢を占めています(労働市場は77%、金融情勢は70%)。高インフレへの期待はすべての地域で縮小しているものの、成長見通しは地域によって大きく異なります。また、2024年に非常に高い成長が見込まれる地域はありません。
世界経済フォーラムのサーディア・ザヒディ取締役は「最新の『チーフエコノミスト・アウトルック』は、現在の経済環境の不安定さを浮き彫りにしています。乖離が加速する中、グローバル経済のレジリエンス(強靭性)はこれからの1年においても試されるでしょう。世界的なインフレは緩和しているものの、成長は失速しており、金融環境は依然として逼迫しており、世界的な緊張は深まり、格差は拡大しています。このことは、サステナブルかつインクルーシブな経済成長の機運を高めるために、世界的な協力が緊急に必要であることを強調しています」と述べています。
地域別見通し
南アジアと東アジア・太平洋地域の見通しは、前回調査とほぼ変わらず良好で、2024年には少なくとも緩やかな成長が見込まれるとの見方が大多数(それぞれ93%と86%)を占めています。中国は例外で、消費の低迷、工業生産量の低下、不動産市場に関する懸念がより強い回復の見通しを圧迫しているため、緩やかな成長を予想する割合が69%と過半数を下回っています。
欧州では、2023年9月の調査から見通しが大幅に弱まり、「弱い成長」または「非常に弱い成長」を予想する回答者の割合がほぼ2倍の77%に達しました。米国と中東・北アフリカでも見通しは弱く、今年の成長を「中程度」または「強め」と予想したのは回答者の約10人に6人にとどまりました(それぞれ78%、79%から減少)。ラテンアメリカとカリブ海諸国、サハラ以南のアフリカ、中央アジアの成長見通しは顕著な上昇を見せてはいますが、おおむね緩やかな成長にとどまるとの見方です。
地政学的対立により不確実性が増大
チーフエコノミストの約10人に7人が、地政学的分裂のペースが今年加速すると予想しており、過半数が今後3年間で、地政学的状況がグローバル経済(87%)と株式市場(80%)のボラティリティを煽り、地域主義を強め(86%)、地政学的ブロックを強化(80%)し、南北格差を拡大(57%)すると述べています。
各国政府が産業政策の手立てを試行錯誤する傾向が強まる中、こうした政策は各国間でほとんど調整されないままであるとの予想で専門家の意見はほぼ一致しています。チーフエコノミストの3分の2は、産業政策によって新たな経済成長のホットスポットや重要な新産業が出現することを期待している一方で、大多数が財政負担の増大(79%)や高所得国と低所得国の経済格差(66%)に警鐘を鳴らしています。
注目されるAI
チーフエコノミストは、AI(人工知能)がもたらす恩恵は所得階層によって大きく異なると予想しており、高所得国での効果については特に楽観的な見方をしています。今年、高所得国では生成AIによって生産効率(79%)とイノベーション(74%)が高まるとする回答が大多数を占めています。また、今後5年間を見据えた場合、高所得国では94%がこうした生産性向上効果が経済的に大きくなると予想しているのに対し、低所得国では53%にとどまりました。
低所得国では雇用に正味でプラスの影響を与えないとの回答がほぼ4分の3(73%)に達し、高所得国でも47%が同じ回答をしています。生成AIが生活水準を向上させる可能性と信頼の低下をもたらす可能性については意見がやや分かれており、いずれも高所得国で可能性がやや高くなっています。
「チーフエコノミスト・アウトルック」レポートについて
「チーフエコノミスト・アウトルック」は、世界経済フォーラムの「ニューエコノミーとソサエティ」センター(部門)による官民の主要なチーフエコノミストとの協議や調査に加え、最新の政策開発調査に基づいています。今日の経済環境の新たな輪郭を要約し、世界経済への複合的なショックに対応し、政策立案者やビジネスリーダーがさらなる行動を起こすための優先事項を明らかにすることを目的としています。なお、本調査は2023年11月から12月にかけて実施されたものです。
「チーフエコノミスト・アウトルック」は世界経済フォーラムの「フューチャー・オブ・グロース(成長の未来)」イニシアチブをサポートしています。同イニシアチブは、経済成長のための新たな道筋を描くための議論と行動を喚起し、成長、イノベーション、インクルージョン、持続可能性、レジリエンスの目標のバランスを取る上で政策立案者を支援することを目的とした2年間のキャンペーンを主導するものです。2024年1月、同フォーラムは、グローバルな成長トレンドの概要と、これらの成長の軌跡の質に関する包括的な分析を提供することを目的とした「成長の未来レポート」の初版を発表します。
世界経済フォーラム年次総会2024について
世界経済フォーラムは「信頼の再構築へ」をテーマに世界有数のリーダーを招集して世界経済フォーラム年次総会2024を開催します。詳細はこちら。
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