「クロージング・ザ・ループ」(循環資源の「環」を結ぶ) :サーキュラー・エコノミー(循環経済)をグローバルに推進するパイオニアたち

発行済み
2019年02月18日
2019
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: 03-5771-0067 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 本年の世界経済フォーラムの「サーキュラーズ賞」は、産業廃棄物からいかに経済的価値を生み出すかという根本部分の変革を進める企業、政府、個人に贈られました
  • ごみを建築資材に変換するポータブル機の「トラッシュプレッソ」、5,000万のモバイル機器を再利用した「リサイクル道路」、そして中国天津市の「シティ・マイニング」などが、本年のクリエイティブな解決策に選ばれました
  • サーキュラーズ賞は、アクセンチュアの支援により 2015年に世界経済フォーラムとヤング・グローバル・リーダーズが設立しました

2019年2月18日、スイス・ジュネーブ ‐ 埋め立て処理や海洋や河川、湖に流出する産業廃棄物に付加価値を生み出そうとする既存業界やスタートアップ・ビジネスの増加に伴い、世界経済に注目すべき変革が生じています。第5回サーキュラーズ賞の結果がこのことを物語っています。同賞は、廃棄物や二酸化炭素の排出、有害物質の使用を削減するイノベーションや破壊的技術を活用する企業、政府そして個人を対象に毎年開催されているものです。

サーキュラー・エコノミーが世界経済に45億ドル(約4,900億円)の新たな成長の機会をもたらすことが期待される中、本年のアワードが贈られた循環型のソリューションは、事業領域、規模ともに拡大しました。申請数は昨年の1.5倍。45カ国以上のから450 を超える応募がありました。

「より多くの企業が、クロージング・ザ・ループ(資源の「環」を結ぶ)が単なる天然資源の管理ではなく、競争力をもたらすものであることを理解しています。資源循環の戦略を欠く企業には、第四次産業革命時代の新しい経済から取り残されるリスクがあります」世界経済フォーラムのグローバ ル・パブリック・グッズ・センターで部門長(ヘッド)補佐を務めるテリー・トヨタは話します。

授賞式は、ダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会において行われました。受賞者は以下 のとおり。

サーキュラー・エコノミー・マルチナショナル(多国籍企業)部門賞:シュナイダーエレクトリック(フランス)。レンタルや従量課金リースなどの方法で製品寿命を延ばすなど、自社ビジネスに資源循環の概念を取り入れました。その結果、資源循環事業が 2018年から2020年までの自社収益の12%を占めるまでに急成長。約10万トンの一次資源消費が回避される見込みです。

サーキュラー・エコノミー・SME部門賞:リーハイ・テクノロジーズ(米国アトランタ)。使用済みタイヤから抽出した資源を新しいタイヤやその他の素材に活用しています。今日までに、この資源循環モデルによって5億本以上のタイヤが製造されています。

ピープルズ・チョイス賞:トリシクロス(チリ)。南アメリカ最大のリサイクルセンター・ネットワークを構築し運営。同社は今日までに、3万3,000トンのリサイクル材料を埋め立てに使われる前に仕分け、14万トン以上の二酸化炭素排出を防いでいます。

サーキュラー・エコノミー・パブリックセクター:欧州委員会。欧州委員会のリーダーシップにより、EU域内の中小企業の24%が資源循環を活かした製品やサービスを提供しています。

サーキュラー・エコノミー・インベスター:インパックス・アセット・マネジメント(英国)。市場の主力を担う投資家たちによるサーキュラー・エコノミーへの投資を促進しています。FTSEは 2007年に同社の環境市場分類システムを採用しました。現在、100以上の上場企業に約80億ドル(約8,700億ドル)を投資しています。

サーキュラー・エコノミー・破壊的イノベーション部門:ウィノウ(英国)。食品産業の廃棄物削減を支援しています。同社のスマートメーターはゴミ箱に捨てられたものを分析し、その情報を製造プロセスと共有します。ウィノウは世界中の多くの厨房の廃棄物を半減し、消費者の出費を年間2,500万ドル(約27億円)節約しました。これは、1年あたり1,800万食分に相当し、7秒ごとに捨てられている食事のあり方に変化をもたらしています。

サーキュラー・エコノミー・リーダーシップ部門:フレミング・ベセンバッシャー。デンマーク政府のサーキュラー・エコノミー諮問委員会の議長を務め、デンマークにおいてサーキュラー・エコノミ ーの推進や、カールスバーグの監査委員会の議長を務めるなど、リーダーシップを発揮しています。

このほか、以下の企業が最終候補に選考されました。

  • アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー):使用済み穀物を高タンパク飲料に利用するアップサイクルや、消費者やサプライヤーと協力して包装材の回収や返却状況を改善するなどの資源循環活動を進めています。現在、同社製品の43%は返却可能なガラス瓶を使用しています。
  • カンブリアン(米国):産業排水を上水やエネルギーに転換できるエコボルト技術を開発。全米に9カ所の工場で 3億2000万リットル以上の下水を処理し、9,500万リットル近くを再生利用しています。
  • クローズ・ザ・ループ(オーストラリア):アスファルト添加剤を開発し、軟質プラスチックや使用済みのプリンター用トナーカートリッジを高性能の路面材として使用することで、埋め立て処理されるプラスチック量を削減。道路1kmあたりに使用されるプラスチックは、53 万枚のビニール袋や1万2,500個のプリンター用カートリッジに相当します。
  • ダイクー(オランダ):織物工業にサーキュラー・エコノミーを導入。同社のCO2に基づいた技術により、水や薬品を使用せずに染色を行うことができます。この染色機1台で、1年あたり3,200万リットルの水と16万kgの染色処理薬品の使用を削減します。
  • エナーケム(カナダ):ごみからバイオ燃料や再生可能化学品を生産。同社の技術により、リサイクルできないごみに含まれる炭素を5分で再生利用し、バイオ燃料やバイオ再生可能化学品に変えることができます。
  • HYLA(米国):携帯電話やその他のデバイスの製品寿命を延長させました。同社の再利用モデルにより、5,000 万個以上の機器が再利用され、所有者に40億ドル(約 4,300億円)の価値を創出。埋め立てられる6,500トンの電子・電気機器廃棄物の再利用につながっています。
  • ミニウィズ(台湾、中国):使用済み廃棄物を高品質の建築資材に転換。同社の移動式アップ サイクルプラント「トラッシュプレッソ」は、長距離の輸送を経ずごみをリサイクルできるシステムです。建設プロジェクトだけで、1,700万kgの二酸化炭素排出を抑えています。
  • 天津シティマイン(中国):廃棄物処理場に移動式のリサイクルセンターを導入し、一般廃棄物処理にリバースロジスティクスシステムをもたらす「アーバン・マイニング」の考え方のパイオニアです。

「消費者、企業、株主、政策立案者はともに、企業が持続可能性の目的を持って事業を進めることを期待し、また責任を負うことを企業に課しています。何もしないことや対応を怠れば、競争力は大きく低下するでしょう。株主の信頼を失うことで、世界的に 1,800億ドル(約19.5兆円)の収益機会を失うことになります」アクセンチュア・ストラテジーのシニアマネージング・ディレクターであるピーター・レイシー氏はこう指摘します。「サーキュラー・エコノミーへの移行は、持続可能な未来を確保するために必要な破壊的変化をもたらす一方で、企業のイノベーションと成長を促進させます。私たちは、このサーキュラー・エコノミーに向けた取り組みをけん引し、盛況な世界経済を創出している個人や企業の存在を誇りに思います」。

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