持続可能な航空燃料の割合を2030年までに10%に増加、「クリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー」のリーダーたちが発表

発行済み
2021年09月23日
2021
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: +81-(0)3-3560-6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 世界の航空業界で使用される燃料のうち、持続可能な航空燃料の供給・使用の割合を2030年までに10%に増加させるというコミットメントを、60社が表明しました。
  • カーボンフリー・エネルギーが間近とされるセクターもありますが、航空分野では二酸化炭素排出量削減の進展が遅れています。
  • 声明文に署名した企業はグローバルな航空会社グループ、空港、燃料供給会社やその他の業界関係者で、このコミットメントはネットゼロの達成に向けて極めて重要です。
  • 声明文2030 Ambition Statement持続可能な開発インパクト・サミットについてはリンクをご参照ください。

2021921日、スイス、ジュネーブ持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進を目指す世界経済フォーラムのクリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー・コアリション(Clean Skies for Tomorrow Coalition)に参画している企業60社は、世界の航空業界で使用される燃料におけるSAFの割合を2030年までに10%に増加させると約束しました。これは2050年までに排出量をゼロにするための重要な節目となります。

航空業界は、現在でもGHG排出量削減に関して「削減が困難」なセクターであり、旅行が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前のレベルまで回復し始めた今、業界による強力な気候変動対策は特に重要です。SAF技術の供給と利用を加速させ、世界のジェット機用燃料供給におけるSAFの割合を2030年までに10%に増加させることは、航空業界が排出量ネットゼロを達成する上で意義のある行動となります。

これは、産業のリーダーたちが一丸となって取り組まなければ実現不可能です。2030 Ambition Statementに署名した組織は以下の通り。

1. Accenture
2. ACME
3. Airbus
4. Airports Council International
5. American Airlines
6. ANA Holdings Inc
7. Bangalore International Airport Limited (BIAL)
8. Bank of America
9. Biodiesel Association of India (BDAI)
10. Boeing
11. Boston Consulting Group
12. BP
13. British Airways
14. Caphenia
15. Carbon Engineering Ltd.
16. Cathay Pacific Airways
17. Council on Energy, Environment and Water (CEEW)
18. Deloitte
19. Delta Air Lines
20. Deutsche Post DHL
21. Dubai Airports
22. Enerkem
23. ENI
24. Fraport
25. Fulcrum BioEnergy
26. Heathrow Airport
27. Honeywell
28. Iberia
29. Indian Institute of Petroleum
30. International Airlines Group
31. Japan Airlines
32. KLM Royal Dutch Airlines
33. Kuehne+Nagel
34. LanzaJet
35. LanzaTech
36. McKinsey & Company
37. Neste
38. Norsk e-Fuel AS
39. Novo Nordisk AS
40. oneworld alliance
41. Ørsted
42. Praj Industries Limited
43. Punjab Renewable Energy Systems Pvt Ltd
44. PwC
45. Qatar Airways Group
46. Rolls-Royce
47. Royal Schiphol Group
48. San Francisco International Airport
49. Shell
50. SkyNRG
51. SpiceJet
52. Suncor
53. Sunfire
54. Sydney Airport
55. The Energy and Resources Institute (TERI)
56. TotalEnergies
57. United Airlines
58. Velocys
59. Virgin Atlantic
60. Visa.Inc

同声明に署名した企業には、世界各地の航空会社、空港、燃料供給会社、その他航空業界の革新的な企業・組織が含まれています。また会社として事業運営上、飛行機での旅行を必要とする、航空会社以外の企業も含まれており、航空産業を脱炭素化については航空機を利用するすべての人々が担う必要があることが示されています。

世界経済フォーラムの航空・トラベル・観光部門の責任者であるローレン・アッピンク・カルダーウッドは次のように述べています。「私たちの大望を達成するには、幅広いステークホルダーのコミットメントとイノベーション、そして産業間の協力が必要です。各国政府や国際機関などに対しては、変革を促進しながら公平な競争条件を整えるような新たな政策、対象を絞った投資や規制を通じて、私たちと協力して重要な対策を講じるよう呼びかけています」。

この声明は、国連の気候行動ハイレベルチャンピオンの「航空業界における飛躍的な成果2030(2030 Breakthrough Outcome for aviation)」を全面的に支持するもので、2030年までに排出量を半減させ、パリ協定の公約を実現するために不可欠なセクター別の短期目標30以上のうちの1つとなっています。

航空業界のネットゼロを達成する

SAFは既存の航空機でも問題なく使用でき、2030年、そしてそれ以降への移行において航空業界で実行可能なソリューションです。クリーン・スカイズ・フォー・トゥモローのメンバーは、持続可能な低炭素航空燃料(バイオ燃料と合成燃料)を商業規模で生産して広く航空業界で普及させることを支持しています。

航空エコシステムの関係者は、まず航空業界による排出量を可能な限り削減する必要があるという点で意見が一致しています。路線最適化、航空機設計によるエネルギー効率向上、地上オペレーション改善などの取り組みによって削減は達成することができます。空港などのステークホルダーは、SAF運用計画の策定や共同出資仕組みの設置といった形で、SAF導入・普及においてこれまで以上に重要な役割を果たすことができます。

SAFは都市ごみ、農業残渣、廃棄される脂質といった持続可能で再生可能な原料による合成、またはパワー・トゥ・リキッド(電力を用いて液体燃料を製造)で作られ、すでに25万回以上の商業飛行に使用されています。

