世界経済フォーラム 2019年年次総会が閉幕:地球規模課題に対応するためのイニシアチブを確認

発行済み
2019年01月25日
2019
シェア

世界経済フォーラム パブリック・エンゲージメント・リード 栃林直子
Tel.: 03-5771-0067 Naoko.Tochibayashi@weforum.org

  • 世界経済フォーラムの2019年年次総会において、世界で最も差し迫った環境や社会、政治の諸課題を解決するための、画期的で革新的な施策が数多く発表されました。
  • これらのイニシアチブが成功するかどうかは、すべての関係者の継続的なコミットメント次第です。
  • 次回の年次総会は、2020年1月21日〜24日、開催予定。
  • 詳細は、こちらから。

2019年1月25日、スイス、ダボス ‐ クロスタース ‐ 49回目を迎えた世界経済フォーラムの年次総会が閉幕。世界情勢の改善に向けた、グローバルなイニシアチブや取り組みの画期的なアジェンダを確認しました。

当フォーラム総裁のボルゲ・ブレンデは、第四次産業革命によりもたらされる数々の複雑な課題に対応するため、世界経済フォーラムは官民連携や利益普及のためのプラットフォームとして、その活動をこれからも進めていくと述べた上で、「政府や企業、市民社会との独自のパートナーシップがなければ、喫緊の地球規模の課題を解決することはできません」と参加者に訴えました。

プラスチック廃棄物やメンタルヘルスの問題に対する世界的な取り組みから、紛争で孤立した国における和平の促進に至るまで、ブレンデは本総会の成果を述べながら、同時に、失われた信頼を取り戻し、人間の尊厳を維持するための統合された世界規模のアクションを参加者に呼びかけました。

またブレンで総裁は、今日の差し迫った課題に適応したグローバル・アーキテクチャーの形成は極めて重要であり、「すべての関係者が一丸となって」はじめて実現することができると話しました。

本年次総会の成果を以下にまとめます。詳細はこちらから。

安倍晋三首相は、日本がG20議長国として世界的なデータガバナンスの課題に取り組むことを宣言。WTO(世界貿易機関)の屋根のもと、「大阪トラック」と名付けた議論の場で本プロセスを進めていくと述べました。

アンゲラ・メルケルドイツ首相は本総会の基調講演において、多国間主義へのドイツのコミットメントを再確認し、より強靭で柔軟なグローバル・アーキテクチャーを探求するなかで合意点を見つけることの重要性を、リーダーたちに訴えました。王岐山中国副主席も同様の趣旨の表明を行い、中国はすべての国と協力して共に発展を目指し、世界的な成長を促進させ、国際秩序を支持する点を挙げながら、この新興する超大国の価値観を繰り返し述べました。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、地球規模課題に協力して取り組む必要性を訴え、多国間機関の重要性を強調し、リーダーが社会不安の根本原因を理解し対処することの重要性を主張しました。

マイク・ポンペオ米国国務長官は、現在の社会不安を「世界中に吹きかかる新しい風」と描写し、変化する地政学的情勢において米国がリーダーシップを発揮し国益を追求すると強調しました。

ジャシンダ・アーダンニュージーランド首相は、同国の財政に対する新しい取り組みとして、政策が国民の生活の質にもたらす長期的なインパクトを評価する「幸福予算」を紹介しました。

ジャイール・ボルソナーロブラジル大統領は、新政権が計画する改革を説明。改革の中身は、中央政府の縮小、税負担の削減、社会のセーフティネットの向上、大きなビジネス機会の拡大としました。大統領はブラジルが世界に門戸を開くことを宣言し、まずはブラジル政府が見本となって示していくことを参加者に伝えました。

ブラジル、コロンビア、ペルーの指導者とカナダの外務大臣は、ベネズエラの反与党派リーダーであり自身を暫定大統領と宣言したフアン・グアイドを支持することを表明。前日には、パラグアイのマリオ・アブド・ベニテス大統領がグアイドに行動を起こすべきと呼びかけています。

