第四次産業革命

産業インテリジェンスの活用〜限られた資源最大の成果を生む〜

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産業インテリジェンスは、農業や食品・飲料部門を含む産業界が、限られた資源で最大の成果を生むことを可能にし、資源を保護しながら気候変動との闘いを支援します。 Image: REUTERS/Anindito Mukherjee

Caspar Herzberg
Chief Executive Officer, AVEVA Group
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本稿は、以下センター(部門)の一部です。 自然と気候
  • あらゆる産業において、AI(人工知能)、アナリティクス、デジタル・ツインなどの技術革新による革命が目前に迫っています。
  • この産業インテリジェンスは、総合的に、農業における馬車式播種機のような歴史的革新に匹敵するパラダイムシフトを表しています。
  • 産業インテリジェンスは、農業から製造業に至るまで、さまざまなセクターが生産性や持続可能な成長を犠牲にすることなく、気候変動と闘うことを可能にするでしょう。

農民は、限られた資源で収量を向上させるため、何世紀にもわたって絶えず革新を続けてきた効率化のエキスパートです。1701年、ジェスロ・タル氏は農業実践において科学的アプローチを用いる初期の先駆者となりました。彼は、馬車式播種機の革新により植え付けを機械化し、農家が無駄を省きながら作物の収穫量を増やし、少ない資源でより多くを実践することを可能にしたのです。

今日、私たちは産業インテリジェンスの爆発的な成長という革命の始まりを目前にしています。この革命は、気候変動と闘うために、「限られた資源で最大の成果を生む」という原則をすべての産業に適用することを求めています。

気候変動と自然:密接に絡み合った緊急課題

近年、気候変動問題は、地球の生物多様性を保護する必要性と合わせて、相互に深く関連する目標であると認識されています。これら二つの組み合わせは、Climate Week NYC 2023(ニューヨーク気候週間2023)において、「 Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連の財務情報開示に関するタスクフォース)」の歴史的な発表において基準が報告されたことにより明確化されました。この措置は、気候変動と生物多様性の保護に最大限の影響を与え、資源利用を最小限に抑える統合的なソリューションの必要性を明確に示しています。最高の資源とは、つまり使われない資源となり得るのです。

パリ協定や生物多様性条約などの国際協定も、統合的アプローチの必要性を強調。これらの枠組みは、気候変動と生物多様性の損失に同時に対処する各国政策の策定を奨励し、より少ない資源でより多くを行うという原則が世界的に採用されていることを示しています。

農業とより広域における産業インテリジェンス

タル氏の播種機が農業を飛躍的に効率化させたように、今日の産業インテリジェンスは、あらゆる産業セクターにおいて、資源管理、そしてそれと同等に気候変動対策への取り組み方にも革命をもたらしつつあります。

食料、水、エネルギー、医薬品、輸送など、生活に不可欠なものを提供する大手企業は、テクノロジーとAIの活用により、環境への影響を最小限に抑えながら生産性を最大化し、より少ない労力でより多くのことをこなします。これらの企業は、データ中心のデジタルトランスフォメーションが新しい産業革命の核心であり、効率性、持続可能性、収益性が共存し、より少ないリソースでより多くの成果を達成できることを認識しているのです。

AVEVA社の「 Industrial Intelligence Index (III) Report 2024(インダストリアル・インテリジェンス・インデックス(III)報告書2024年版)」は、この変革の緊急性を明らかにしています。世界的な製造業における「Cスイート」の幹部たちの認識は以下の通りです。

・45%が脱炭素化への取り組みを加速させる必要性を感じる

・51%がデータのサイロ化が効率性を阻害していると認識している

・58%が労働力を強化するための新技術の必要性を訴えている

これらの数字は、強力な印象を明らかにしています。驚くべきことに、97%の製造業経営幹部が、競争力を維持するためには産業用AIソリューションが必要であると認めており、74%が今後12カ月間に産業インテリジェンス・ソリューションへの投資を優先しているのです。

