世界経済フォーラム、パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子 +81 3 3560 6093 naoko.tochibayashi@weforum.org
2023年6月26日、中華人民共和国、天津 - 世界経済フォーラムは、世界にポジティブな影響を与えることが予測される画期的な技術を毎年発表しています。その中には、フレキシブル・バッテリー、生成AI、持続可能な航空燃料などが含まれます。
フロンティアーズと共同で作成した「2023年 新興テクノロジー・レポート トップ10」で選ばれたテクノロジーは、専門家が複数の基準に照らして選定。社会や経済に大きな利益をもたらすと期待されることに加え、ディスラプティブ(創造的破壊)かつ、投資家や研究者にとって魅力的で、5年以内に一定の規模となることが予想されることも基準となっています。
世界経済フォーラムの取締役であり、第4次産業革命センターの責任者であるジェレミー・ジュルゲンスは、次のように述べています。「新しいテクノロジーは、責任を持って設計、拡張、導入されれば、産業のディスラプションを可能にし、経済を成長や生活を向上の実現につながります。また、地球を守る力を持っているのです。今年のレポートが、ビジネスリーダーや政策立案者にとって、新興テクノロジーの変革の可能性を引き出し、その包括的な導入を形作るための強力なツールとなることを期待しています」。
2011年の初版以来、本レポートは、これまで知られていなかった技術が後に世界的な影響力を持つようになった技術にスポットライトを当ててきました。これには、2016年のレポートで取り上げられ、後にほとんどの新型コロナウイルスのワクチンを支える技術となったゲノムワクチンや、AIが発見した最初の医薬品が臨床試験に入る2年前の2018年のリストで取り上げられたAI主導の分子設計などが含まれます。
11年目を迎えた同レポートは、過去10回のレガシーに基づき、各技術が人々、地球、繁栄、産業、公平性にどのような影響を与えるかについて、各技術の専門家グループからの調査回答に基づいて定性的に評価しています。また、2023年版の新機能として、世界経済フォーラムのストラテジック・インテリジェンス・プラットフォームにトランスフォーメーション・マップが追加されました。同マップでは、各テクノロジーがグローバルなアジェンダの他のトピックとどのように関連しているかを紹介。さらに信頼できる最新の出版物を示し、各テクノロジーに関するより深い洞察とコンテキストを提供します。
フロンティアーズの共同設立者兼CEOであるカミラ・マークラムは、次のように述べています。「私たちは今、社会の重要な岐路に立っています。この包括的なレポートは、画期的な科学的ブレークスルーにスポットライトを当て、これらの進歩を理解し、効果的に活用するために必要な本質的な洞察をリーダーに備えることで、知識への門戸を開くといった重要な役割を果たします」。
2023年の新興テクノロジー・トップ10は以下の通り。
1. フレキシブル・バッテリー
ねじったり、曲げたり、伸ばしたりできる軽量素材でできた薄型のフレキシブル・バッテリーが市場に出回るようになれば、標準的な硬質バッテリーは間もなく過去のものになるかもしれません。2027年までに2億4,000万ドルの市場価値が見込まれるこの新世代のバッテリー技術は、医療用ウェアラブル、バイオメディカルセンサー、フレキシブルディスプレイ、スマートウォッチなどに応用されます。
2. 生成AI
生成AIとは、大規模なデータセットから学習することで新しいオリジナルコンテンツを生成することができる新しいタイプのAIで、2022年末にChatGPTが公開されたことで、一般に広く知られるようになりました。急速に進化する生成AIは、教育、研究、そしてそれ以外の分野にも応用され、複数の業界を創造的に破壊(ディスラプション)することになるでしょう。
3. 持続可能な航空燃料
世界の年間CO2排出量の2%~3%が航空機によるものです。長距離の電気便が就航する兆しもないことから、生物学的(バイオマスなど)および非生物学的(CO2など)資源から生産される持続可能な航空燃料は、短期・中期的に航空産業を脱炭素化するための答えとなり得ます。
