グローバル・サウスの道路交通安全を向上させる、3つのアプローチ
![Participants in the Global Alliance of Cities for Road Safety (ACRoS) city-to-city exchange on road safety in Cape Town shared experiences by walking the city.](https://assets.weforum.org/article/image/1sxL78w5ZN8dzis7SbJ5XC3SkZULhfHmhI_pMR33Wa8.jpeg)
世界都市交通安全アライアンス(ACRoS)のメンバーは、交通安全の向上に有効な3つのアプローチについて議論しました Image: Ashraf Hendricks
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都市と都市化
- 世界保健機関(WHO)によると、5歳から29歳までの若者の死因の第一位は交通事故です。
- 中でもアフリカは、交通事故の死亡率と、歩行者および自転車利用者の死亡率が世界で最も高い地域です。
- 「世界都市交通安全アライアンス(ACRoS)」のメンバーは、すべての人のための安全な街と道路の再構築に必要な3つのアプローチについて議論しました。
「耐え難い痛み、苦しみ、心の傷が、ケープタウンの道路交通安全担当者を夜も眠れないほどに悩ます理由です。」これは、先頃ケープタウンで開催された国連ハビタットの「世界都市交通安全アライアンス(Global Alliance for Cities on Road Safety, ACRoS)」の都市間交流会で、ソロムジ・ムドランガソ氏が語った言葉です。
急速な都市化、整備不十分なインフラ、普及の進まない啓発活動など、道路交通安全の課題は多岐にわたります。根本原因が複雑であるとはいえ、人命に関わるため、緊急の対応が求められる差し迫った課題です。
世界保健機関(WHO)によると、5歳から29歳までの若者の死因の第一位は道路交通事故。中でもアフリカは、交通事故の死亡率と、歩行者および自転車利用者の死亡率が世界で最も高い地域です。
死者数の多さにもかかわらず、政策や資金の面で道路交通安全への対策強化が必ずしも優先されているわけではないのが現状です。
こうした状況を変えるため、南アフリカの交流会で、ACRoSネットワークの市の職員たちは、すべての人のための安全な街と道路の再構築を優先するために必要な3つのアプローチについて議論しました。
1. クリエイティブな資金調達
道路交通安全に対し、優先的に資金が割り当てられていないことは明らかです。各都市の既存の予算は限られており、新たな資金の流れを作り出す必要があります。
一つのアイデアは、気候資金の提案の中心に道路交通安全の要素を組み入れること。気候変動と道路交通安全との間に関連性があることはすでにわかっているためです。さらに、道路交通安全が他の課題とも密接に関わっていることを考慮すると、公衆衛生、観光、公園とレクリエーション、芸術と文化などの分野に、交通を組み込むこともできるかもしれません。
具体的な介入のために資源を集めることも強力な手段となります。たとえば、今回の視察で浮き彫りになった多くの課題の一つは、路面標示の改善と道路標識の整理。いくつかの都市で課題となっている、良質なペンキの入手に必要な資金の調達方法についても議論されました。
また、保険会社などの企業がヨハネスブルグなどの都市と提携し、国の計画停電期間中に信号機が機能するよう支援した例もあります。もし、道路交通安全がビジネスに利益をもたらすことをより効果的に伝えることができれば、企業による介入が促進されるでしょう。
2. 若者とともに、若者のために
ムドランガソ氏によると、ケープタウンの道路で命を落とす人の50%以上が35歳未満であり、他のアフリカの都市でも同様の傾向が見られます。この年齢層は、アフリカの人口の大部分を占めるため、世界の国や都市に与える潜在的な影響を過小評価するべきではないでしょう。
こうした課題への取り組みとして、モザンビークの首都マプトからウガンダの首都カンパラにかけての広域で、子ども達のための安全な通学路の整備が進められています。同様に、新たな運転指導も進行中。たとえば、リベリアの首都モンロビアでは、市当局が、将来のドライバーを育成するプログラムを開始し、運転に伴う責任への認識向上を図っています。道路交通安全の重要性を強調したカリキュラムは、より良い運転文化の醸成に役立つでしょう。
歩行者や他の交通弱者の行動変容を目的とした公共キャンペーンが多く行われていますが、何よりも、ドライバーが安全運転することが事故を未然に防ぐ鍵となります。モンロビアは、責任感ある新たなドライバー世代を形成する上で、他のアフリカの国や地域の模範となるでしょう。
ケープタウンでは、市当局と地元のNGOであるChildSafe SAが連携し、「安全な登校(Walking Safely to School)」プログラムが実施されています。このパートナーシップは、道路交通安全の課題への認識を高めるだけでなく、国際的な資金を活用して、同市の最大のタウンシップ(旧黒人居住区)であるカエリチャの通りのインフラのの整備も実現しています。
3. 類似する状況での経験の共有
ACRoSの傘下では、アフリカや中東の市の職員たちが、道路交通安全の向上を目指す統一した取り組みのために協調しています。課題の大きさに対し資金が限られていることから、容易な道のりではありません。
グローバル・サウスの道路交通安全への対策強化に十分な資金が割り当てられていない理由の一つに、資金の大半が、安全な道路交通が実現しつつある先進国から流れてきていることが挙げられます。例えば、ヨーロッパにおける交通事故による死亡者数は、2019年から2023年の間に10%減少しています。
グローバル・ノースでは、道路交通安全が交通事故の数と関連して定義される傾向がある一方、グローバル・サウスの都市では、犯罪、不十分な報告システム、質の悪いベーシックサービス、政府のキャパシティといった他の要因が関係していることを念頭におき、対処する必要があります。
南アフリカの道路交通を徒歩や自転車で体験した一週間は、同じ状況下における経験を共有することの重要性を浮き彫りにしました。ケニアのナクル市長であるギタウ・タバンジャ氏が強調したように、ニューヨークとは比較できなくとも、ケープタウンが何を成し遂げたかを見れば、他のアフリカの都市も同様のことができると行動を起こすことができるでしょう。
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