「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2021」 パンデミックによりさらに一世代分喪失。男女平等には135年を要する

発行済み
2021年03月30日
2021
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: +81-(0)3-3560-6093 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 男女間の格差をなくすためには、さらに36年の歳月を必要とするため、ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)が達成されるためには、次の世代まで待つ必要がある
  • 教育や医療へのアクセスの分野では平等に近づいたものの、女性は同じ機会を得られずにいるだけでなく、経済的なハードルや政治参加の低下、職場にとどまることの難しさに直面している
  • 世界で最も男女平等な国は、今年もアイスランド。フィンランド、ノルウェー、ニュージーランド、スウェーデンと続く
  • 報告書では介護分野への投資、平等な雇用慣行、スキルアップを重視した戦略や政策求めている
  • 日本はジェンダーギャップの66%を解消して、156カ国のうち120位
  • 報告書の全文、インフォグラフィック、その他の情報はこちら:wef.ch/gendergap21

2021年3月31日、スイス・ジュネーブ - 世界経済フォーラムが発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2021」によると、ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)が達成されるには、さらにもう一世代待たなければなりません。 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響が続く中、世界的なジェンダーギャップの解消にかかる時間は、99.5年から135.6年へと一世代分増えました。

いくつかの大規模な経済圏、産業部門において、男女共同参画の進展が停滞しています。これは、ロックダウンの影響を最も受けやすい部門で女性がより多く雇用されていることに加え、家事がさらに重圧となっていることが一因となっています。

今年で15年目を迎える本報告書は、「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」という4つの分野で、ジェンダーに基づく格差の進展をベンチマークしています。また、ジェンダー格差の要因を検証し、ジェンダーを含む復興に必要な政策と実践をまとめています。

今年の悪化は、人口の多いいくつかの国で「政治参画」におけるジェンダーギャップが拡大していることが一因となっています。指標となる156カ国のうち半数以上の国で改善が見られたにもかかわらず、女性の議席数は26.1%、閣僚数は22.6%にとどまっています。現在の状況では、政治的ジェンダーギャップの解消には「145.5年」かかると予想され、これは前回の報告書発表時の「95年」を50%上回ります。

「経済」におけるジェンダーギャップは、2020年版以降、改善はわずか。解消にはさらに267.6年かかると予想されています。遅々として進まないのは、スキルのあるプロフェッショナルに占める女性の割合が増加し続けている一方で、所得格差は依然として存在し、管理職に占める女性の数も少ないという相反する傾向によるものです。

このような結果は憂慮すべきものですが、「教育」と「医療へのアクセス」におけるジェンダーギャップは解消に向かっています。教育分野では、37カ国がすでに男女平等に達していますが、進捗が遅れているため、この格差を完全に解消するにはさらに14.2年かかると考えられます。また、保健分野では、このジェンダーギャップの95%以上が解消されており、昨年に比べてわずかに減少しています。

「パンデミックは、職場と家庭の両方で男女の平等に根本的な影響を与えています。これは、何年もかけて進められてきたことが後退してしまう事をも意味します。ダイナミックな将来を築くためには、『未来の仕事』、つまり新興のテクノロジー分野で女性が活躍することは極めて重要です。これまで以上に、リーダーシップを発揮し、確固たる目標を設定し、リソースを動員することが重要です。パンデミックからの復興への過程に、ジェンダー公正を組み込むべきなのです」と、世界経済フォーラムの取締役であるサーディア・ザヒディは述べています。

新型コロナ感染拡大が女性に与える影響

新型コロナのパンデミックはすべての労働者に影響を与えていますが、女性は男性よりも高い確率で職を失い(女性5%に対し男性3.9%、国際労働機関(ILO))、これは消費部門など、ロックダウンによって直接影響を受ける部門に女性が偏っていることが一因です。また、米国のデータによると、最も影響を受けた女性は、歴史的に不利な立場に置かれてきた人種や民族の出身者であることが多い事もわかっています。

イプソスの調査データによると、介護事業所が閉鎖されると、家事や育児、高齢者介護などの責任が女性に偏り、ストレスが増大し、生産性が低下することがわかっています。

また、リンクトインのデータによると、雇用市場の回復に伴い、女性の採用ペースは複数の業界で低下しており、リーダーシップを発揮する役職に就く可能性も低下。結果的に1~2年の進歩が逆転しています。

「未来の仕事」と女性

歴史的に女性の比率が低いセクターでは、「未来の仕事」の分野でも同じ事が起きています。例えば、クラウドコンピューティング分野では、女性の割合はわずか14%、エンジニアリング分野では20%、データ・AI分野では32%となっており、女性がこれらの新しい職務に就くことは男性よりも難しい状況です。本報告書では、「未来の仕事」におけるジェンダーギャップ解消に向けた進捗状況を把握できる新たな指標を提供しています。介護や教育の分野も今後の成長が期待できる分野であり、女性の比率は高いものの、その他の「未来の仕事」に比べて低賃金であることが多いのです。

「急成長している仕事の大半に女性が十分に登用されていないということは、パンデミックからの脱却に向かう中、さらに大きな男女比の課題を抱えることになります。急成長している仕事は、テクノロジーのあらゆる側面を形成し、それが世界でどのように展開されるかにおいて重要な役割を持ちます。特にデジタル化が加速している今、この基礎となる段階で女性の声や視点が反映されていなければなりません。 企業や政府は、復興のための計画に、多様性、公平性、インクルージョンを組み込む必要があります。そのためには、直接的な職務経験や公的資格だけではなく、候補者のスキルや可能性を評価することが重要です。経済や社会をより包括的なものにするには、スキルベースの採用が鍵となるのです」と、リンクトインのグローバル・パブリック・ポリシー責任者であるスー・デュークは述べています。

