災害復興の歩みをリードする、日本の挑戦
課題が浮き彫りになる一方、過去の被災者支援では例のない革新的な取り組みが進められています。 Image: via REUTERS
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サプライチェーンと輸送
- 元旦に能登半島を襲った地震は、245人の命を奪い、7万6,114棟の住宅に甚大な被害を及ぼしました。また、水道網の損傷が壊滅的で、約3万7,000戸で断水が続いています。
- 復興に向かう道のりで直面する課題は、過去の地震や津波から学び、必要に応じて計画を修正する重要性を示しています。
- 世界が足並みを揃え、異なる災害から得られた教訓を統合したより包括的でレジリエント(強靭)な災害対策を講じるためには、官民とNGOの国を超えた連携を強化する必要があります。
2024年、新年を迎えた日に、石川県の能登半島を最大震度7(マグニチュード7.6)の地震が襲いました。石川県では、245人の死亡が確認され、住宅被害は7万6,114棟に達しました。冬の厳しい寒さの中、多くの住民が被災し、発災から1カ月が経った時点でも約1万5,000人が避難所に身を寄せています。自宅から離れた地域にある旅館やホテルなどの「二次避難所」で生活しているのはこのうち約5,000人。避難所生活が長期化し、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの急性呼吸器系感染症が拡大しつつあり、石川県の避難所における感染者数が100人を超える日が続きました。
被害を増幅した地域特性
半島奥地という地域条件や、過疎化・高齢化という社会環境といった地域特性が脆弱性となった今回の地震被害。土砂崩れなどで道路網がほぼ壊滅したことで、能登半島の沿岸や山間部にいくつもある集落が孤立し、被災者の生存率が落ち込むとされる発災後72間までの安否確認や救助活動、また物資輸送に課題が生じました。
人口がこの10年で17%減少した能登地域。今回特に甚大な被害を受けた、珠洲市、輪島市、能登町、穴水町は、2050年までに住民が半減すると推測されていました。過疎化により高齢者だけが暮らす、改修を行わないままの世帯が多いという背景が被害を広げました。珠洲市の住宅耐震化率は51%、輪島市は45%と全国平均の87%を大きく下回っています。
また、過疎地域では、機能が損なわれたインフラの復旧にも時間を要します。今回の地震で特に壊滅的な損傷を受けたのが水道網。発災から1ヶ月以上が過ぎた段階で、県内7市町の約3万7,500戸で断水が続いています。
過去の教訓から、迅速な対策を
こうした復興プロセスで直面する課題は、過去の地震や津波から学び、必要に応じて計画を修正する重要性を示しています。また、予期せぬ大きな被害が発生した場合は、迅速かつ柔軟に対応する事も必要です。
1995年の阪神・淡路大震災以来、大規模な地震に何度も見舞われてきた日本では、耐震や防火など、地震を念頭に置いた防災体制の強化やインフラの整備などが重要視されてきました。災害時の一般車の使用を制限できる「緊急輸送道路」の導入が全国で広げられたのも、阪神・淡路大震災で主要な幹線道路の寸断により、緊急車両の通行が妨げられた教訓からです。今回の地震は、全国で路線強化や代替ルートの確保が急務であることを浮き彫りにしました。
また、能登地震の初動対応に遅れがあったとの見方を示す専門家は、道路の寸断など地理的な要因の他に、発災後の被災状況を把握するシステムが十分に機能していなかったことに原因があると指摘。各地域が、災害対策をそれぞれの地理的・環境的特性に合ったものへと見直し、被災者を中心に据えて国、県、市町が連携を強化することの必要性を強調しています。
革新的な取り組みが後押しする被災者支援
課題が浮き彫りになる一方、過去の被災者支援では例のない革新的な取り組みが進められています。
道路の寸断や空港の閉鎖といった障害を克服するために動き出したのは、自衛隊と企業の連携による一気通貫の物流システム。支援物資の輸送には、自衛隊のヘリコプターが都市部や海上からの空輸を行い、物流業者が荷さばき倉庫での物資の管理やトラック配送に対応。交通路が閉ざされた最後の避難拠点までは、自衛隊員が物資を配送しました。
また、国内5社はドローンによる捜索や被災状況確認、物資輸送等の初期災害時支援活動を実施。さらに、スタートアップのWOTAは、断水時でも温水シャワーや手洗いを利用することができる自律型の水循環システムが避難所に導入し、最先端のフィルター技術に水センサーとAIによる解析を組み合わせた同システムにより、100リットルの水を約100回再生利用することを可能にしました。
グローバルな災害対策を
約6万人もの犠牲者を出したトルコ南部の大地震から、今月6日で1年が経ちました。町は当時の甚大な被害がそのままに残され、住宅再建の見通しが立たない中、今もなお69万人の被災者が避難生活を強いられています。
自然災害のリスクは特定の都市、地域、国に限った課題ではありません。世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2024年版」は、今後10年間に世界が直面する最大のリスクは異常気象であると警告。気候変動の影響に伴い、激甚化・頻発化する自然災害へのグローバルな対策強化の緊急性を浮き彫りにしています。また、昨年5月に開催された「仙台防災枠組中間レビュー・ハイレベル会合」においても、防災投資を拡大し、気候変動による災害リスクを効率的に管理していく必要性が強調されました。
世界が足並みを揃え、異なる災害から得られた教訓を統合したより包括的でレジリエント(強靭)な災害対策を講じるためには、官民とNGOの国を超えた連携を強化する必要があるでしょう。同時に、AI(人工知能)やドローンなど進化するテクノロジーを防災・危機管理や被害状況の把握、被災者支援に最大限活用することも不可欠です。
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