化石燃料であるジェット燃料との価格差が非常に大きいことから、SAFの生産規模拡大には困難が伴い、結果として需給において「鶏と卵」の問題が生じています。生産規模が拡大すればコストは下がりますが、SAFの需要が少ないことによる値上げ圧力や、政策や投資の不確実性に伴うリスクの高さによって、燃料供給会社は逆風に直面しています。投資家の信頼を得るためには需要が十分にあること、そして政策の確実性を示すことが重要であり、だからこそ航空エネルギーのバリューチェーンにおけるトップ企業が今回参加を表明したことは大きな意味があるのです。

持続可能な航空燃料証明書(SAFc)システム

このような共同の取り組みを可能にするため、クリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー・コアリションは「持続可能な航空燃料証明書(SAFc)システム」を開発しました。これは、コスト増加分を負担することで、乗客や貨物便の利用者がSAFによる排出削減量を自分のものと主張できるようにする新しい会計ツールです。

また、提案されているシステムは、生産工場に最も近い空港にSAFの在庫を配送する形で燃料サプライチェーンの流通を管理します。既存の技術とSAFcのようなデジタルデマンドプラットフォームの双方を利用することで、持続可能な航空のベストプラクティスではライフサイクルベースでGHG排出量を最大80%削減することができます。

長期的なネットゼロを航空業界で達成するには、SAFを燃料とする飛行機の旅行に対する需要を奨励することが重要です。メンバーは、燃料供給におけるSAFの割合を2030年までに10%まで増加させるという野心的な公約を掲げて、カーボンニュートラルな空の旅への需要を集約したいと考えています。中には、共同投資手段、業界支援の提案、社用の乗客や運輸企業の顧客を対象とした創造的なバリューチェーン刺激プログラムといったメカニズムを提唱しているところもあります。

消費者の需要による持続可能な航空の実現に向けた世界経済フォーラムの取り組みについては、リンクをご参照ください。

この公約を実現するために、クリーン・スカイズ・フォー・トゥモローのコアリションは、ミッション・ポッシブル・パートナーシップ(Mission Possible Partnership)の一環として包括的な航空移行戦略を策定しており、この戦略の全容は今年後半に発表される予定です。

参画企業のリーダーたちによるコメント

「持続可能な航空燃料(SAF)の開発と商業展開を進めることは、航空業界の脱炭素化に不可欠です。当社はSAFの開発に多額の投資を行っており、英国のベロシーズ社や米国のランザテック社と提携して、早ければ来年にも持続可能な燃料を使用したフライトが実現するでしょう」とブリティッシュ・エアウェイズの会長兼CEOであるショーン・ドイル氏は述べています。「今月初め、ブリティッシュ・エアウェイズはbp社と協力して、COP26期間中のロンドン、グラスゴー、エジンバラ間の全フライトに十分な量のSAFを調達することができ、COP26への送迎に伴う排出量を従来のジェット燃料に比べて最大80%削減することができました。私たちの業界に大きな変化をもたらすであろうSAFの開発と使用を拡大するためには、政府からの継続的な支援も不可欠です」。

「デルタ航空は、二酸化炭素排出による与えている影響に対処しつつ、持続可能な航空の未来を見据えています。それが、2020年3月にカーボンニュートラルを約束した理由であり、また、パリ協定に合わせて科学的根拠に基づく目標を設定することを約束した理由でもあります」とデルタ航空CEOのエド・バスティアン氏は述べています。「クリーン・スカイズ・フォー・トゥモローとのパートナーシップは、SAF技術の供給と使用を促進するコアリションを結集することで、持続可能な航空の未来を築くものです」と述べています。

「2030年までにSAFを10%にするという本日の発表は、地球と繁栄に対する我々のコミットメントを強調するものです。グローバルなアプローチでSAF産業を加速させることで、インドに経済成長と変革の機会をもたらします」。とスパイスジェットの会長兼CEOのアジャイ・シン氏は述べています。

「2030年までに世界の航空業界で10%の持続可能な航空燃料を使用することを約束する50社以上の企業と協力できることを誇りに思います。これは、2050年までに飛行機の利用を完全にゼロにすることを目指す重要なマイルストーンです」とヴァージンアトランティック航空のCEO、シャイ・ワイス氏は述べています。「2011年のランザテック社との持続可能な航空燃料に関する提携から、ジェット・ゼロ・カウンシルの設立メンバーになるまで、ヴァージンアトランティック航空は15年以上にわたってサステナビリティをリードしてきました。クリーン・スカイズ・フォー・トゥモローとのパートナーシップは、持続可能な航空への世界的な移行を加速するための新たな一歩となります」。

2022年の年次総会に先立ち、2021年9月20日(月)~23日(木)、国連総会と並行して、世界経済フォーラムは、持続可能な開発インパクト・サミットをオンラインにて開催しています。同サミットのテーマは「Shaping an Equitable, Inclusive and Sustainable Recovery(公平で包摂的かつ持続可能なリカバリーをめざして)」。政府、ビジネス、市民社会のリーダーが参加し、より持続可能で包摂的な未来に向けて行動を起こし、機運を高めることをめざします。

世界経済フォーラムは、世界官民両セクターの協力を通じて世界の現状の改善に取り組むことを目的とする国際機関です。1971年に設立された同フォーラムは、政府、ビジネス界、学術界および市民社会の第一線で活躍するトップリーダーと連携し、世界をより良くすることを目的に様々な活動を行っています。(www.weforum.org)


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