世界経済フォーラム コミュニケーションズ・リード 栃林直子
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2023年9月15日、スイス、ジュネーブ - 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた議論を行う国連ハイレベル・ウィークのため、世界の指導者たちがニューヨークへ向かう中、世界経済フォーラムは新たな報告書を発表。同報告書は、途上国が直面する課題を浮き彫りにしています。調査の対象となったエコノミストの10人に6人が、開発と気候変動対策のトレードオフの深まりを警告しています。また、最新の『チーフエコノミスト・アウトルック』によると、チーフエコノミストの60%以上が、不透明な国内外の政治や不安定な金融市場の中で、来年は世界経済が弱含みになると予想。また、最近の世界的なインフレ高進は緩和されると予想するエコノミストが86%と大多数を占めたものの、金融引き締めの長期化は、企業融資の抑制、企業債務不履行の増加、不動産・株式市場の潜在的な調整など、永続的な影響をもたらすと予想されています。
開発途上国は、こうした世界的な逆風の影響を最も強く受けており、チーフエコノミストは、地政学的緊張(74%)や金融引き締め(59%)によって、世界の開発目標に向けた進展が損なわれる可能性があると警告。特に、食料安全保障、気候変動対策、生物多様性保護など、SDGsの多くの分野で進捗が遅れていることが懸念されています。現在のペースでは、2030年にも5億人以上が極度の貧困状態に置かれることになります。
一部のチーフエコノミストは、今後3年間で先進国と途上国間の協力(41%)と民間資本の流れ(30%)が増加すると予想しています。一方、民間資本の流れを開放することができれば、エコノミストたちは、デジタル・トランスフォーメーション(97%)、エネルギー・アクセスとアフォーダビリティ(76%)、食料システムと栄養(67%)、気候変動、生物多様性の損失と汚染(67%)といった特定の開発分野への潜在的なプラスの影響について、特に楽観的であるとしています。
世界経済フォーラムの取締役であるサーディア・ザヒディは、次のように述べています。
「最新のチーフエコノミスト・アウトルックは、世界経済の低迷が続いていることを指摘しています。また、途上国が直面している緊急の課題とトレードオフ、成長、気候変動対策、人間開発を両立させるためのイノベーション、国境を越えた投資、技術移転の必要性を強調しています」。
地域別見通し
2023-2024年の経済展望は、地域によっても異なります。チーフエコノミストはアジアの成長を最も楽観視している一方、デフレ圧力の兆候と中国の不動産市場の脆弱性を受けて、2023年5月の調査以来、中国の見通しは悪化しています。また、インドを中心とする南アジアでは、90%以上が今年の成長を「中程度」または「力強い」と予想しており、「力強い」と予想する回答者の割合は36%から52%へと、前回調査から明らかに増加しています。
中東・北アフリカでは、少なくとも中程度の成長を期待する回答者の割合が顕著に増加しており(79%、前回調査の64%から増加)、2024年についても同様の見通し。また、ラテンアメリカとカリブ海諸国およびサハラ以南のアフリカは、世界的にみて依然として見通しが弱く、回答者は2023年に弱い成長と強い成長をほぼ等しく予想し、両地域とも2024年には若干改善すると予想しています。
米国では、5月以降見通しが強まり、回答者の10人に8人が2023年と2024年の両方で中程度または強い成長を予想しています。欧州では、77%が今年の成長は弱いか非常に弱いと予想している一方、2024年については楽観的な見方が強まっており、中程度か強い成長への期待は23%から60%に急増しています。
『チーフエコノミスト・アウトルック』レポートについて
『チーフエコノミスト・アウトルック』は、世界経済フォーラムのニューエコノミーと社会部門が主催する、官民の主要なチーフエコノミストとの協議や調査に加え、最新の政策開発調査に基づいています。今日の経済環境の新たな輪郭を要約し、世界経済への複合的なショックに対応し、政策立案者やビジネスリーダーがさらなる行動を起こすための優先事項を明らかにすることを目的としています。なお、本調査は2023年8月に実施されたものです。
持続可能な開発インパクト会合について
持続可能な開発インパクト会合が、9月18日(月)から22日(金)までニューヨークで開催されます。同会合では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する進捗状況を振り返り、マルチステークホルダーによる行動を活性化させます。600人以上のビジネスリーダー、政策立案者、国際機関や市民社会のリーダー、イノベーター、社会起業家がSDGsの具体的な進展を進めるために一堂に会します。
<ご参考>
持続可能な開発インパクト会合2023について
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