アフガニスタンのモハンマド・アシュラフ・ガニー大統領は、同国が民主主義の定着に向けて取り組んでいると断言。またアフガニスタンは、2015年以降に390の法律を新たに可決し、女性議員数が増加している状況についても語りました。

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領とアルメニアのニコル・パシニャン首相は、世界経済フォーラムの総会において、ナゴルノ・カラバフ地域における両国の和平交渉を前進させました。

イタリアとスペインの首相は、世界経済システムの抜本的な改正を主張。両国は、労働者の機会を改善するための経済的な変革へ移行することを宣言しました。

南アフリカとルワンダの大統領は、雇用創出と人材開発を促進するために、アフリカ大陸においてデジタルテク ノロジーの活用を呼びかけました。ポール・カガメ大統領とシリル・ラマポーザ大統領は、政府が若い世代のテクノロジー分野での取り組みに遅れを取ってはならないことを強調し、ICTをアフリカの社会経済開発目標の中心に位置付けました。アビー・アハメドエチオピア首相は、同国の政策改革を説明し、エチオピアへの企業誘致を行いました。

社会とニュー・エコノミーの構築

再教育とスキルアップ:タタ・コンサルタンシー・サービシーズの協力で2017年に発足した当フォーラムの「クロージング・ザ・スキル・ギャップ・イニシアチブ」から、世界で1,700万人以上にトレーニングを実施し、アルゼンチン、インド、オマーン、南アフリカにおいて未来の仕事に必要なスキルを普及させるための官民パートナーシップを支援することを発表。また当フォーラムは、今後10年間でテクノロジーの発展により仕事を失う労 働者の再訓練にかかる全費用340億ドル(約3兆7000億円)の 86%を、政府が負担しなければならないという調査結果を公開しています。

ジェンダー・ギャップの解消:当フォーラムのニュー・エコノミー・アンド・ソサエティ・センターは、ジェンダー・ギャップを解消するための国内タスクフォースのネットワークを、アルゼンチン、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、フランス、パナマ、ペルーの8カ国に拡大することを発表しました。

市民社会の醸成:PACTとザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドの資金支援と、25の市民社会組織の支援を受け、当フォーラムは新しいイニシアチブ「第四次産業革命に対応する市民社会の形成」を発足。市民社会が急速な技術的変革に適応できるための支援を行うことを目指します。

平等の促進:国際的企業のグループが連携して世界的なLGBTI平等のためのパートナーシップを発足しました。このパートナーシップのメンバーは、それぞれの事業を通じて、2020年までに国連のLGBTIに対する行動基準を運用化することに合意しています。そして、2020年までにさらに50企業以上がこのパートナーシップに参加することを計画しています。

脆弱な経済圏への支援:世界経済フォーラムは、世界銀行と国際赤十字委員会と連携して、脆弱な経済圏への投資に民間資本を投入することを目的とした、人道的投資に関するハイレベルグループを設立しました。

環境の管理責任

自然の保護サー・デイビッド・アッテンボローは、自然環境に配慮することを参加者に訴え、気候変動がもたらす脅威は「誇張しても、しすぎることはない」と説明。また、参加者に対して自然と接することを促しました。

電子機器廃棄物の撲滅:当フォーラムのグローバル・パブリック・グッズ・センターは、世界環境ファシリティから200万ドル(約2.2億円)、民間セクターから1,300万ドル(約14.2億円)の資金提供を受け、ナイジェリアにおいて電気・電子機器廃棄物の正式なリサイクル産業を構築するプロジェクトを開始。当フォーラムは、国連電気電子機器廃棄物連合体と協力し、毎年の電子機器廃棄物量を概算した報告書を公開しました。同廃棄物の年間排出量は、2050年までに現在の倍以上に膨れ上がると試算しています。

伐採の削減:ペルーは当フォーラムのトロピカル・フォレスト・アライアンスに参加します。このアライアンス は、ペルーが掲げている国内のアマゾン地域における森林伐採量の削減目標の達成を支援します。ペルーはブラジルに次いで世界第2のアマゾン熱帯雨林を有します。

