世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子
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2023年9月12日、スイス、ジュネーブ - 世界経済フォーラムの最新の調査によると、家庭用品とパーソナルケア部門は、自然を事業の中心に据えることで、2030年までに年間最大620億ドル(約9.3兆円)のビジネス価値を生み出す可能性があります。つまり、自然に配慮したソリューションが企業により広く採用されることで、10兆1,000億ドルのビジネスチャンスの一部となります。ウォーター・スチュワードシップ、責任ある調達、自然保護、サーキュラリティを優先することで、家庭用品・パーソナルケア部門は変革し、2030年までに自然喪失を食い止め、回復させる役割を果たすことができるのです。
このセクターは、年間約7,000億ドルの収益を上げている一方、自然を犠牲にしています。例えば、化粧品業界だけでも年間1,200億個の包装ユニットが生産され、多くの化粧品や洗剤の一般的な成分であるパーム油は、2000年から2018年までの世界の森林減少の7%を占めています。世界経済フォーラムの最新の調査「ネイチャー・ポジティブ:家庭用品・パーソナルケアの役割」は、「家庭用品およびパーソナルケア部門は、安全で公正な地球システムの境界線の中で、自然をポジティブに捉え、ネット・ゼロの未来に貢献することが不可欠である」としています。
プラスチック製品の生産だけで、世界全体の温室効果ガス排出量の3.4%を生み出しており、これは航空機の二酸化炭素排出量よりも多いことになります。プラスチック製品のわずか10%~20%を再利用するだけで、毎年海洋プラスチック汚染の50%近くを防ぐことができます。これは、自然への依存度が最も高い12のセクターにガイダンスを提供する、セクター調査の一部からの提言です。
「企業は、ネット・ゼロの成果に加え、ネイチャー・ポジティブな移行への関心を高めています。自然保護に前向きなネット・ゼロ戦略は、生態系の崩壊や生物多様性の損失に関する深刻化するリスクを軽減し、最大10兆1,000億ドルの新たなビジネスチャンスをもたらします」と、世界経済フォーラムの取締役であるギム・フエイは述べます。「この報告書は、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)と生物多様性グローバル・フレームワークの野望を行動に移すために、CEOとそのシニア・エグゼクティブにセクター別のガイダンスを提供し、支援するものです」。
「持続可能な開発のための世界経済人会議」(WBCSD)とのパートナーシップのもと、世界経済フォーラムは、2030年までに自然喪失を食い止め、逆転させるという生物多様性グローバル・フレームワークの使命に沿って、自然への影響が最も大きい12のセクターの企業が、自然の保護、回復、持続可能な利用を率先して行えるようにするためのガイダンスを発表しました。
自然に対して行動を起こそうという企業の意識と関心が高まっているにもかかわらず、その進展は依然として鈍いのが現状です。最近の調査によると、フォーチュン・グローバル500企業の83%が気候変動に関する目標を掲げているものの、淡水の消費量に関する目標を掲げているのはわずか25%で、生物多様性に関する目標を掲げているのは5%にとどまっています。また、自然への影響を評価している企業はわずか5%で、依存関係を理解している企業は1%に満たないという調査もあります。
しかし、この危機の岐路にこそチャンスがあります。今行動する企業は、リスクによりレジリエントとなり、新たな環境規制への備えもできます。同時に、企業が生物多様性に取り組むことには、説得力のあるビジネスの根拠ともなります。自然に配慮したビジネスモデルは、企業にとって年間10兆ドル相当の新たな製品やサービスの機会を提供する可能性があり、地球と収益の両方に貢献するのです。
世界をリードする企業との協議により作成されたセクター別の行動は、ビジネス慣行を変革し、企業が自然に配慮した未来に貢献するための基盤となります。
ケミカルと消費財のリーディングカンパニー、ヘンケルのチーフ・サステナビリティ・オフィサーであるウルリケ・サピロ氏は、次のように述べています。「私たちの顧客と投資家は、私たちが持続可能な慣行を採用し、害のない製品を開発することを期待しています。また、私たちのサプライチェーン全体を通じて、自然や生物多様性に関連するあらゆる影響について透明性を保ち、説明責任を果たすことも求められています。私たちの日常的なニーズを満たすだけでなく、次世代のために繁栄する地球を確保する業界を形成するために、私たちの各組織が役割を果たさなければなりません。」。
ビジネスの繁栄は自然の繁栄に依存しています。個々のセクターは、そのバリューチェーン全体で自然に深く依存している一方、意思決定においてその真の影響が考慮されない場合、自然喪失につながる要因を悪化させます。
気候危機は、生物多様性の損失と生態系の崩壊を悪化させています。気温の上昇、降水パターンの変化、異常気象は、生態系のレジリエンスに大きな損害を与えています。自然を保護・回復し、気候変動と闘い、公平な未来を創造するための具体的かつ統合的な行動は、もはや待ったなしです。自然ベースの解決策は、世界の気温上昇を2℃未満に抑えるために2030年までに必要な排出削減量の最大37%に貢献することができるのです。
企業はすでに、自然喪失を逆転させ、すべての人にとって自然がポジティブで、ネット・ゼロかつ公平な未来に貢献するための信頼できる行動を始めることができ、またそうすべきです。この新しいセクター別ガイダンスの発表は、企業がネイチャー・ポジティブな旅を開始または前進させるための一貫したアプローチを提供するものです。
12のセクター:建築・インフラ、化学、建設資材-セメント・コンクリート、エネルギー・システム、ファッション・アパレル、金融、食品(農産物、食肉・家禽・乳製品を含む)、林産物、家庭用品・パーソナル用品、観光、廃棄物管理、水事業・サービス
持続可能な開発インパクト会合について
持続可能な開発インパクト会合が、9月18日(月)から22日(金)までニューヨークで開催されます。同会合では、国連の持続可能な開発目標に関する進捗状況を振り返り、マルチステークホルダーによる行動を活性化させます。600人以上のビジネスリーダー、政策立案者、国際機関や市民社会のリーダー、イノベーター、社会起業家がSDGsの具体的な進展を図るために一堂に会します。
<ご参考>
持続可能な開発インパクト会合2023について
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フォーラム ストラテジック・インテリジェンスとトランスフォーメンション・マップ
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