グローバルでの住宅危機に今求められる:計画・政策・技術に基づくアクション

発行済み
2019年06月06日
2019
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: 03-5771-0067 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 世界の都市の90%は市民にアフォーダブル住宅を提供できておらず、現代のミレニアル世代は過去最高額を住宅に費やしています。
  • 世界経済フォーラムの新しいレポートでは、住宅費を下げ、より多くの人が住宅を購入・賃借できるようにするための世界各地での取り組みを取り上げています。
  • 既存の建物の再利用、都市計画法の改正、画期的な融資制度、限られたスペースをよりうまく活用するための 3Dプリント建築や変形可能な家具などの技術の活用といった革新的取り組みも紹介されています。
  • レポート全文はこちら

2019年6月6日 スイス、ジュネーブ – 世界は今、アフォーダブル住宅(収入に応じた適正な価格の住宅)不足の危機という問題への対応を迫られています。世界経済フォーラムの新しい「Making Affordable Housing a Reality in Cities (アフォーダブル住宅のある都市の実現)」によれば、世界の都市の90%はアフォーダブ ル住宅(居住者の生活費を過度に圧迫しない、雇用や人権を脅かさない適切な品質・立地・費用の住宅)を提供できていません。

アフリカでは人口の半分以上が基準を満たさない環境で、インドや中国では人口の約分4の1がスラムでの生活を強いられています。世界中で、ミレニアル世代は過去最高額を住宅に費やしつつも、その生活の質はこれまでよりも低下しています。さらに、2050年までに世界の都市人口の30%以上、約25億人が不良住宅に住むことになる、または住宅費高騰により経済的に苦しい生活を送ることになると予測されています。

世界経済フォーラムの都市開発および都市サービス部門のリード、アリス・チャールズは述べています。「少数の人しか住宅費用を賄えない世界はサステナブル(持続可能)ではありません。それぞれの市がソリューションを見つけようとするなら、手頃な価格を構成する要素、そしてそれに影響を与える要素についての幅広い理解が必要です。このレポートでは、手頃な価格に影響を与える需要と供給両面のダイナミクスを取り上げ、住宅バリューチェーンのシステム的なギャップに取り組む政策と実践を通して政府の支援への依存を減らし、より商業的に実現可能なアフォーダブル住宅への動機付けができる戦略的介入および長期的な改革へと意思決定者たちを導きます」。

アフォーダブル住宅実現までの主な課題には、土地の取得、土地利用に影響を与えるゾーニングおよび規制、資金調達メカニズム、設計および建築費用などがあります。以下は、アフォーダブル住宅実現に向けた革新的なアプローチの例です:

  • 中国の成都市および重慶市では、地目変更により農地を都市として利用できるようにしました。
  • オーストラリア、シドニーのコミュニティーズ・プラス・プログラムは、民間企業と提携して23,000の新規または再利用での公営住宅開発を行い、居住支援と教育・トレーニング・地域での雇用機会への参画をリンクさせています。
  • ドイツのハンブルグ、デンマークのコペンハーゲンは、アフォーダブル住宅開発プロジェクトに参加する民間企業と連携しているアーバン・ウェルス・ファンドに国有資産をプールしています。
  • アメリカのフェイスブックやグーグル、アイスランドのレイキャビクのイケア、デンマークのビルンのレゴ、韓国のソウルやスウォンのサムソン、中国の杭州のアリババなどの雇用者たちは、従業員向けの住宅開発に投資しています。
  • イギリスのロンドンでは、業界におけるスキル不足に対処するため建設に関するトレーニングが提供されています。
  • メキシコでは、建設における生産性向上を目指しレンガ積みロボットが採用されています。
  • アメリカのオースティン、中国の北京や上海、オランダのアイントホーフェンでは、住宅建設への3Dプリンティングの導入が模索されています。
  • アメリカのデンバーでは、一部の建物に居住者のエネルギーコスト節約のための屋上緑化やソーラー パネル設置を義務付けています。
  • ブルガリアのドゥプニツァ、ポーランドのポズナンでは、より多くの市民を支援するため公営住宅の適格条件を変更しています。
  • イギリスのブリストルでは、賃貸、共同所有、rent-to-buy(借りてから購入を決める)モデルなどを含む6つの異なる住宅所有形態で住宅の建設が進んでいます。
  • マサチューセッツ工科大学のメディアラボは、ハンドジェスチャーやボイスコマンドで裏返す・移動させる・収納することができる変形可能な家具を用い、その面積の 3倍にまで機能性を向上させた18.5平方メートルのプロトタイプマンションを開発しました。

レポートには、以下を含む行政、民間企業、そして非営利組織向けの提案も含まれています:

  • 行政は、財産権の重視、借用者の保護、混合所得の住宅開発の支援、画期的な融資モデルの実現を可能にするための法改正に取り組むべきです。
  • 民間企業は、地域のコミュニティと連携して従業員にアフォーダブル住宅を提供し、新たな資金調達メカニズムを支援し、住宅コストを賄えるよう支援する必要があります。民間のデベロッパーは生産性向上のため新しい素材・機器・技術を用いた、持続可能でエネルギー効率の優れた設計に投資すべきです。
  • 非営利セクターは行政や民間デベロッパーと連携し、新しい所有モデルを提案し、政策策定や技術的サポート、市民への教育や提唱を担っていく必要があります。

アフォーダブル住宅の確保は、都市を包摂的、安全、強靭(レジリエント)かつ持続可能にすることを目指す国連の持続可能な開発目標11の達成に欠かせません。2016年のニューアーバンアジェンダでは、住宅に関する政策は健康、雇用、貧困、モビリティ、エネルギー消費に影響を与えうるとされています。

本レポートはPwC(プライスウォーターハウスクーパース)との共同作業により作成されました。

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