世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子Tel.: +81-(0)3-3560-6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org
2021年11月4日、英国、グラスゴー - 2050年の気候目標を達成するために必要な排出削減量の約半分を支える技術は、未だ開発初期、実証、試作段階です。これらの技術を市場に投入し、コスト競争力を高めるためには、この10年間でイノベーションを加速させることが不可欠です。
この取り組みのスタートダッシュとして、世界経済フォーラムは、ジョン・ケリー気候問題担当大統領特使と共同で、「ファースト・ムーバーズ・コアリション」の発足を発表しました。これは、低炭素技術に対する新たな市場需要を創出するために、企業が購入を約束する新しいプラットホームです。
購入をコミットする企業を集めることで、脱炭素技術を商業化するのに十分な大きさの動きとなることを目指しています。ファースト・ムーバーズ・コアリションは、これらの技術的ソリューションへの投資を通じてこの10年間でいくつかのマイルストーンを達成することにより、長期的なインパクトを生み出します。
このコアリションは、8つの主要なセクターにおける取り組みです。このうち、鉄鋼、セメント、アルミニウム、化学品、海運、航空、トラック輸送の7セクターは、世界の二酸化炭素排出量の3分の1以上を占めていますが、これらの部門で活用できる、化石燃料に代わるコスト競争力のあるクリーン・エネルギーはまだ登場していません。8つ目の「ダイレクトエアキャプチャー(直接空気回収)」は、大気中の二酸化炭素を削減し、排出量ネットゼロの世界的な実現に貢献しますが、商業的に実現するにはさらなる技術革新が必要です。
「ファースト・ムーバーズ・コアリション」は、さまざまな企業が購入をコミットし、行動を起こし、クリーンで収益性の高い未来のサプライチェーンを構築する機会を提供します。また、さまざまな市民社会やエキスパートの団体が力を合わせ、モメンタムを加速させ、また現在進行中の取り組みを補完し、イニシアチブの設計へのアドバイスなどの場ともなっています。
世界経済フォーラムの総裁であるボルゲ・ブレンデは、次のように述べています:「技術によって、排出量を削減し、より強力で包括的な未来の経済を構築することが可能となっています。イノベーターや投資家が気候危機に対する取り組みの一翼を担うためには、明確な市場需要が必要です。『ファースト・ムーバーズ・コアリション』は、大手企業の購買力を活用し、これらの技術のニーズを促進します。ビジネスリーダーたちには、私たちと力を合わせ、気候目標を達成するためのロールモデルとなっていただきたいと思っています」。
また、米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使は次のように述べています:
「『ファースト・ムーバーズ・コーリション』は、2050年までにネット・ゼロを達成するために必要な重要技術の早期市場創出に向け、世界の主要グローバル企業が購入をコミットするためのプラットフォームです。この重要な10年間で、私たちは、風力タービンや太陽電池パネル、蓄電池などの既存のクリーンエネルギー技術をできるだけ早く導入するだけでなく、長期的な脱炭素化の目標に向けてイノベーションを推進する必要があります」。
フェーズ1で表明されたコミットメント
これらのコミットメントは新しい技術を対象としており、2050年の脱炭素化達成に向け強化していけるような市場を2030年までに創出することを目標としています。発足メンバーは、以下の部門のうち少なくとも1つ以上で公約を表明しています。
航空:メンバーは、2030年までに、大幅に排出量を削減した持続可能な航空燃料(SAF)、電気、水素の推進力などの新興技術を航空旅行に使用することをコミットメントとしています。
航空会社および航空輸送会社は、2030年までに、従来のジェット燃料需要の少なくとも5%を、従来のジェット燃料と比較してライフサイクルでのGHG排出量を85%以上削減したSAFに置き換える、またはゼロカーボン排出を促進する技術を活用するという目標を掲げています。
航空券の購入者および航空貨物便の利用者は、航空輸送事業者と協力して、2030年までに航空輸送における従来のジェット燃料需要の少なくとも5%を、従来のジェット燃料と比較してライフサイクルでのGHG排出量を85%以上削減したSAF、および/または、ゼロカーボン排出を促進する技術に置き換えるという目標を設定しています。
海運:メンバーは、2030年までにゼロエミッションの新造船および改造船をゼロエミッション燃料により運航することをコミットメントとしています。海運会社は、ゼロエミッション燃料の使用が可能な船により、2030年までに深海輸送の少なくとも5%をゼロエミッション燃料で賄うという目標を設定しています。貨物の所有者は、2030年までに国際貨物の10%以上を、そして2040年には100%をゼロエミッション燃料を使用した船舶で輸送するという目標を掲げています。
トラック輸送:メンバーは、2030年までにゼロエミッションの中型・大型車を購入または契約することをコミットメントとしています。これらには、バッテリーや燃料電池を搭載した電気自動車のほか、再生可能な電力源や充電用水素の活用も含まれます。さらにトラック所有者は、2030年までに購入する大型トラックの少なくとも30%、中型トラックの100%をゼロエミッショントラックにするという目標を設定しています。小売店やメーカーは、2030年までにすべてのトラック運送事業者にトラック所有者や運転手の公約を果たすことを要求するという目標を掲げています。
鉄鋼:メンバーは、2030年までに、ゼロに近い排出量の鉄鋼を購入することをコミットメントとしています。残留排出量を最小限に抑えたネットゼロの鉄鋼部門を実現するためには、画期的な製鉄・製鋼技術の導入が必要です。これらの技術には、水素の直接還元、カーボンキャプチャー(二酸化炭素回収)・利用・貯蔵、電気分解による製造プロセスなどがあります。鉄鋼の購入者は、2030年までに年間の鉄鋼調達量の少なくとも10%が、ファースト・ムーバーズ・コアリションが定義する「ニア・ゼロ・エミッションである鉄鋼」であること、あるいはそれを上回ることを目標としています。
その他の部門のコミットメントは、2022年初めに表明予定です。
発足メンバー
A.P. Møller – Mærsk
Aker ASA
Agility
Airbus
Amazon
Apple
Bain & Company
Bank of America
Boston Consulting Group
Boeing
Cemex
Dalmia Cement (Bharat) Limited
Delta Air Lines
Deutsche Post DHL Group
ENGIE
Fortescue Metals Group
Holcim
Invenergy
Johnson Controls
Mahindra Group
Nokia
Ørsted
Scania
SSAB Swedish Steel
Trafigura Group
Trane Technologies
United Airlines
Vattenfall
Volvo Group
Yara International
Western Digital
ZF Friedrichshafen AG
「ファースト・ムーバーズ・コアリション」のコミットメントは、デザイン委員会とエキスパートメンバーである、ブレイクスルー・エネルギー主要実施メンバー(Primary Implementation Member Breakthrough Energy)とボストン・コンサルティング・グループの支援を受けて策定されました。
<参考>
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