炎上する惑星:気候変動の火種と政治的対立の燃え広がり〜限界を迎えた惑星:気候変動がもたらす試練と政治的対立の猛威〜

発行済み
2020年01月15日
2020
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: 03-5771-0067 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • グローバルリスク報告書が示す長期的リスクとして気候変動に対する深刻な脅威が、そして2020年の顕著な短期的リスクとして「経済的対立」と「国内政治の二極化」が挙げられています
  • 地政学的な混乱と多国間協調主義の後退が、人類が一致団結してこれらの危機的なグローバルリスクへの取り 組みを阻害していることに警鐘を鳴らしています
  • 社会分裂を修復し、持続可能な経済成長を加速させる可及的な対応をしない限り、リーダーは一貫して気候変動 や生物多様性の喪失の危機に立ち向かうことが出来ないと報告書は警告しています
  • 報告書全文とグローバル・リスク・イニシアティブについてはこちら。ソーシャルメディアには#risks20で参加してください

2020年1月15日 英国、ロンドン - 本報告書は、国内外の分裂の加速と景気の減速を予測しています。地政学的な混乱によって大国の対立という「不安定」で片務的な世界に向かって突き動かされていくことに対して、ビジネスや政界のリーダーは共有するリスクに共同かつ早急に対応しなければなりません。

世界の750名余りの有識者や意思決定権者に、発生する可能性と影響度の高いグローバルリスクについて展望を聞いたところ、78%が“経済的対立”と“国内政治の二極化”が2020に増大すると回答しています。

このことは、特に、気候危機、生物多様種の喪失や生物種の記録的な減少などの緊急の課題が壊滅的な状況にあることを物語っています。マーシュ&マクレナンとチューリッヒ・インシュアランス・グループの協力によって制作された本報告書が指摘するところによると、政策立案者が景気を刺激しながら地球を守る施策を講じる一方、企業は企業の温室効果ガス削減目標(Science Based Targets = SBT)に適合することによって、致命的な将来への損失のリスクを避けなければなりません。

今後10年間に発生するグローバルリスクに関する調査を開始以来はじめて、発生の可能性のあるリスク上位5位が全て環境リスクになりました。それらは:

1.財産やインフラの損失、人命の喪失を誘発する異常気象の発生

2.国や企業による気候変動の緩和や適応の失敗

3.原油流出や放射能汚染などの環境犯罪を含む人為的な環境損害や災害

4.環境に不可逆的な影響をもたらし、その結果として人類と産業に著しい資源の枯渇が生じる大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊(地上または海洋)

5.地震、津波、火山爆発や地磁気嵐などの巨大自然災害

更には、ステークホルダーが未だ準備段階にある「今日の画期的なパワーシフト」や地政学的な混乱への適合を実行しない限り、経済、環境やテクノロジー分野のリスクを減じるタイミングを失うことになります。産業界と政策立案者が率先して行動を起こさなければならないことが明示されています。

「政局は二極化し、海面は上昇し、気候変動がもたらす試練は重大な局面を迎えています。今年は世界のリーダーが私たちの協調体制の仕組みを修復して再生させるべく、社会におけるすべてのセクターと協働しなければなりません。短期的な利益を追うばかりではなく深く根付いているリスクに対峙して行く必要があります。」と世界経済フォーラ ム総裁のボルゲ・ブレンデは述べています。

グローバルリスク報告書はグローバル・リスク・イニシアティブの一つであり、世界の最も差し迫った課題に対して持続可能で総合的な解決策をステークホルダーにもたらします。

迫りくる地政学的および環境リスクに対峙するためにシステム思考が求められ、それが欠落すれば脅威に気づくことすらできないでしょう。今年の報告書は、不平等の増大によってもたらされる影響、テクノロジーの統治の隔たりや見直しを迫られている医療制度について明白な焦点を当てています。

マーシュ&マクレナン・インサイツのチェアマンを務めるジョン・ドゥルジックは次のように述べています。「気候変動の高まりに対して復元を強く求めている投資家、規制当局、顧客や従業員から企業への圧力が高まっています。科学の進歩は、今や気候変動のリスクのモデリングがかなり高い確度でリスクマネジメントやビジネスプランに組み込まれていることを物語っています。最近のオーストラリアやカリフォルニアで発生した山火事などの高い注目を集める事象は、地政学やサイバーリスクへの対応と同様に気候リスクに対しても対策を講じるように、企業側に圧力を加えています。」

