Civil Society

「ホームレスW杯」が、ネットフリックス映画にインスピレーションを与えた理由

The Homeless World Cup is a global football tournament that has positively inspired the lives of millions worldwide.

ホームレス・ワールドカップは、世界の何百万もの人々の生活にポジティブな影響を与えたグローバルなサッカー大会です。 Image: Netflix

Mel Young
President, The Homeless World Cup
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  • 世界には、1億人以上のホームレスがいます。新型コロナウイルスのパンデミック以降、多くの国でその数は増加しています。
  • しかし、ホームレスの状態を解消することはできます。世界各地で成功したプログラムから、安全な住居を持たない人々の数を減らす方法が分かってきました。
  • ネットフリックスの映画にもなった「ホームレス・ワールドカップ」もその一つです。

ホームレスの状況は世界中で深刻化しています。その現れ方は国によって異なりますが、共通しているのは、課題が「排除」に関するものだということ。ホームレスの人々は、違う世界に住んでいるというのです。

ホームレスの増加を示す一つの厳しい指標は、米国における過去1年間のホームレスの大幅な急増です。住宅費の高騰や、コロナ禍における救済措置の多くが終了したことなど、いくつかの要因がこの増加を後押ししています。

2005年に国連が実施した世界調査では、世界で1億人がホームレス状態にあると推定されました。米国では、65万人以上が恒久的なシェルターに入居しておらず、これは、2007年に作成された最初のレポート以来、最も多くのホームレスが記録されていることを意味します。また、この数には、2022年以降の12%の増加が反映されています。

ホームレス・ワールドカップ」にインスパイアされた映画『ビューティフル・ゲーム』が、3月29日にネットフリックスで公開され、ホームレス問題とその対策が大きな話題となっています。

More than 650,000 people in America lack permanent shelters.
米国では、65万人以上が恒久的なシェルターに入居していません。 Image: Statista

ホームレスの現状

ブラジルは、ホームレスが増加している国の一つです。2010年代、原油価格の下落によって歳入が減り、同国の経済はさらに悪化しました。

その後の経済不況によって、数百万人が貧困とホームレス状態に。新型コロナウイルスのパンデミックが追い打ちをかけたブラジルでは、2021年以降、極度の貧困に陥る人々の割合が12%を超え、2,700万人にまで上昇しました。これは、オーストラリアの人口を上回る数です。

ブラジル人の4人に1人がホームレスか「不十分な住宅」に住んでいます。住宅不足は首都リオデジャネイロで顕著で、住民の推定20%が、ファベーラと呼ばれる貧民街に住み、水道や衛生設備がなく、医療と公教育を受けることができていません。そのブラジルが、2010年にリオデジャネイロでホームレス・ワールドカップを開催しました。

ホームレス問題への取り組み:サクセスストーリー

フィンランドでは、「ハウジング・ファースト」のコンセプトの導入後、ホームレスの数が激減しました。ホームレス状態に陥った人々は小さなアパートの一室を与えられ、何の前提条件もなしにカウンセリングを受けます。これらはすべて、ホームレス状態になるよりもお金がかかりません。

このセクターの一般的な慣行では、ホームレス状態にある人々は、支援を受ける前に仕事を探し、疾患や依存症を治療する必要があります。そうして初めて、住居探しの支援が受けられるようになるのです。

しかし、ハウジング・ファーストはこの慣習を覆します。ホームレスの人々にはまず、土台となる住居が提供され、ソーシャルワーカーが社会手当の申請や、彼らのニーズをサポートします。当事者は、新しい安全な住まいを得て仕事を見つけやすくなり、心身の健康管理もしやすくなります。

その成果は素晴らしいものでした。ホームレスの5人に4人は、同プログラムを通じてかなりの期間にわたり住居を維持し、より安定した生活を送れるようになりました。

また、フィンランドでは、ホームレス撲滅のために企業と政治の善意を活用した協力体制があります。世界の国々がそれぞれのホームレス問題に取り組む中、フィンランドの戦略は貴重な教訓となり、ホームレスの割合を減らそうと努力する他の国々にとっても青写真となるでしょう。

スポーツを活用したグローバルな取り組み

スポーツも、ホームレスの課題を前進する役割を担うことができます。スポーツには人々の生活を変える力があるからです。

ホームレス・ワールドカップ財団は、毎年、グローバルなイベントである「ホームレス・ワールドカップ」をプロデュースしています。この大会は、サッカーという世界共通の言語を用いて、参加者の生活を一新し、このグローバルな課題に対する世間の考え方や態度を変えることができる力を持っています。

サッカーをグローバルな支援ネットワークとして活用することで、自分たちの家を持とうと奮闘する人々を支援し、励まします。自分自身の人生を変える力がわいてくる環境を生み出しているのです。

ホームレス・ワールドカップ財団の68の加盟国から成る国際ネットワークが、毎年10万人以上のホームレスの人々を刺激し、彼らの生活をより良いものに変えています。2003年に始まって以来、同大会は、120万人の生活にプラスの影響を与えてきました。これは、スポーツの持つグローバルで比類なき魅力を活用して現実の課題に取り組んだ事例です。

ホームレス・ワールドカップの2023年サクラメント大会では、「カタリスト2030」」の協力のもと、同財団が、ホームレスの課題に取り組む都市による初の会議を主催しました。カタリスト2030は、世界経済フォーラムの2020年年次総会で立ち上げられたイニシアチブです。

また、都市は、ホームレスが最も集中している場所であると同時に、社会的、財政的、政治的に生じる課題も最も多いのが特徴です。ホームレスの課題に取り組む都市、学者、ソーシャル・イノベーターのネットワーク「シティーズ・エンディング・ホームレスネス(Cities Ending Homelessness)」は、各都市にホームレスが生まれる原因を解明することで、意思決定者とソーシャル・イノベーターのチームをマッチングし、都市のニーズに合わせた創造的なソリューションの開発を支援します。この戦略には、ホームレスの人々の声が不可欠です。

ロザンヌ・ハガティ氏のリーダーシップの下、米国のNPOであるコミュニティ・ソリューションズは、ホームレス状態をなくすため「10万人の家(100,000 Homes)」キャンペーンや「ビルト・フォー・ゼロ・キャンペーン(Built for Zero Campaigns)」、ホームレス状態を生み出す状況を変えるために住民と機関を結びつける近隣パートナーシップなど、大規模な変革イニシアチブを展開しています。現在、米国の100の都市と郡が、コミュニティ・ソリューションズを通じて、この目標を達成するために協力しています。

グローバルな経済格差が縮小している一方、多くの国で国内の経済格差は広がっており、グローバルに見ると貧富の差は急速に拡大しています。このような状況において、ホームレスは重要な課題です。ホームレスは今も昔も存在し、避けることのできないものと考えられがちですが、そうではありません。

フィンランドでの進展、コミュニティ・ソリューションズやシティーズ・エンディング・ホームレスネスのようなイニシアチブは、ホームレスを減らすことが達成可能な目標であることを証明しています。世界中で多くの前向きなソリューションが導入され、その影響は拡大しつつあります。こうした取り組みは、世界中の人々に真のインパクトを与えています。今こそ、より早く、より多くの行動を起こすときなのです。

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