世界経済フォーラム「自然とビジネスの未来」レポートを発表〜自然を優先する企業は、2030年までに3億9,500万人の新規雇用を創出〜

発行済み
2020年07月14日
2020
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: 03-5771-0067 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 「ネイチャーファースト(自然第一)」のアプローチは、ビジネスや経済のレジリエンス(回復力)を高めることが明らかになりました。
  • 発表されたレポートでは、「ネイチャー・ポジティブ」なソリューションは、10兆ドルのビジネスチャンスと、数百万人の新規雇用を創出します。
  • 新型コロナウイルス感染拡大が世界経済や社会に及した影響は、自然との不均衡をも明らかにしました。本レポートは、企業や政府がより良い環境を取り戻すため(ビルド・バック・ベター)の機会を明記しています。
  • 「ポリシー・コンパニオン(Policy companion)」では、各国の財務省が「ネイチャー・ポジティブ(nature-positive)」な経済を始動させる方法を掲載しています。
  • 報告書の全文はこちら。また特集ページはこちら

2020年7月15日、スイス、ジュネーブ – 新型コロナウイルス感染拡大のパンデミックにより、失業率は過去最悪を記録。経済不安を引き起こし、政府や企業は景気刺激策に注力しています。そうした中、世界経済フォーラムの最新の研究は、「ネイチャー・ポジティブ」(自然を優先する)ソリューションが、2030年までに3億9,500万人の雇用を創出する事を明らかにしました。

「自然とビジネスの未来」レポートは、10兆ドル規模のビジネスチャンスを生み出すための青写真を描き、自然界に価値を加える事業活動に焦点を当てています。

本レポートは、自然がもたらすポジティブな成果によってビジネスが改善された実例に基づいて作成されています。インドネシアでは、センサーと衛星画像を活用したスマート農業により、作物の収量が平均60%向上。中国の蘇州工業園区のグリーン開発では、グリーン開発の一部でGDPが260倍に増加。またベトナムでは、重要なマングローブの回復により、沿岸地域の人々の収入が 2倍以上に増加したなど、具体例を紹介しています。

世界経済フォーラムのネイチャー・アクション・アジェンダの部門長であるアカンシャ・ハトリ(Akanksha Khatri)は「迫る生物多様性の危機に対応し、経済をリセットすることで、何百万もの雇用を創出し保護することができるのです」と述べています。「自然は経済に必要な雇用を提供できるのです」と述べています。「企業や政府に対して、より良い方法を求める声が大きくなっています。私たちは、「ネイチャー・ポジティブ」なソリューションへ移行することで、食糧供給を保護し、インフラをより有効に活用し、また新しいエネルギー源を活用することができるのです」。

AlphaBetaと共同で作成された本レポートは、変化を計測できるよう、以下の3つの分野/社会経済システムにセグメント化しています。

ネイチャーポジティブな解決策を実施するために必要な3つの分野とともに、実現に向けた移行方法に関する青写真を示しています。

食料、土地、海の利用:私たちが食し、育んでいる食料は、世界のGDPの約10兆ドルを占め、労働力の最大40%の雇用の上に成り立っています。「ネイチャー・ポジティブ」なソリューションは、2030年までに1億9,100万人の新規雇用を創出し、3.6兆ドルの追加収入やコスト削減を実現することができます。その例は以下のとおりです。

- 食生活の多様化:世界の食料の約75%は、12種類の植物と5種類の動物が原料です。摂取されているカロリーの18%を占める動物性食品は、農地の80%を占めます。野菜や果物を一層取り込むなど食生活が多様化することで、2030年までに年間3,100億ドルの新たなビジネスチャンスが生まれます。

- 大規模農場におけるテクノロジー:2030年までに430万人以上の雇用と1,950億ドルのビジネスチャンスが精密農業技術によってもたらされる可能性があります。生産力が40%向上すると予測され、投資の利益率は10%以上になります。

- 小売業:ゴミ回収トラック1台に相当する繊維製品が毎秒埋め立てられる、または燃やされています。つまり、織物(繊維)の廃棄物は、年間5,000億ドルの経済的損失をもたらしています。再生可能な原材料の割合を増やし、再利用、再生、リサイクルすることで、1,300億ドルの節約につながり、2030年までに1億4,800万トンの繊維廃棄物を削減する事ができます。

- 漁業:1950年と同じ量の魚を現在獲るためには、その当時の5 倍の労力が必要です。このまま「通常通りのビジネス」アプローチが続けば、野生魚の資源量は15%減少します。これは、船がより遠くへ移動し、より深いところで漁をしなければならなくなるため、業界に830億ドルのコストがかかることになります。持続可能な生態系管理は、世界の海事産業にとって400億ドルのチャンスを利用するための一つの方法です。

インフラと建築環境:世界のGDPの約40%は、オフィスビル、住宅、交通機関など、人間が建設する環境から生まれています。「ネイチャー・ポジティブ」なソリューションは、2030年までに1億1,700万人の新規雇用を創出し、3兆ドルの追加収入やコスト削減を実現することができます。その例は以下のとおりです。

- スマート・ビル:システムの改修や、より効率的な技術を新築に導入することで、2030年までに8,250億ドルの節約が可能になります。LEDへの切り替えと自然光の代替だけでも、2030年ま でに6,500億ドル以上が節約できます。また屋上緑化は、エネルギーコストを節約し、洪水リスクや大気汚染を軽減。さらには食料を生産することができます。これらの市場は毎年12%成長し、2030年までに150億ドルに達する可能性があります。

