日本と中東:分断を超えてもたらされるグローバル・コラボレーション
日本と中東は、経済的な関係を強化するために協力を深めています。 Image: Unsplash/Andy Winata
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グローバルな協力体制
- 日本は、歴史と文化への理解を持ち、宗教や政治に対して中立であることから、世界における様々な対話や協力を促進する上で適した立場にあります。
- 石油輸入については中東に大きく依存しており、再生可能エネルギーへの世界的なエネルギー転換を踏まえた関係強化を図っています。
- また、自由貿易、テクノロジー、気候変動対策を含む様々な分野における協力を通じて、国際的な役割の強化に取り組んでいます。
世界は今、歴史的な転換期を迎えています。国家間や国内における分断が進み、二極化が進んでいます。地政学的な混乱や、特にウクライナやガザにおける戦争は、安全かつ安定した未来への信頼と、相互理解や尊重に影響を及ぼしています。
G7の国内総生産(GDP)が世界経済(購買力平価ベースのGDP)のわずか30%(29.6%)を占めるに過ぎない今、グローバル・サウスの新興国の台頭により、世界の重心は北から南へと移行しつつあります。
一方、世界は、気候変動やエネルギー転換からグローバルヘルスやサプライチェーンの混乱に至るまで、制度や価値観の違いを超えた協力が求められる様々な課題に直面しています。こうしたグローバルな課題に取り組む唯一の方法は、信頼に基づくあらゆるレベルでの国際協力を促進することです。
岸田文雄首相は、2023年1月にアメリカのジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院で開催された会議で、「我々は、我々の価値観により深くコミットするとともに、彼ら(グローバル・サウス)に関与するに当たっては、先入観を排して謙虚になり、彼らの歴史的・文化的背景をしっかりと理解する必要があります」と述べています。
溝を埋める
複雑で分断された世界において、日本は国際協力の活性化に役立つ北と南の対話を促進することができるユニークな立場にあります。2024年にダボスで開催された年次総会でのセッション、「変化する道筋(Japan's Bet on Cooperation)」において河野太郎デジタル行財政改革担当大臣が言及したように、「日本の宗教的中立性は、ヨーロッパの主要国とは一線を画しています。日本は、異なるグループ間の架け橋となることができる」のです。
慶應義塾大学の政治学者、細谷雄一氏も、同様の見解を述べています。「日本は、人権だけでなく、人間の尊厳の尊重といった国際規範や価値観の尊重に基づいた対話を確立したいと考えています」。
2023年9月の国連総会において、岸田首相は「人間の尊厳」という共通言語に新たな光を当てることで、国の体制や価値観の違いを乗り越え、「人間中心の国際協力」を着実に進めていくことを提言しました。
グローバル・サウスにはほとんどの新興国が含まれ、また、北と南の国々が交差する場所に位置し重要なプレーヤーでもある中東、特に湾岸協力会議(GCC)の国々は、特に国際貿易、開発金融、エネルギーの分野において、長期的な目標を達成するために先進国市場と途上国市場と協力する重要な立場にあります。
日本は、中東と友好的な関係にあります。石油輸入の95%を中東に依存しており、また、中東地域の安定は様々な観点から極めて重要であるとの認識の上で、欧米とは異なるアプローチをとっています。日本で最も影響力のある経済団体である経団連は、中東との経済関係の重要性を訴え、エネルギー転換と安全保障、国際貿易・投資の促進の観点から、2022年に湾岸諸国との戦略的関係を強化することを提唱しています。
アライアンスの強化
中東は、収益や発電に関して世界の石油および天然ガス市場に影響を与え続ける一方で、再生可能エネルギーを推進し、この分野のリーダーになることでエネルギー転換を加速させています。
また、中東地域の多くの国々が、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を増やす計画を実施しています。国際再生可能エネルギー機関によると、中東では再生可能エネルギーへのエネルギー転換が顕著です。この地域では、増大するエネルギー需要を満たし、経済成長を促進し、社会経済的利益を最大化することで脱炭素化の目標を達成する必要性から、先進的かつ野心的なエネルギー投資と多様化計画が進められているのです。
自然エネルギーへのエネルギー転換の分野で、日本が中東とさらに協力する機会は多岐にわたります。三菱重工業のグループ会社である三菱パワーは、地域最大の水素燃料混合プロジェクトを完了しました。
また、三菱重工業とアブダビ首長国100%出資の多角的エネルギー・石油化学大手グループであるADNOCは、2023年にBlue NH3バリューチェーンとBlue H2バリューチェーン(水素バリューチェーンの一部)を構築するため、低炭素協力の機会を模索することに合意しました。
日本最大の発電事業社であるJERAは、PIF(サウジアラビア公共投資基金)とグリーン水素開発を加速すると発表。また、同社は中東の重要性を踏まえ、2021年にドバイにJERA Middle East & Africa Management Co.を設立しました。同社は、コンバインドサイクル発電所、大規模再生可能エネルギープロジェクト、グリーン燃料生産イニシアティブの開発を目指しています。
協力の推進
岸田外相は、2023年7月に首相就任後初めて中東を訪問し、日本と中東のグリーン変革やエネルギー転換といった新たな協力分野で合意しました。
また同年9月には、サウジアラビアのリヤドにおいて、第1回日本・GCC外相会合及び閣僚級ワーキングランチが開催されました。両地域は、経済的な関係を強化するために協力を深めることに合意。中東地域における様々なセクターに関する長期計画を進めるとともに、パレスチナを含む地域の平和と安定に向けた取り組みを推進し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への取り組みを強化します。
自由貿易協定の促進から、テクノロジー、エネルギー転換、気候変動対策の促進まで、日本は中東とのパートナーシップを強化することで、北と南の架け橋となり、それぞれの地域と世界の安定と繁栄を向上させることができるのです。
日本と中東におけるエネルギー転換、産業変革、平和のための協力への機運が高まっています。
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