若年層は、地球の現状に対してより大きな懸念を抱いています。本報告書では、1980年以降に生まれた人たちを対象に、彼らがリスクをどのように見ているのかを取り上げています。彼らは短期・長期のいずれの展望においても、 環境リスクをどの世代よりも高い位置づけにしています。90%近い人たちが「異常熱波」「生物多様性の喪失」と「汚染による健康被害」が2020年には更に悪化すると回答しており、1980年よりも古い世代ごとの回答である77%、76%、そして67%と比べて高いことが判明しています。1980年以降に生まれた世代は、2030年までに環境リスクによる影響度は更に壊滅的で可能性が高くなると考えています。

人間の日常活動によって既に野生動物の83%と植物の半数は喪失されています。野生動物や植物は私たちの食生活と医療システムを支えていることは明白です。チューリッヒ・インシュランス・グループのグループ・チーフ・リスク・オフィサーであるペーター・ギガーは、気候変動による最悪で取り返しのつかない影響を避け、地球の生態系を従来にも増して保護するための素早い対応が切に求められていることを示唆しています。

同氏は更に、「生物学的に多様な生態系は、大量の二酸化炭素を吸収し、毎年33兆ドルにも上ると言われる経済効果を創出します。この数字は米国と中国のGDPを合計した数値に匹敵します。企業ならびに政策立案者はより早く低炭素経済に変換し更なる持続可能なビジネスモデルへの転換をしなければなりません。私たちは既に、政策の転換や顧客のニーズに応えた戦略を立てられなかったがために崩壊してしまった企業を数多く見ています。ビジネス転換のリスクは現実問題あり、誰もが自分の持ち場でリスク軽減の責を負わなければなりません。これは経済発展に必要不可欠なだけでなく、単に、正しいことを行うことなのです。」と述べています。

グローバルリスク報告書2020年版は、世界経済フォーラム・グローバルリスク諮問委員会の貴重な支援により制作されました。加えて、戦略パートナーであるマーシュ&マクレナンならびにチューリッヒ・インシュランス・グループ、そして学術面のアドバイザーであるオックスフォードマーティン校(オックスフォード大学)、シンガポール国立大学およびウォートン校・リスクマネジメント&デシジョンプロセスセンター(ペンシルバニア大学)の協力をいただきました。

関連資料

回答者は(1)今後10年間で発生する可能性のあるグローバルリスクと(2)発生した場合の影響度について回答を寄せています。

今後10年間に発生する可能性の高い上位5リスクは次の通り:
1.異常気象(洪水・暴風など)
2.気候変動の緩和・適応の失敗
3.大規模な自然災害(例:地震・津波・火山爆発・地磁気嵐)
4.大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊
5.人為的な環境損害・災害

今後 10 年間に発生した場合の影響度上位 5 位リスクは次の通りです:
1.気候変動の緩和・適応の失敗
2.大量破壊兵器
3.大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊
4.異常気象(例:洪水・暴風など)
5.水危機

それぞれのグローバルリスクは単体で収束するものではありません。回答者に相互連関性のあるリスクについての回答を求めたところ、次の5つが最も連関性の強い組み合わせであるという結果を得ました:
1.異常気象 + 気候変動の緩和・適応の失敗
2.大規模なサイバー攻撃 + 重要な情報インフラとネットワークの故障
3.高水準の構造的失業または不完全雇用 + テクノロジーの進歩がもたらす悪影響
4.大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊 + 気候変動の緩和・適応の失敗
5.食糧危機 + 異常気象

2020年に増大すると考えられる短期的リスクの上位5位は次の通りです:
1.経済対立 = 78.5%
2.国内政治の二極化 = 78.4%
3.異常熱波 = 77.1%
4.自然資源の生態系の崩壊 = 76.2% 5. サイバー攻撃:インフラ分野 = 76.1%

お問い合わせ先

当フォーラムのパートナー企業への問い合わせは以下のとおりです。

  • マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ
    コミュニケーションズディレクター
    ジェイソン・グローブス (在英国)
    +44 (0)20 7357 1455、jason.groves@marsh.com
  • スイス・チューリッヒ・インシュアランス・グループ
    シニア・メディアリレーションズ・マネージャー
    パベル・オシピャン (在スイス)
    +41 (0)44 625 2013、pavel.osipyants@zurich.com

<参考>
報告書発行のプレスカンファレンスを視聴する:https://wef.ch/risks20
2020年世界経済フォーラム年次総会のアジェンダを読む: https://www.weforum.org/agenda
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