産業インテリジェンスを活用して、より少ない労力でより多くの成果を

アグリテックのビジネスにおいては、データとAIがオペレーションのあらゆる側面を最適化し、より少ない労力でより多くの生産を行っています。AI、アナリティクス、デジタル・ツイン、そして次世代技術は、効率性、資源保護、そして精度と規模による収量増加の現代的な原動力となっているのです。

産業インテリジェンスをどのように応用すると、世界の資源を守りながら効率性を向上し、気候への影響を削減することができるのでしょうか。以下に例をいくつか紹介します。

持続可能な水と食糧の生産

ニュージーランドでは、WaterForce(ウォーターフォース)社がIoTを活用した水管理システムを開発し、農家が灌漑を遠隔操作にてできるようにしました。その結果、エネルギーコストを最大50%削減し、より効率的な水利用を実現。これは、2030年までに水の需給ギャップが40%になると予測される世界において、極めて重要な成果です。

食品と農業において世界的リーダーであるカーギル社は、エネルギー効率を最適化するためのデータ主導型プログラムを導入。この取り組みは、2030年までにサプライチェーンの排出量を30%削減し、優先流域で持続可能な水管理を実現するという同社の目標に沿ったものになっています。

酪農経営の最適化

南アフリカでは、Woodlands Dairy (ウッドランズ・デイリー)社が酪農生産においてデータ中心のアプローチを取っています。統合ソフトウェアソリューションを導入することにより、同社はISO22000準拠の達成、コスト削減、品質管理の改善を成し遂げました。この包括的なアプローチにより、エネルギーと水の使用量、さらに廃棄物の発生を抑えながら、より高品質な乳製品の生産を実現しています。

食品の証明とトレーサビリティ

食品業界のグローバルリーダーである ダノン社は、これらの要素を結びつけました。AVEVA社の製造実践システムを使用して、乳児用栄養剤の製造チェーン全体の工程をデジタル化し、トレーサビリティを強化するソリューションであるDANMESを構築。このシステムは無駄を省き、効率を向上させ、製品の品質と安全性を高めます。また、同社の持続可能性の目標にも大きく貢献しており、産業インテリジェンスがいかに世界規模で持続可能な農業と食品生産を推進できるかを実証しています。

アグリテックによる精密農業

オーストラリアのアグリテック・プロバイダーは、CONNECT産業インテリジェンス・エコシステム(CONNECT industrial intelligence ecosystem)を利用し、IoT対応デバイスを通じて家畜の状態をリアルタイムで追跡できるクラウドベースのシステムを開発しました。これにより農家は、家畜1頭1頭のケアとリソースを最適化できるようになり、その結果、水、飼料、エネルギーの消費を抑え、より高い収量とより健康な家畜を得ることができたのです。

新産業革命への道

農業、食品および飲料生産にとどまらず、「限られた資源で最大の成果を生む」という原則は、あらゆる産業に及びます。エネルギー網の最適化から持続可能な造船まで、企業はさまざまな産業で新技術を活用し、効率と歩留まりを向上させ、環境への影響を削減する必要があります。この新たな産業革命を推し進めるにあたり、私たちは、何世紀も前にジェスロ・タル氏が農業を近代化させたのと同じイノベーション精神を培っています。今日の産業界のリーダーたちは、効率性、持続可能性、収益性を追求する現代の農民なのです。

将来は、先進的なAI、エッジ・コンピューティング、量子数学的能力といった、さらに革命的なテクノロジーとアプリケーションが登場し、産業データの処理・利用方法がさらに強化し、デジタルトランスフォーメーションが加速するでしょう。デジタル化による革新と接続への集中は、エネルギーと資源の節約を可能にし、経済、およびそれを達成できる人々に巨大な価値と機会を創出します。

気候変動と生物多様性における危機は緊急性が高く、限られた資源で最大の成果を生むための迅速かつ果断な行動が求められています。今こそ行動を起こす時です。産業インテリジェンスの力を活用することにより、私たちは地球を守り、人類の幸福を確保し、来るべき世代のために持続可能な成長への新たな道を切り開くという、現代の課題に立ち向かうことができるのです。

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