Equity, Diversity and Inclusion

女性の健康向上が鍵となる、経済成長への道すじ

企業が女性の健康に対する取り組みを強化し、理解を広げることで、女性が経営陣に進出しやすい環境が整備されることも期待されます。

企業が女性の健康に対する取り組みを強化し、理解を広げることで、女性が経営陣に進出しやすい環境が整備されることも期待されます。 Image: Unsplash/Emma Simpson

Kiriko Honda
Interim Chief Representative Officer, Japan, World Economic Forum
Naoko Tochibayashi
Communications Lead, Japan, World Economic Forum
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  • 経済産業省は、更年期症状や婦人科がんといった女性特有の健康課題による社会全体の経済損失が年3.4兆円程度に上るとした試算を発表しました。
  • 具体的には、職場の理解、最新技術を使ったケアなどが挙げられています。また、こうした取り組みは、離職を防ぐ上でも重要であるとしています。
  • 女性の健康格差の縮小は、約39億人の女性が健康で充実した生活を送る可能性を意味すると同時に、年間1兆ドルの経済生産性向上が見込まれるとしています。

健康は、生産性の向上、医療費の削減、労働力の安定など、経済成長にも大きく影響します。こうした観点から、女性の健康向上についても、さまざまな議論や取り組みが行われています。

経済産業省は、更年期症状や婦人科がんといった女性特有の健康課題による社会全体の経済損失が年3.4兆円程度に上るとした試算を発表しました。具体的には、職場の理解、最新技術を使ったケアなどが挙げられています。また、こうした取り組みは、離職を防ぐ上でも重要であるとしています。

「女性の健康問題は過小評価されていた。女性の管理職割合を高めるためにも課題の解決が欠かせない」と、東大大学院の山口慎太郎教授は指摘します。

たとえば、役職に就く40~50代に関わる更年期。2021年にNHKが複数の専門機関と共同で行った調査では、「更年期離職」を経験した人の数はおよそ46万人におよぶという結果が出ました。この数字をもとに、離職によって収入が減ったことなどによる経済損失は、約4200億円に上ります。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳とされ、日本産婦人科学会は、閉経前の5年間と閉経後の5年間を併せた10年間を「更年期」としています。更年期世代の40~50代の働く女性を対象とした調査によると、更年期の症状のひとつ「不眠」が73%に至りました。睡眠は「日中に脳細胞の間にたまった有害なたんぱく質を除去するために不可欠な『脳の掃除』の時間」であるとロチェスター大学トランスレーショナル神経医学センターの共同責任者マイケン・ネーデルガード氏は述べています。身体の不調を、仕方がないことと当事者だけの問題とせず、社会全体で環境作りを行うことは、生産性の向上や、しいては経済成長に不可欠なのです。

女性の健康向上への対策として、2016年頃から欧米で使われ始めた「フェムテック」も、日本で徐々に浸透してきています。Female(女性)とTechnology(技術)をかけあわせた、女性特有の健康上の課題を技術の力で解決する商品やサービスを指す、フェムテック一般的な定義を「生物学的女性に特有もしくは発生する可能性が高い健康課題に対するソリューション」としているフェムテックに加え、女性の健康をケアする製品「フェムケア」を合わせると、その市場は前年比107.8%の695億100万円と推計され、2021年から市場が拡大していることがわかります。一方で課題も見えています。2023年時点で、認知度は38.1%であったという調査結果からも、フェムテックが「女性のためのもの」という点で理解が止まっており、具体的な内容の把握には至っていない事が明らかになりました。米国の調査会社は2019年に820億円のグローバル市場が、2025年には5.5兆円になるといった見込みも発表しています。「フェムテック」「フェムケア」分野の今後の成長に十分なポテンシャルが示唆されることからも、普及活動は重要です。

職場の理解

企業による女性の健康に寄り添う取り組みも、聞こえてきます。タイヤや化工品を手掛けるブリジストンは、女性特有の健康課題を、テクノロジーを活用し解決するプログラムを全社的に導入した事を発表。女性のみならず、全従業員が正しい知識の理解・習得をすることを目的とした女性の健康課題の周知活動を導入し、「全従業員が正しい知識の理解・習得をすることを推進し、従業員一人ひとりが輝ける職場環境の整備を強化」することをめざします。ロート製薬は、ほてりや発汗、動悸(どうき)、頭痛、関節痛といった症状を伴う、更年期障害への取り組みを展開。2020年より、補助制度を導入し、健康問題が顕著となり始める40~50代への支援をめざしています。また、職場での理解を広げることも重要であるとする丸井グループは、性別特有の健康課題の解決に取り組む「ウェルネスリーダー」を設置。リーダーは年4回の学習会に出席し、更年期障害などの健康課題を学び、職場で共有します。

女性の健康格差の縮小

女性の健康向上は単なる個人の健康管理だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上やジェンダーダイバーシティの推進にもつながる重要な要素でもあります。また、その上で、テクノロジー、制度、そして寄り添う環境の整備が不可欠です。

世界経済フォーラム 日本代表代行 本田希里子

2000年に厚生労働省が開始した「21世紀における国民健康づくり運動」の「第三次」目標の運用が2024年度から始まるにあたり、同省は「女性の健康を明記」にも言及しています。「人生100年時代を迎え社会が多様化する中、『誰一人取り残さない健康づくり』や『より実効性をもつ取り組みの推進』を行う」ことが掲げられており、女性の健康向上の重要性がここでも強調されています。

また、グローバルに目を向けると、世界経済フォーラムのレポート、「Closing the Women’s Health Gap: A $1 Trillion Opportunity to Improve Lives and Economies(女性の健康格差の是正:生活と経済を改善する1兆ドルの機会)」は、女性の健康格差の縮小は、約39億人の女性が健康で充実した生活を送る可能性を意味すると同時に、年間1兆ドルの経済生産性向上が見込まれるとしています。

男女の働き方について厚生労働省が行った調査では、企業の課長級以上の管理職に占める女性の割合は2022年度で12.7%といった結果が出ています。国際的にも低いとされるこの割合を上げるためにも、企業が女性の健康に対する取り組みを強化し、理解を広げることで、女性が経営陣に進出しやすい環境が整備されることも期待されます。

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