ジェンダー公正に基づく復興を築く

パンデミックによる自動化の加速、仕事と介護の「ダブルシフト」の増加、職業分離などの他の労働市場の力学との複合的な影響は、女性の将来の経済的機会に長期的な影響を与える可能性が高く、再就職の見通しが甘くなり、収入が継続的に減少するリスクがあります。

本報告書は、各国がジェンダーギャップの解消に向けて取り組むための方法を提示しています。具体的には、介護分野へのさらなる投資と、働く男女が介護休暇を公平に取得できるようにすること、性別による職業分離を克服することに積極的に焦点を当てた政策と実践、ジェンダーレンズを適用した効果的な中途採用のスキルアップ制度の構築、健全で偏りのない雇用と昇進を組み込んだ経営慣行などが挙げられます。

2021年の世界のジェンダーギャップ

アイスランドは、12回目にして再び世界で最も男女平等な国となりました。上位10か国は以下のとおり。

今年の総合指標で最も改善されたのは、リトアニア、セルビア、東ティモール、トーゴ、アラブ首長国連邦の5カ国で、少なくとも4.4ポイント以上、ジェンダーギャップが縮小しました。また、東ティモールとトーゴは、経済格差を17ポイント以上縮めることができました。今年は、新たに3つの国が初めて評価されました。アフガニスタン(156位)、ガイアナ(53位)、ニジェール(138位)です。

西欧は引き続き最も優秀な地域であり、今年はさらに改善され、全体のジェンダーギャップの77.6%が解消されました。このペースでいくと、ジェンダーギャップの解消には52.1年かかることになります。指数の上位10カ国のうち6カ国が西欧の国であり、今年の改善は、この地域の20カ国のうち17カ国が少なくともわずかにパフォーマンスを向上させたことによるものです。

今年、最も改善されたのは、カナダと米国を合わせた北米(76.4%)で、約3.5%の増加となりました。その結果、この地域でジェンダーギャップを解消するには61.5年かかることになります。今年の進展の大部分は、政治的なジェンダーギャップの改善に関連するもので、18.4%から33.4%に縮小しました。

ラテンアメリカ・カリブ地域(72.1%)は、25カ国中15カ国が総合スコアを向上させています。中でも、ベリーズ、エルサルバドル、スリナムは、1年間で2.3ポイント以上も男女間の格差を縮めたことが特徴的です。このペースでいくと、この地域が格差を縮めるには68.9年かかることになります。

東欧・中央アジア(71.2%)は、解消された割合だけでなく、その進捗状況においても西欧に遅れをとっており、ジェンダーギャップ解消までの推定期間は134.7年と、西欧(52.1年)の2倍以上となっています。この地域の平均値は、政治的なジェンダーギャップの解消についての国ごとの大きな格差を表しています。セルビア、リトアニア、アルバニア、ラトビアは少なくとも30%のギャップを解消していますが、ロシア連邦とアゼルバイジャンは10%以下しか解消していません。

東アジア・太平洋地域(68.9%)は、最も改善された3つの地域のひとつで、4つのサブインデックスのうち3つ(経済、教育、医療へのアクセス)でジェンダーギャップが縮小していますが、政治的なジェンダーギャップについては後退しています。現在の軌道では、格差の完全な解消にはあと165.1年かかり、世界平均よりも約30年長くなります。

サハラ以南のアフリカ諸国(67.2%)の進展は非常に遅く、ジェンダーギャップの解消には121.7年を要すると考えられます。この地域の半数以上の国(34カ国中20カ国)が過去1年間に男女平等に向けて前進しましたが、ナミビアとルワンダのみが80%以上のギャップを解消しました。

南アジアは2番目に低い指数で、全体のジェンダーギャップのうち62.3%が解消され、この1年で進歩が逆戻りしました。3.8ポイントの減少により、ジェンダーギャップの解消には195.4年かかると予想されています。人口が多く、スコアが低いインドのパフォーマンスは、地域全体のスコアに大きな影響を与えています。

中東・北アフリカ地域は、依然としてジェンダーギャップ(39.1%)が最も大きく、解消されていません。今年は若干の改善(+0.5%ポイント)が見られたものの、進捗は遅く、ジェンダーギャップの解消には142.4年かかる見込みです。これは、女性の労働力参加率が31%にとどまるなど、経済的なジェンダーギャップが大きいことが大きな要因です。

世界経済フォーラム、ジェンダーギャップへの取り組み

「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」は世界経済フォーラムのニューエコノミーとソサエティ・センターが発行するものです。同センターは、ジェンダーギャップに関する調査を補完するため、さまざまな取り組みを行っています。

クロージング・ザ・ジェンダー・ギャップ・アクセラレーターは、先進国や途上国と協力して、経済的平準化を迅速に進めるための官民協力体制を構築。女性の労働力参加率の向上、男女間の賃金格差の解消、より多くの女性がリーダーシップを発揮し、需要のあるスキルを身につけることに重点を置いています。

Hardwiring Gender Parity in Future of Work(未来の仕事における男女平等の実現)では男女平等を導入しようという意欲のある企業と協同しています。

ステークホルダーは、協力して複雑な問題への理解を深め、新しいモデルや基準を形成し、体系的な変化のためのスケーラブルで協力的な行動を推進しています。現在、世界の500以上の主要企業、国際機関、市民社会、学術団体、政府が、世界経済フォーラムのニューエコノミーとソサエティ・センターと共に、10億人の人々に経済的な機会を提供することを目指しています

<参考>
ジェンダーギャップ・レポート2021
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