世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
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2021年9月21日、米国、ニューヨーク - 世界経済フォーラムは、ステークホルダー資本主義メトリクスのイニシアチブを支持する企業提携が拡大し続けていると発表しました。2020-2021年1月以降にこのイニシアチブへの支持を表明した企業は100社以上に上り、2020-2021年の報告資料に資本主義メトリクスを導入した企業は50社となっています。
既存の基準をベースにしたステークホルダー資本主義メトリクスは、業種や地域を超えて企業間で比較可能なメトリクスを作成します。
このメトリクスはさらなる比較可能性を提供するものです。サステナビリティ実績報告書において、構造的で世界的に認められた共通基準を作成するという取り組みが進行中ですが、このメトリクスはそれに情報提供するという意味で特に重要なものです。
世界経済フォーラム取締役であるオリビエ・シュワブは、「多くの企業がこの取り組みに参加し、さらに多くの企業が報告書にステークホルダー資本主義メトリクスを導入されている事を歓迎します。ESG要素について、様々な業種のグローバル企業によってこれほど広範なデータが公開されたのは初めてのこと。比較可能で一貫したESG報告によって、ESGコミットメントの総合的な貢献をステークホルダーに明確に提示できるということを、ステークホルダー資本主義メトリクスは示しています」と述べています。
世界経済フォーラムは、国際財務報告基準(IFRS)財団のTechnical Readiness Working Groupに参加しており、COP26で発表されるIFRS財団のガバナンス体制の下で、国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)を立ち上げるための技術的提案を行っています。ステークホルダー資本主義のメトリクスは、この作業の重要なインプットであり、グローバルなサステナビリティ関連の開示基準が確立されるまでの間、企業にとって重要な準備ツールとなります。
ステークホルダー資本主義メトリクスを主要報告書に導入済みである50の報告書の初期分析では、重要なESG分野における個々の企業の進捗状況、そしてステークホルダー資本主義メトリクスの報告実施を明言している企業の総合的な影響力が、首尾一貫した形で測定しやすくなったということが分かりました。こうして、最初の報告書の初期分析では、民間企業全体の累積影響力が示されました。
企業による社会貢献の規模については、プラスの方向性が見えます。報告を実施している50社以上の最初の報告書を分析した結果、1.5兆ドル以上をトレーニングに投資するなど、企業がどのようにして将来に向けたスキルを構築しているかが明らかになりました。また、企業は研究開発に20兆ドル以上、複数年にわたるイノベーションに累積で23兆ドル投資し、製品やサービスの向上に向けた刷新を続けています。最後に、企業は140兆ドル近い税金を支払うことで、地域社会や社会の活性化に貢献しています。
信頼と透明性の構築
今日の企業は、気候変動への影響を最小化しながら持続可能な繁栄を実現し、多様な労働力を確保するなど、さまざまな成果を収めることが求められています。すべての業種の企業は、ステークホルダー資本主義メトリクスを用いてESG要素に関わる自社の影響を効果的に測定、管理、開示することができるようになります。
さらに企業によっては、報告はコミュニケーション力としての利点もあるとしています。企業の業績と進歩は組織内の変革を促し、将来的なコスト削減と長期的な効率化に向けた先行投資を確保し、透明性を高めてステークホルダーとの信頼関係を築くことができます。
ステークホルダー資本主義メトリクスの報告において企業が直面した課題には、データへのアクセス性や管轄権にかかわる問題、データ処理能力などがありました。このような課題があってもESG報告書やステークホルダー資本主義メトリクスのイニシアチブに対する企業の支持は拡大しており、世界経済フォーラムはこれからも、このイニシアチブに参加するようすべてのパートナー企業に呼びかけていきます。
2021年1月以降にステークホルダー資本主義メトリクスへ参加表明した企業には以下が含まれます。
新たに参加表明した企業は、他のコアリションと同様、以下コミットします。
1. 投資家およびその他のステークホルダーへの報告書(年次報告書、サステナビリティ報告書、委任状などの資料)において、自社事業に最も関連性の高いメトリクスを報告するか、または別のアプローチがより適切である場合はその理由を簡潔に説明することにより、中核指標を報告書に反映させる。
2. この作業に対する支持を公言し、ビジネスパートナーに対しても同様に行動するよう促す。
3. 共通ESGメトリクスに基づいた非財務情報報告の構築に向けて国際的に容認されるソリューションへの進展を支援するため、既存のESG基準、フレームワーク、原則のさらなる収束を促進する。
メトリクスはまた、ビジネス界がこれからも既存の基準間の協力と調整を活性化すること、そしてサステナビリティ実績報告書に向けた、構造的で国際的に認められた共通基準の作成に向けた進展を促進することを表明するものです。
ステークホルダー資本主義イニシアチブの測定について
インターナショナル・ビジネス・カウンシル(IBC)の要請を受け、2019年8月に世界経済フォーラムはデロイト、EY、KPMG、PwC(プライスウォーターハウスクーパーズ)と共同で、普遍的な一連のメトリクスと開示事項である、ステークホルダー資本主義メトリクスを特定するプロジェクトを実施しました。これらのメトリクスは既存の基準から意図的に抽出され、4つの原則のテーマである「ガバナンス」「地球」「人」「繁栄」に焦点を当てたものです。
200社以上の企業や投資家、利害関係者との半年間にわたる協議プロセスを経て、同プロジェクトは21の中核指標と34の拡大指標と開示事項の改良版を報告書「ステークホルダー資本主義の進捗の測定~持続可能な価値創造のための共通指標と一貫した報告を目指して~」にて、2020年9月に発表しました。
ステークホルダー資本主義メトリクスのイニシアチブがその後目指すのは、企業がESG指標に関するパフォーマンスを測定・実証する方法を改善し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて積極的な貢献を行うことです。また、このプロジェクトの目的は、主な民間のESG基準設定機関の収束を促進することと、ESG開示事項の報告において比較可能性と一貫性を向上させることの2点です。
また、世界経済フォーラムは、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を支援するIFRS財団のワーキンググループの一員として、公正で効果的な報告フレームワークの実現に向け、国際的な調整を支援しています。世界経済フォーラムは、基準設定プロセスへの情報提供に向けてステークホルダーを招集し、フィードバックや意見を集めるためのプラットフォームを提供します。
2022年の年次総会に先立ち、2021年9月20日(月)~23日(木)、国連総会と並行して、世界経済フォーラムは、持続可能な開発インパクト・サミットをオンラインにて開催しています。同サミットのテーマは「Shaping an Equitable, Inclusive and Sustainable Recovery(公平で包摂的かつ持続可能なリカバリーをめざして)」。政府、ビジネス、市民社会のリーダーが参加し、より持続可能で包摂的な未来に向けて行動を起こし、機運を高めることをめざします。
<参考>
持続可能な開発インパクト・サミット2021(サミットの概要/メディア登録)
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世界経済フォーラムは、世界官民両セクターの協力を通じて世界の現状の改善に取り組むことを目的とする国際機関です。1971年に設立された同フォーラムは、政府、ビジネス界、学術界および市民社会の第一線で活躍するトップリーダーと連携し、世界をより良くすることを目的に様々な活動を行っています。(www.weforum.org)