人類と地球を救う:代替タンパク質への切り替えが、死亡率を5%、温室効果ガスを25%削減

発行済み
2019年01月03日
2019
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世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: 03-5771-0067 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • オックスフォード大学マーティンスクールが世界経済フォーラムのために実施した新しい調査から、代替タンパ ク源による肉摂取は健康と環境に多大な恩恵をもたらしうることが分かりました。
  • 代替タンパク質の開発、家畜生産、消費者動向のさらなるイノベーションで、持続的な食品産業と私たちのより 健康な生活が実現可能になります。
  • 企業や政府、市民社会は、世界中の何億人もの畜産農家の人々の生活を保護しながら現在の食糧システムに変革 をもたらすための取り組みを行っています。
  • レポートの完全版はこちらから。

2019年1月3日、スイス・ジュネーブ ‐ オックスフォード大学マーティンスクールが世界経済フォーラムのために新しい調査を実施。その結果、世界中で必要とされるタンパク質栄養を食用肉の代替タンパク質から摂取することで、温室効果ガスの排出量は劇的に削減し、また年間数百万もの不必要な死を予防することができることが分かりました。本日公開されたレポート「代替タンパク質」では、<革新的なタンパク源>、<改善された生産システム>、そして<消費者動向の変化>が組み合わさることで、将来的に 100億人に到達する世界人口の栄養ニーズを持続的に満たすこと が可能であることも示しています。

このレポートの特徴は、食用肉が<人間の健康>と<環境>の両方にもたらす影響に焦点を当てている点。健康に関しては、分析の基本ケースである牛肉を他のタンパク源へ切り替えると、世界の食糧関連死は2.4%減少し、高所得国や高中所得国では最大5%まで減少することが分かりました。新興中産階級の食用肉の需要予測を踏まえると、この減少はますます重要となるでしょう。

図3 異なる代替タンパク質を追加摂取した場合の健康への影響

2010年のデータによると、環境への影響に関しては、牛肉生産だけでも食品関連の温室効果ガス全排出量の25%を占めることが分かっており、タンパク質需要の急激な増加が、環境に大きな圧力をかけることも予測されます。本レポートは牛肉とその他のタンパク源の生産における温室効果ガスの排出量の決定的な違いを示しています。例えば、牛肉生産において、200kcalに対する二酸化炭素の排出係数は23.9kg。一方、マメ類や昆虫、小麦、種実類は同量の栄養価で二酸化炭素の排出係数は1kg以下です。豆腐、豚肉、藻類、鶏肉などのその他の原料にいたっては、同量の栄養価でわずか3〜6kgです。

本レポートでは、牛肉、豚肉、鶏肉、マメやエンドウなどの生鮮又は加工した果実や野菜、豆腐や小麦グルテン(活性小麦タンパク質)製品、マイコプロテイン(菌類由来タンパク質)などの非動物性の代替加工食品、そして培養肉や昆虫、アルガ・スピルリナ(藻類由来タンパク質)など13種類のタンパク源を分析しました。

「将来的には、世界の食肉需要を持続的に満たすことは不可能になるでしょう。生産物のイノベーションや牛肉、豚肉、鶏肉の加工方法の改善、そして多様な食事を取り入れる消費者側の努力により、100億人が十分な栄養を摂取し、赤身肉などの食用肉の摂取を必ずしも諦めることなく、健康増進を実現することができることを本レポートは示しています」と世界経済フォーラムのマネージング・ディレクターであるドミニク・ウォーレイは話します。

本レポートは、代替タンパク質が健康および環境面で、ポジティブな影響があることをデータで示す一方、より持続的な食糧システムの構築における課題についても詳述しています。技術的な点では、牛肉の人工生産は従来の畜牛生産と比べてより環境にやさしい代替加工食品であるという見方が優位にあるものの、現在の生産方法はエネルギー消費量が高いという事実があります。この点についてレポートでは、再生可能エネルギー源を利用し(まさに今日のクラフトビールのように)都市を生産拠点とすることで生産プロセスが成熟し生産規模が拡大すると、人工肉の環境保全に対する効果は大幅に向上すると指摘しています。

政治的な思考を変えるためには、イノベーションの技術(とそれに付随する財政)面と同様に、代替タンパク質を肯定するストーリーも必要です。これらの要素がそれぞれ具体化すれば、真の変革に向けて進むことができるでしょう。本レポートは、以下4つの部門において変革の必要性を強調しています。

  • 食品産業:生産規模を拡大し消費者に幅広い選択肢を提供するために、新たな代替タンパク質生産への投資が求 められています。
  • 畜産業:農家がより持続可能な生産プロセスを導入するためのインセンティブを創出するために、政府を含め他 の部門と協働する必要があります。
  • 原料業界:特に(より持続可能な原材料の創出とともに)代替タンパク質の材料製造へと生産を移行させなけれ ばならない部門です。
  • 政府及び監視機関:健康リスクと根拠のないクレームから一般市民を守るために、新しい代替タンパク質の展開 を統治するための規制の策定が必要です。

農家へのサポート

食糧生産をより持続可能なものとし、私たちが健康に生きるために、代替タンパク質はそのソリューションの一部でしかないという点も本レポートが発信する重要なメッセージです。本レポートでは、昆虫などの動物飼料のイノベーションの必要性も指摘しており、これは特にヨーロッパや北アメリカの農家にとって極めて重要な点です。

