メタバース活用事例:バーチャルな一歩を重ねてよりよい世界へ
すでに数多くの企業や公共団体がメタバースを活用しています。 Image: Accenture
Iris Vimbai Jumbe
Lead, Marketing and Communications, Global Collaboration Village, World Economic Forum最新の情報をお届けします:
テックとイノベーション
- アクセンチュアとマイクロソフトとのパートナーシップによる世界経済フォーラムのイニシアチブ「グローバル・コラボレーション・ビレッジ」は、次世代テクノロジーを活用した目的主導型のプラットフォームです。
- 企業、各国政府、市民社会、アカデミアから約140の組織が、同イニシアチブに参画し、多様なメタバース活用事例から得た専門知識を提供しています。
- これらのユースケースユースケースは、メタバースが、教育、産業、ヘルスケア、社会的インパクトに革命をもたらす可能性を強調するもので、現実世界に存在する課題の解決に向け、様々な分野に適応できることを実証しています。
「グローバル・コラボレーション・ビレッジ(Global Collaboration Village)」は、多様な背景を持つリーダーや意思決定者を結集させ、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の可能性を活用して複雑な課題の解決を目指すイニシアチブです。先日、約140のビレッジ・パートナーから成るコミュニティが招集され、選び抜かれた人々が革新的なメタバース活用事例を紹介しました。これらのアプリケーションは、教育、ヘルスケア、建設、ビジネス分析、気候変動の認識など幅広い分野にまたがっており、没入型体験の変革力を浮き彫りにしました。
教育と学習の強化
香港科技大学は、世界初のツインキャンパス・メタバース・プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、物理的なキャンパスを再現し、ユーザーが遠隔操作でキャンパスを移動したり探索したりできるようにするものです。物理的な距離や移動の制限といった課題に対処し、学生や教員は実際にキャンパスに来なくても教育・研究活動を継続できるようになります。また、魅力的でインタラクティブな体験を提供し、大学が今とは違うやり方で遠隔教育や研究機会を提供できるようにします。
教育分野ではこれ以外にも、ULリサーチ・インスティテュートが安全科学教育に力を注いでいます。このミッションは、Webベースのプラットフォーム「Xplorlabs」を利用したインタラクティブなデジタルツインを通じて実施するもので、2D Webベースのプラットフォームから、複合現実(MR)のデジタルツインを活用したプロジェクトへと発展させることで、学生や教育者に科学と工学の知識を提供します。
このプラットフォーム「UL Safety-Verse」は、リアルタイムの双方向性と没入型の学習体験を可能にします。その目的は、科学的概念のより深い理解、学習意欲の向上、理論と実践の橋渡し、学生同士の共同学習の促進です。このユースケースは、教育と安全科学に革命をもたらすメタバースの大きな可能性を反映していると言えるでしょう。
ヘルスケアと社会的インパクトにおけるイノベーション
メタバースは、予防医療や患者エンゲージメントのアプローチにも変革を起こしています。インドの多国籍医療グループ、アポロ・ホスピタルズは、この技術を最前線で活用。同社のメタバース製品「ProHealth DeepX」は、臨床健康情報と現実のギャップを埋めます。AIを活用して心臓の健康リスクを評価するスコアで、一人ひとりに合わせた洞察の提供、心イベントの予測、個人に合わせた介入を行います。この没入型体験により、ユーザーは自分の心臓の健康状態を目で見て把握できるようになり、予防医療を具体的でパーソナライズされたものに変革しています。
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)の「SustainableMTech」コアリションは、ヘルスケア領域を超えて幅広いプレイヤーを結集し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿った社会的インパクトを新しいテクノロジーと組み合わせています。概念実証の構築、革新的な方法論にを用いた進捗状況の追跡、国際的な政府間機関に影響を与えることに焦点を置いたPwCのアプローチは、コラボレーションと社会変革を促進するメタバーステクノロジーの可能性を示しています。
