仕事とスキル

2024年の世界の労働市場が2023年の成功を繰り返す可能性

Someone working on a welding project. Caption: Global labour market: There are several reasons for cautious optimism in 2024.

世界の労働市場 - 2024年に慎重な楽観論が成り立つ理由とは。 Image: Photo by PTTI EDU on Unsplash

Svenja Gudell
Chief Economist, Indeed Inc
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本稿は、以下会合の一部です。世界経済フォーラム年次総会
  • 2023年のグローバルな労働市場は、落ち込みと完全な停滞は別物であること、そして、冷え込まずとも低迷する可能性はあることを証明しました。
  • 2023年に市場を緩和した同じ力が2024年も引き続き作用するだろうと、慎重でありつつも楽観的な見方がされているのにはいくつかの理由があります。
  • 生成AIやその他のテクノロジーの利用が増加し、それらのツールを開発する仕事が増えることで、労働市場全体が再構築される可能性があります。

上がったものはいずれ必ず下がります。しかし、2023年、世界の労働市場は、緩やかな落ち込みと完全な停滞は別物であること、そして市場は、完全に低迷せずとも、緩やか冷え込む可能性はあることを証明しました。

世界の主要なトレンドのいくつかがこれまでと同様に進化し続ければ、2023年に市場を緩和した同じ力が2024年も引き続き作用するだろうと、慎重でありつつも楽観的な見方がされているのにはいくつかの理由があります。

2021年と2022年には、雇用需要の高まりに応じて労働者の獲得競争が激化し、賃金上昇が加速、世界的に失業率が低下しました。その後、労働市場は2023年に一旦冷え込んだものの、その大部分は攻めの姿勢によるものであり、市場は暴落することなく修正されました。

雇用需要は現在、一段落して求人総数は減少したものの、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前のベースラインを大幅に上回っています。賃金の伸びはインフレに伴い鈍化しましたが、多くの地域で労働者の購買力を高める十分な力強さを維持しました。失業率は低水準で推移し、解雇は急増せず、労働市場の混乱は徐々に薄れてきました。

グローバルな雇用状況は明らかに売り手市場です。2022年のピークを大きく下回ったものの、2023年11月末時点の求人総数は、「インディード求人指標(Indeed Job Postings Index)」が追跡している7カ国でパンデミック以前の水準を上回りました。

また、雇用主の多くは現在の従業員を手放すことに慎重です。例えば、米国カナダ英国では、レイオフ、解雇、人員削減の通達はいずれも歴史的に低い水準でとどまっています。労働者に対する雇用需要が、現在の水準かその前後で横ばいになれば、2024年も2023年と同様の状況が続く可能性があります。しかし、さらなる需要減退の場合は、もっと厄介になるでしょう。2024年の見通しは、労働需要の方向性だけでなく、今後の減少が主に雇用の減少によってもたらされるのか、それともレイオフの増加によってもたらされるのかにも左右されると考えられます。

労働者もまた、離職をためらう傾向にあります。2021年と2022年に歴史的な急上昇を見せた米国の離職率は、パンデミック以前の水準に戻りました。離職率が低下するということは、雇用主は将来的に、転職する労働者ではなく、未就業者を雇用して人員を満たす必要が出てくることを意味します。2024年には、競合他社から候補者を引き抜くために大幅な賃上げを提示する必要がなくなる雇用主にとっては歓迎すべきニュースかもしれないです。また、インフレ抑制の重要な要素である賃金の伸びを抑えることができるかもしれません。

現在の賃金と物価の伸びの鈍化を考えると、典型的な賃金・物価スパイラルの可能性はますます低くなっているように思われます。しかし、インフレは依然として懸念材料であり、2024年の賃金上昇ペースは微妙なバランスを保たなければなりません。つまり、インフレ率を上回り、労働者の購買力を高めるのに十分なペースで上昇しながらも、インフレを再燃させない高さに賃金上昇を抑えておく必要があります。今の所、米国と欧州ではこのバランスがほぼ取れていますが、インフレ率は上回っているものの、賃金上昇率が高止まりして生活コストの上昇が続いている状況です。

失業者や能力を十分に発揮できる仕事に就いていない労働者を新たな労働力として引き入れ続けることは、世界的な労働人口の高齢化への対抗策にもなり得ます。労働人口の高齢化は、労働市場の安定を今後も維持する上で最大の脅威です。米国では、生産年齢人口に占める65歳以上の高齢者の割合が、2023年の17.5%から2035年には20.9%に増加すると予想されています。日本では、10年前には65~69歳の国民の40%未満しか雇用されていませんでしたが、現在では、その年代の半数以上が雇用されています。人口の高齢化は、労働者の需要(特に、ヘルスケアなどの部門)が依然として高いにもかかわらず、働くことができる労働者のプールが将来的に縮小することを意味します。

過去数年間、多くの先進国では、女性や障がい者など、以前は積極的に雇用されていなかった労働者を労働市場に呼び戻したこともあり、労働力参加の合計を高い水準に引き上げることに成功しました。移民の受け入れも一助となっています。米国では、外国出身の労働者が総労働力の約20%を占めています。また、2023年半ばにIndeedで検索されたオーストラリアの求人情報の約17%は、オーストラリア国外からアクセスされたものでした。これは、10%未満だった2017年から2020年の平均を大きく上回っています。しかし、必要な雇用を確保するために他社から人材を引き抜いたり、故郷から遠く離れた場所への移住を促すことには限りがあり、人口動態の変化は重くのしかかります。

将来的には、労働力人口が減少する中で生産性を高め、より少ないリソースでより多くの仕事をこなせるようにする必要があります。新たなAI(人工知能)テクノロジーがまさにそれを可能にするかもしれません。初期の兆候としては、生成AIツール、特に、人間が作ったような文章、音声、画像を生成するChatGPTのようなツールは、ほとんどの仕事を完全に置き換えるのではなく、むしろ補強する可能性が高いことが示唆されています。AIが反復的で単調なタスクを引き受けることで、人間がより生産的な仕事に集中できることを可能にするでしょう。また、このテクノロジーがまったく新しい仕事を生み出すことも期待されています。生成AIに関連する仕事がすべての仕事に占める割合はまだ小さいものの、世界中で雇用主がテクノロジーを活用できる労働者の採用を急いでおり、事実ゼロの状態から急速に増加しています。

生成AIやその他のテクノロジーの利用が増加し、それらのツールを開発する仕事が増えることで、労働市場全体が再構築される可能性があります。ただし、こうしたツールを使用する仕事ではなく、主にツールを作成する仕事が増加する場合、AIと生成AIによる経済的なインパクトと生産性の向上は小さくなるでしょう。

雇用需要の高い環境が必ずしも恒常的なインフレを引き起こすとは限りません。また、失業率が急上昇することなく賃金の伸びが鈍化することや、労働市場を離れた労働者が再び労働市場に戻ってくることもあり得ます。2023年の世界の労働市場は、これらのことを示す一年となりました。とはいえ、市況が弱まりつつあるのも事実で、米国経済は今のところかなり好調を維持していますが、欧州やアジアのいくつかの経済は穏やかな景気後退に陥りかけているか、すでに陥っている可能性があります。

私たちは、比較的痛みを伴わないリバランスの道のりで最も簡単なハードルはすでにクリアし、最も高く困難なハードルが残る、レースの最後1マイルの段階に突入しているのかもしれません。2024年は、ここに述べたように楽観的な見方もできますが、何かが保証されているわけではないのです。

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