ベルリンの空港跡地を「気候中立都市」に。すべての生き物が住みやすい街を目指す
私たちは、どのような街で暮らしていきたいのだろうか? Image: Tegel Projekt GmbH
私たちは、どのような街で暮らしていきたいのだろうか?
車に支配された都市を表現したイギリスのデザイナーの作品に対して、同国の首相がコメントしたり、バルセロナをはじめとした世界各国の都市でウォーカブルシティが増えていたり、車優先の社会から脱却する動きが加速している。
そんな中、ドイツの首都・ベルリンでは、廃港となった空港を活用した新しいプロジェクト「Berlin TXL」が注目を集めている。かつてはベルリンの玄関口として利用されていたベルリン・テーゲル空港は2020年に閉鎖されたが、その跡地が持続可能な新しい地域として生まれ変わる予定なのだ。
空港の一部の建物は再利用され、かつてターミナルだった場所は、企業の研究所やスタートアップのオフィスとして活用されている。Urban Tech Republicと呼ばれ、リサイクルやモビリティなどサステナビリティ関連のスタートアップも研究・開発を行う。
また滑走路があった場所周辺の40万平米以上(東京ドーム約8.5個分)のエリアは再開発が行われ、約5,000戸の木造アパートが建設される。Schumacher Quartierと呼ばれるこの住宅地には、公園、大学のキャンパス、スポーツ施設、託児所なども設置予定で、どこへでも徒歩で移動できるようにウォーカブルシティになる予定だ。
さらに地区内には、広い自転車専用レーンもつくられる予定だ。身体の不自由な人などを除いて車でのアクセスは制限され、駐車場も限られる。つまり、Schumacher Quartierは車のためではなく、「人」ために作られる地区なのだ。
「私たちは、人々が社交の場、遊び場、くつろぎや語らいの場として公共空間を再発見できるようにしたいと考えています。幼稚園、学校、パン屋、スーパーマーケットなど、近隣の重要な場所には徒歩で簡単に行くことができます」と広報担当者のDöll氏はFast Companyに対してコメントしている。
また都市の雨水管理と冷却を体系的に促す目的を持つ「スポンジ・シティ」の設計も含まれる予定だ。このプロジェクトでは、表面に植物を植えた「緑の屋根」が水を貯め、公園や緑地に植えてある樹木が、余剰水の自然な蒸発を加速させる。つまり暑い時期にはより多くの水が蒸発し、エネルギーを消費することなく住宅地が冷やされるのだ。また降水量が増えても、従来のような都市型の下水道システムによって排水されることなく、地中にゆっくりと浸透していくため、洪水を防ぐことができる。
さらに、都市空間に生物多様性を取り組むAnimal-Aided Design(動物支援デザイン)も組み込まれている。生態学者Wolfgang Weisser氏と造園家Thomas E. Hauck氏が考案したこのコンセプトは、「人と動物のためのまちづくり」を目指し、特定の動植物が住みやすい環境を整えることを強調している。そのため、この地域に生息するイエスズメやヒナバッタなど14種の希少種が、巣作りや食料を確保できるように屋根や公共スペースが設計される。地域住民にとっても自然とつながるきっかけとなり、豊かさをもたらすだろう。
プロジェクト全体のデザインはまだ完成していないが、Urban Tech Republicはすでにオープンし、Heat Storage Berlinをはじめサステナビリティ関連の企業が動いている。居住地区Schumacher Quartierも2028年には一部工事は完了し、住民が住み始める予定だ。使われなくなった空港が、形を変えて、住民に親しまれる地区になるのも遠くはない。
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