サステナブルな環境構築に注力
北極圏の専門家、科学者、コミュニケーションの専門家で構成されるチーム「アークティック・ベースキャンプ」は、北極の変化に伴うグローバルリスクに対する意識を向上させ、スケーラブルなソリューションが今すぐに必要であることを強調することで、大胆な気候変動対策を促す「科学を力に変える」活動を行っています。また、「アークティック・リスク・プラットフォーム」は、北極の変化に伴うグローバルな気候リスクを強調。北極の極端な温暖化は、地球上の他の地域にもリスクの連鎖を引き起こしているのです。
チームの専門家たちは、グローバル・コラボレーション・ビレッジの中で、北極の変化とグローバルリスクとの関連性を可視化するためのエクスペリエンス、「ポーラー・ティッピングポイント(極地の転換点)・ハブ」を開発。気候の転換点とそれがもたらす連鎖的なリスクを独自に視覚化することで、意思決定者は極地の温暖化の緊急性を把握することができ、気候変動に対処するための集団的行動も促進されます。
サウジアラビアのエネルギー企業アラムコは、気候変動緩和、沿岸保護、生物多様性の保全におけるマングローブの重要性を紹介する没入型体験を作成しました。このバーチャルツアーは、サウジアラビアにある実際のマングローブ生態公園を3Dで再現しており、魚や鳥の観察などをしながら環境を実感できます。2035年までに、世界中に6億5千万本のマングローブを植林し、炭素貯留を支援するという野心的な取り組みへの認識を高めることを目的としたこのメタバースアプリケーションは、環境問題を自分ごととして捉え、コミュニティでサステナブルな活動を広める人を増やすことを目指しています。
産業と都市開発を変革
SAP社は、アナリティクス、結果シミュレーション、人間とコンピュータの相互作用によって企業をサポートするメタバース対応プラットフォームを構築しています。この没入型デジタルツイン体験は、ユーザーが直感的にデータを操作し、資産の健全性の監視、サプライチェーンデータの可視化、ビジネスシナリオのシミュレーションができるようにします。このユースケースは、デジタルツインがどのように資産集約型産業を変革し、事業運営を合理化できるかを示しています。
サウジアラビア北西部に新たに誕生した地域、NEOMは、都市建設に拡張現実(XR)とIoT技術を採用しています。これは、建設現場のデジタルツインを作成し、VRシミュレーションとリアルタイムのIoTモニタリングを通じて、より良い意思決定を促進するものです。このアプローチにより、安全性、ロジスティクス、建設後の品質が向上します。このプロジェクトは、都市開発におけるメタバースの役割と、デジタルツイン技術で長期的なリターンが得られる可能性を示しています。
文化遺産保護の強化とクリエイティブ産業への投資
フィリピン情報通信技術省は、イノベーション、新興技術、クリエイティブ産業を重視し、ゲームアニメーション、映画開発、拡張現実(XR)に関連する研究開発プロジェクトを支援するため、資金提供を受け付けています。社会課題の解決を目的として作られるシリアスゲームや、ゲーミフィケーションのアプリケーションが、様々な分野で開発されている中、フィリピンは、デジタル資産の取引、没入型体験、仮想イベントなどを行うメタバース・プラットフォームの可能性も模索しています。このユースケースは、新興テクノロジーと国の研究優先事項との整合性、大学や機関との協力の役割を強調しています。
バルセロナのユネスコ世界遺産であるカサ・バトリョは、文化遺産分野を変革するために、メタバースとWeb3を活用しています。デジタルアーティストと協力し、文化遺産施設の現場での没入感を高める製品や体験を創造。革新的な方法で文化遺産を保護しつつ、カスタマイズされた他にはない体験で訪問者を魅了します。
あらゆる分野で可能性を秘めたメタバース
これらのユースケースは、教育、ヘルスケア、環境・社会的インパクト、都市開発、文化遺産など、多様な分野におけるメタバースの可能性を示しており、メタバーステクノロジーがいかに変化を促進しているかがわかります。グローバル・コラボレーション・ビレッジは今後も拡大を続け、次世代テクノロジーによるイノベーションの拠点として、リーダーや意思決定者に没入型体験や3Dツールを提供し、現実世界のソリューションを加速させていくでしょう。
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