プラスチック汚染への対応:当フォーラムのグローバル・プラスチックス・アクション・パートナーシップ(GPAP)に参加したベトナム政府は、プラスチック汚染問題の解決に向けて、循環型経済のアプローチを取り入れます。

地球のために人々を動員:自然と人間のための新しい政策に向けた取り組み「ボイス・フォー・ザ・プラネット」は、アル・ゴア元米国副大統領(1993年〜2001年)、ニュージーランドのジャシンダ・アーダン首相、マヒンドラ財閥のアナンド・マヒンドラが立ち上げた世界規模のキャンペーンです。このキャンペーンでは 48時間以内で個別に21,000個の公約を集めました。

また、当フォーラムの社会起業家であるサウス・ポールから炭素クレジットを購入することにより、当フォーラムはすべての参加者の完全なカーボンオフセットを実現するという点も重要な成果です。

当フォーラムの官民協力のためのプラットフォームについて

再利用可能な包装品:全25のグローバル企業は、リサイクルを専門とするテラサイクルと協働し、包装品再利用の新しい概念である「ループ・アライアンス・イニシアチブ」を発足することを表明。回収費が不要な半永久的に使用できる包装品に対して、消費者が払戻し可能な保証金を負担するというこの制度は、包装品を 3、4回程度使用すると、製造の環境コストが回収できる見込みです。

持続可能な消費と生産:グーグルとSAPは、持続可能な消費と生産を促進する起業家を支援するために、40万ドル(約4400万円)の賞金を提供する「サーキュラー・エコノミー2030」の実施を発表しました。

メンタルヘルス:ウェルカム・トラストは、うつ病や不安障害の理解を広げるために、今後5年間で2億6000万ドル(約284億円)の投資を表明。メンタルヘルスの問題は若年期に発症することが典型的であるため、幼児期の発症時に処方することができる心理学的治療に専念した調査を実施します。ユナイテッド・フォー・グローバル・メンタルヘルスのエリシャ・ロンドンCEOは、実際にこうした症例を抱える者を支持し、市民社会が持つ重要な役割を強調しました。

薬剤耐性:英国のマット・ハンコック保健大臣は、2050年までに世界で毎年1,000万人が犠牲になると予測され ている、薬物耐性の世界的な脅威に対処するための5カ年計画を開始しました。この計画は、健康や動物、環境、フードチェーンを対象とし、2040年までに薬物耐性を抑制し制御するという英国の目標をどのように実現するかを定めています。

鎌状赤血球症:ガーナ政府、ガーナ鎌状赤血球財団、ノバルティスは、ガーナ国内の鎌状赤血球症(SCD)患者の症状を改善し、寿命を延ばすことを目的としたパートナーシップを発足しました。2050年までに約1,400万人の新生児がSCDを発症すると予測されており、これはサブサハラ・アフリカ地域の新生児の82%に相当します。

若者のエンパワメントとアクセシビリティ:本年次総会において、フェイスブック、ネスレ、ニールセンはグロ ーバル・ユース・アライアンスを設立し、新興/発展途上国の若者のスキル向上を促進し、現在失業中の7,100万人の若者を支援します。

ディスアビリティ・インクルージョン:世界中で障がいを持つ 13億人の社会的・経済的な可能性を実現化する新しいキャンペーン「#Valuable500」が、本年次総会において開始しました。活動家であるキャロライン・ケイシ ーが進めるこのキャンペーンは、1年以内に500の企業から支援を集めることを目指しています。ユニリーバ、アクセンチュア、富士通、バークレーなどが、このキャンペーンに賛同した最初の企業です。

電子商取引と貿易の拡大:ルワンダは、新興市場において電子商取引の拡大を目指すアリババのグローバル取引プラットフォームに、アフリカから初めて参加する国に。一方、70以上の国で形成するグループは、電子商取引の貿易面に関するWTO交渉を開始することで一致しました。当フォーラムの企業・市民社会のトレード・コミュ ニティのメンバーは、世界経済における新しいデジタル取引協定の必要性を訴える声明を発表しました。