世界経済フォーラムの2019年の年次総会のために国際畜産研究所(ILRI)が行った分析の結果「2030年以降の開発途上及び新興経済圏の畜産業に向けた選択肢」によると、タンパク質について別の重要な役割を担うのが小規模農家です。このレポートでは、2010年の畜産由来食品についてアジア全体の75%とアフリカ全体の72%は小規模農家が生産すると指摘しています。こうした農家はそれぞれ非常に異なる状況下にあります。例えば、南アジア、東アジア・ 太平洋、そしてサブサハラ・アフリカ地域では、所得が1日あたり2ドル以下の貧困状態にある農村部において家畜 飼育業者は約7億5000万人にのぼります。全生産コストの70%以上が人件費と材料費に充てられるため、独自の持続的な集約生産の方法が求められるでしょう。農家が生活を向上し、飼育する家畜の環境影響をより良く管理できる ようにすることは、持続可能な食糧システムを実現するための重要な課題となるでしょう。

リーダーたちの視点

「私たちは、未来の世代に対して正しい食糧システムを構築するためのまたとない機会に直面しています。この目標に向けた道のりにおいて、私たちは、持続的な成長を成し遂げるために伝統的な生産方法からの野心的な変革の途中におり、代替案と革新的なソリューションが交差する地点に立っています。167年の歴史を持ち、起業精神を持ち続ける会社として、私たちのグループはこの挑戦に積極的な役割を担い、増え続ける世界人口に対して持続的に食糧を供給できることをグループとして保証するためのイニシアチブを進め、またサポートしています」。
- イアン・マッキントッシュ、イス・ドレフュス・カンパニー 最高経営責任者

現在世界中で実践されている食肉生産は、予測される成長水準を維持することができないため、環境への影響を低減するための新しいアプローチが必要となります。また、より持続的な食べ物へ移行することも求められるでしょう。メープルリーフは、植物性タンパク質由来の食品によって、タンパク食に対するより多くの選択肢を提供し、消費者の需要をサポート。この活動を通じて、ビジネスと環境の両方において価値を創造するためのすばらしい道筋を提供します。また、弊社は持続的な未来に合った食肉生産システムへの移行を実現するために、システムの再構築にも同じように注力しています。消費者に持続的なタンパク食の幅広い選択肢を提供するために、私たちは驚くべき速さでイノベーションや規模、アクセシビリティを実現する活動を進めています」。
- ミカエル・マケイン、メープルリーフフーズ 代表取締役社長

「地球や人類の未来のために、現在の食糧システムの変革を行うことが必要であることは明白です。そしてこれは喫緊の課題です。私たちは、現在の食糧システムが崩壊する前に、その変革に対して何らかの対応を行うことができる最後の世代なのです。健康で栄養価が高く、プラネタリー・バウンダリーを尊重した代替的なタンパク源を発見することは必須です」。
- マルコ・ランベルティーニ、世界自然保護基金 事務局長

「現在から将来にわたって、人類が必要な栄養量を満たし、プラネタリー・バウンダリー内で生産された食品を摂取し続けるために、私たちは食糧システムに関する全体的で包括的な考え方を持つことが必須です。特に私たちが日常的に摂取する重要栄養素であるタンパク質に関しては、タンパク源の多様化が必要です。DSMは、栄養素、発酵、食品用途の専門性を組み合わせて、未来の食事に対するソリューションを提供します。増加する人口に健康な食品を提供するためのイノベーションを継続するうえで、動物性、植物性、そして代替加工といったあらゆるタンパク源がそ の役割を果たすでしょう」。
- フェイケ・シーベスマ、DSM CEO兼取締役会会長

「植物性タンパク質と代替タンパク質への根本的な移行が必要です。そこには非常に多くの美味しい選択肢が並びますが、人々は利用可能で手頃な価格であり魅力的なものしか選びません。より持続的なタンパク質への移行が人々の健康と地球にとって必要であることは、システム全体の科学的な目標設定を手掛かりとします」。
- ガンヒルド・アンカー・ストルダレン、EAT財団 創立者兼経営執行役会長

世界経済フォーラムの「ミート:ザ・フューチャー」の取り組みについて

どこでも入手でき、安全かつ健康で持続的で国連の持続可能な開発目標に合ったタンパク質を普及することは、消費や環境、食の安全保障、健康、貿易といった体系的な問題を横断する喫緊の課題です。タンパク質の普及は、世界経済フォーラムが「第四次産業革命」と称する技術や科学のイノベーションを利用するすばらしい機会にもつながりま す。

変化に向けたアジェンダを加速させ、新しいアイデアや協力のきっかけを創出するために、2018年の初めに世界経済フォーラムは「ミート:ザ・フューチャー」を開始。世界中の経済政策、環境、食の安全保障分野を牽引する専門家、 ビジネス界のリーダー、市民社会、投資家、そして技術のイノベーターと協働しています。この取り組みは、タンパク質システムに変化をもたらすために、<代替タンパク質普及の加速化>、<現在の生産システムの向上>、そして<消費者動向の変化促進>の3つに焦点を当てます。

世界経済フォーラムと「代替タンパク質」について

「代替タンパク質」レポートはこちら
「2030 年以降の発展途上及び新興経済圏の畜産業に向けた選択肢」レポートはこちら
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