- スマートセンサー:市営水道の漏水を減らすだけで、2030年までに1,150億ドルの節減が可能になります。水の効率利用(節水)に対する投資収益率は、20%を超えることも考えられます。

- 廃棄物処理:世界の廃棄物管理市場は、南アジア、東アジア、サハラ以南アフリカへの適切な投資が行われれば、3,050億ドルの収益機会の増加により、10年で倍増する可能性があります。

エネルギーと抽出物:私たちが生産・抽出するエネルギーは、世界のGDPのほぼ4分の1、世界の雇用の16%を占めています。エネルギー需要の増加に伴い、2030年までに8,700万人の雇用と 3兆5,000億ドルのビジネスチャンスが創出される可能性があります。その例は以下のとおりです。

- 採掘と資源採取:採掘における資源回収率を向上させれば、今後10年間で2,250億ドルを節約し、水の使用量を75%削減できます。また、新たな技術とさらなる機械化により、材料の回収率が最大50%向上する可能性があります。

- 自動車分野における循環型モデル:トランスミッションなど一部の自動車部品の再生・再利用は、リサイクルよりも価値を維持できる上、エネルギー使用量も少なくて済みます。製造コストを回収することで、2030年までに約8,700億ドルを節約できます。

- 再生可能エネルギー:2030年までの再生可能エネルギーの投資機会は6,500億ドル、投資収益率は10%を超えると予想されています。太陽光発電をはじめとする商業化された再生可能エネルギーの拡大策から、数百万規模の新しい雇用が生まれると考えられます。補助金がない場合でも、化石燃料と同等のコストで太陽光発電が可能な国は世界30ヵ国以上に広がり、2021年には、中国とインドでは石炭よりも安価になると見られています。

- 収益源の倍増:再生可能エネルギープロジェクトに必要な土地の大きさは、石炭発電の3〜12倍になります。一部の企業は、畜産やエコツーリズムと組み合わせることができる高層太陽光発電所を開発しており、同じ土地区画で追加の収益源を提供しています。

財務大臣のためのガイド :

「ポリシー・コンパニオン」(7月14日(火)にリンク公開)は、企業の行動に対する政府による支援策を概説しています。各国の財務大臣は、景気刺激策の一環として適切なインセンティブを導入し、自然を破壊することなく雇用を創出するために、6つの横断的な政策手法を組み合わせることができます。その中には、GDP以外の経済パフォーマンス測定の改善、イノベーションへのインセンティブ、海洋・陸域資産の空間計画と管理の改善、長期的な雇用の安定を脅かす補助金の廃止、リスキリング(再訓練)への投資、自然に基づく解決策のための財政支援の規模拡大などが含まれています。

SYSTEMIQと共同で作成した本コンパニオン・レポートは、意思決定者が自然を資産の一形態であるという事、また適切に管理されていれば長期的な社会の幸福、レジリエンス、そして反映を築く基礎となるという理解を促すことを目的としています。

パートナーからのコメント:

「新型コロナウイルスのパンデミックによる危機をチャンスと捉え、人間と自然の関係性をリセットする機会にするべきだと思います。生物多様性と環境への投資は、より良い経済と種としてのレジリエンス(回復力)を構築するチャンスです」とコスタリカのカルロス・アルバラド・ケサダ大統領は語っています。カーボンニュートラル、そしてネイチャーポジティブな経済への移行によって、繁栄、雇用、新しい発展が生まれることをコスタリカは証明しました。このモデルが主流になる時が来たのです」。

「2030年までの10年間は、生物多様性の喪失を食い止め、回復させるとともに、気候変動に対処するという歴史的な節目になります。こうした中、企業は地球の環境保護において重要な役割を担っています」と、国連事務局長兼国連環境計画事務局長のインガー・アンダーセン氏は語ります。「企業には、自然のインフラや自然に根ざした解決策への投資を増やすために必要なテクノロジー、イノベーション、資本があります」。

「生物多様性に対する脅威は、あらゆる経済セクターの企業にとって重要な関心事になっています。いわゆる『これまで通りのビジネス』は選択肢ではないのです」と、AlphaBeta社マネージングディレクター、フレイザー・トンプソン氏は語ります。「このレポートには、事業のレジリエンスを強化するだけでなく、新たな大きな成長機会を生み出せる道筋が描かれています」。

「新型コロナウイルス感染拡大が今後どのような展開になるのか、見通しがつかない状況ですが、すべての意思決定の中心を『自然』と捉えるための絶好の機会だと言えるでしょう」と、ユニリーバのCEO(最高経営責任者)、アラン・ジョー氏は述べています。「地球が死んでしまえば、雇用も繁栄もなくなるのですから」。

SYSTEMIQの創設者でシニアパートナーのジェレミー・オッペンハイム氏は、「自然は雇用を創出するだけでなく、公衆衛生やレジリエンスを支えるためにも極めて重要です。新型コロナウイルス感染拡大によって明るみに出た脆弱性の中で経済を活性化させようとする財務担当閣僚は、自然を財政政策に統合する機会を捉えなければなりません」と述べています。

<参考>
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