4. デザイナー・ファージ
ファージは特定の種類の細菌に選択的に感染するウイルス。一層洗練された遺伝子工学ツールを手に入れた科学者たちは、ファージを再プログラムして細菌に感染させることができるようになり、植物、動物、ヒトのマイクロバイオームなど、共存する複雑な細菌群集の中の1種類の細菌を標的にすることができるようになりました。近い将来、この「デザイナー」ファージの多くは、研究に応用される一方、いずれは微生物に関連した病気の治療や、食品供給チェーンにおける危険な細菌の除去に使われる可能性もあります。
5. メンタルヘルスのためのメタバース
増大するメンタルヘルスの危機に対応して、製品開発者はメンタルヘルスを改善するための共有仮想空間を構築し始めています。ビデオゲームはすでにうつ病や不安症の治療に使われており、VR対応のメディテーション(瞑想)も増えています。タッチを感じたり、ユーザーの感情状態に反応したりすることができる次世代のウェアラブルと組み合わせることで、未来のメタバースはメンタルヘルスを改善するための時はすでに熟しているのかもしれません。
6. ウェアラブル植物センサー
ドローンと衛星は、従来は手作業による土壌検査と目視観察に頼っていた大規模農場のモニタリングに大きな変化をもたらしました。温度、湿度、水分、栄養レベルを継続的にモニタリングするために、個々の植物に「装着」できる小型で非侵襲的なデバイスです。スケーリング・コストを克服できれば、ウェアラブル植物センサーは植物の健康を改善し、収穫量を増やすことができるでしょう。
7. 空間オミックス
高度なイメージング技術とDNAシーケンスの特異性を組み合わせることで、空間オミックスは、科学者が細胞内の分子レベルで生物学的プロセスを「見る」ことを可能にします。これまで観察できなかった生物学的構造や事象を明らかにすることで、この強力な新技術は生物学の理解を加速し、研究者が複雑な疾患に対する新たな治療法を開発するのに役立つと考えられます。
8. フレキシブル・ニューラル・エレクトロニクス
ブレイン・マシン・インターフェース[EY2] は、脳と外部コンピュータとの直接通信を可能にすします。てんかん、うつ病、麻痺の治療など、医療や神経科学において、私たちの人生を一変させるような応用が期待されています。これまでこの技術はリジッド・エレクトロニクスをベースにしており、脳組織との機械的・幾何学的な不一致によって制限されてきました。しかし、柔軟な電子機器や生体適合性の高い素材が進歩すれば、患者にとって侵襲的で不快な体験が減ることになります。この技術の市場規模は17億4000万ドルで、10年後までには61億8000万ドルに成長すると予想されています。
9. サステナブル・コンピューティング
データセンターは、世界で生産される電力の約1%を消費しています。ネット・ゼロ・エネルギーのデータセンターという夢を実現可能にするために、複数のテクノロジーが分野横断しています。サステナブル・コンピューティング技術として区分されるこれらの技術には、液体冷却システム、AI分析、メタンフレアのような既存のエネルギー源と併設可能なモジュラー型データセンターなどが含まれます。
10. AIによるヘルスケア
診断から薬剤設計まで、AIはより良いヘルスケアを実現するものとして広く報告されています。本レポートで取り上げたアプリケーションは、さらに一歩進んで、パンデミックの発生をモニタリングすることから、資源配分を最適化することで病院の待ち時間を短縮することまで、医療システム全体をサポートするAIの役割に焦点を当てています。
「第14回 世界経済フォーラム ニューチャンピオン年次総会2023」について
「アントレプレナーシップ(起業家精神)~グローバル経済の原動力~」をテーマに、6月27日(火)~29日(木)、中国の天津で開催。同会合では、グローバルな変革の課題に取り組み、イノベーションと起業家精神の勢いの加速を目指します。
<ご参考>
第14回 ニューチャンピオン年次総会についてはこちら。
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