当フォーラムのサイバーセキュリティ・センターに名を連ねるサイバー専門家たちは、悪意のあるサイバー活動に対処するために、世界規模の協力と多国間主義が極めて重要であることを強調しました。同センターと、第四次産業革命センターは、ウィリス・タワーズワトソンと協力し、空港やその他の重要インフラをサイバー攻撃から守るプロジェクトを開始しました。

第四次産業革命センター

当フォーラムの第四次産業革命センターのネットワークは、100 以上の企業やG7の5カ国含む政府にまで拡大。コロンビア、イスラエル、アラブ首長国連邦は、新興テクノロジーの政策を策定し試行することを支援する独立した関連センターを設立する予定です。

インドのアンドラ・プラデシュ州は、民間航空当局や国際政府組織、民間企業と協働で策定した、同ネットワークの商業ドローン・オペレーターに対する政策的枠組みを採用しました。日本の第四次産業革命センターは、G20加盟国の都市連合を発足し、信用があり持続可能なスマートシティ開発の加速化に焦点を当てます。

2019年の年次総会の共同議長は、イラクのKESKグリーン・ビルディング・コンサルティング設立者で、世界経済フォーラムのグローバル・シェイパーズ(アルビール・ハブ)のメンバーであるバシマ・アブドゥルラフマン氏、コロンビアのトドス・ポル・ラ・エデュカシオンの共同設立者で世界経済フォーラムのグローバル・シェイ パーズズ(ボゴタ・ハブ)のメンバーであるフアン・ダビド・アリスティザバル氏、スウェーデンの欧州青年会理事会メンバーで世界経済フォーラムのグローバル・シェイパーズ(ストックホルム・ハブ)のメンバーであるノウラ・ベロウバ氏、米国のフィーディング・アメリカの戦略パートナーシップ・ディレクターで世界経済フォーラムのグローバル・シェイパーズ(シカゴ・ハブ)のメンバーであるジュリア・ラスカム氏、ケニア・カクマ難民キャンプの地区議長で世界経済フォーラムのグローバル・シェイパーズ(カクマ・ハブ)のメンバーであるモハメド・ハッサン・モハムド氏、米国マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者、そして日本の合同会社RDNDの共同設立者兼コミュニケーションディテクターで世界経済フォーラムのグローバル・シェイパーズ (大阪ハブ)のメンバーである坂野昌氏に務めていただきました。

世界経済フォーラムの年次総会には、世界中の政府、国際機関、企業、市民社会、メディア、文化界、第一人者である専門家や若い世代から、ハイレベル人材や代表者に参加いただきました。60 人以上の国家元首や政府代表、300 人以上の閣僚、企業のCEO や会長が一堂に会しました。詳細はこちらから。

世界経済フォーラムの 2019 年年次総会について

ライブ配信:http://wef.ch/am19
セッション情報のフォローと埋め込みの方法:http://wef.ch/howtofollow
年次総会の様子(写真):http://wef.ch/pix
アジェンダ:http://wef.ch/agenda
フェイスブック:http://wef.ch/facebook
関連動画:http://wef.ch/video
ツイッター:@wefまたは@davos(#wef19 - オンラインで議論に参加できます)
インスタグラム:http://wef.ch/instagram
リンクドイン:http://wef.ch/linkedin
インパクト:http://wef.ch/impact
最新情報の配信登録(英語):http://wef.ch/news

すべての意見は、著者によるものです。世界経済フォーラムは、独立かつ中立なプラットホームとして、​グーロバル、地域、産業のアジェンダを形成する話題に関わる議論の場を提供しています。

世界経済フォーラムについて

エンゲージメント

  • サインイン
  • パートナー(組織)について
  • 参加する(個人、組織)
  • プレスリリース登録
  • ニュースレター購読
  • 連絡先 (英語のみ)

リンク

言語

プライバシーポリシーと利用規約

サイトマップ

© 2025 世界経済フォーラム