エネルギー転換

きれいな飛行機雲、実は地球に有害?世界の最新テックでその解決法を探る

この飛行機雲が、実は地球温暖化の原因になっているという。

この飛行機雲が、実は地球温暖化の原因になっているという。 Image: Getty Images/iStockphoto

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ふと見上げた空に飛行機雲をみつけたら、あなたならどんな想いを抱くだろうか?昨年パリに引っ越した筆者は、飛行機雲がいく筋もついたコンコルド広場の空を見て「これだけ飛行機が飛んでいるなら、きっと家族や友人がパリに遊びに来てくれるだろう」と、寂しさが和らいだのを思い出す。

この飛行機雲が、実は地球温暖化の原因になっているという。しかも、その影響は飛行によるCO2排出よりも大きいというのだ。何気なく見上げていた飛行機雲が、いったい環境にどんな影響を及ぼすのだろうか。

2022年のIPCC報告書では、飛行機雲が航空による地球温暖化への影響の約35%を占め、世界のジェット燃料による影響の半分以上を占めていると指摘している。

飛行機雲は、ジェットエンジンから放出される小さな粒子を核として、水蒸気が凝結して氷の結晶になり形成される。ほとんどの飛行機雲は数分間で消えるが、大気の状態に応じて巻雲として数時間持続する場合もあるという。

飛行機雲は、日中には太陽光を反射して宇宙に戻す働きをするが、夜間には宇宙に逃げていくはずの地球の熱を閉じ込めて吸収し、温室効果を作ってしまう。これが、飛行機雲による地球への悪影響だと示唆されているのだ。

インペリアル・カレッジ・ロンドンの調査では、飛行機雲は、湿度が高く大気の薄い層でのみ形成されることが報告されている。シュミレーションでは、1.7%のフライト高度を変えることで、飛行機雲を59%削減できることが判明した。飛行経路の変更による燃料消費量の増加は10分の1にも満たないという。

アメリカのカーネギー研究所による試算では、飛行機雲対策にかかる費用は年間10億ドル未満であるのに対し、得られる利益はその1,000倍以上だというから、その経済効率は抜群だ。これらの報告をもとに、飛行機雲が発生しないよう飛行経路を調整し、気候変動に対応する動きが活発になってきている。

たとえば、英国のSATAVIA(スタヴィア)社は、飛行機雲の形成を低減するソフトウェアと分析ツールを開発した。飛行機雲を発生させる可能性のある5〜10%のフライトを特定、それらが離陸する前に飛行計画を変更する取り組みを行っている。2021年に、スタヴィア社の技術を採用したアラブ首長国連邦のエティハド航空は、今年初めに同社と飛行機雲を管理する複数年契約を結んだ。将来的には、カーボン・クレジットを生成することを目指して協力していくという。

Google Research(グーグル・リサーチ)社は、衛星画像、気象、飛行経路データなどの膨大な量のデータを収集し、AIを使用して飛行機雲予測マップを作成した。その結果、パイロットは飛行機雲を作らない飛行経路を選択できることがわかった。

ビル・ゲイツ氏らが創設したBreakthrough Energy Contrails(ブレークスルー・エナジーコントレイル)は、飛行機雲発生の可能性が最も高い場所を予測し、飛行機雲を回避するルートを計画するソフトウェアを開発している。最終的な目的は、飛行機雲の発生を回避する飛行経路を、パイロットが選択できるようにすることだ。

アメリカン航空は、ブレークスルー・エナジーの飛行機雲回避ルートとグーグル・リサーチのAI予測を使用して、6か月間で70回のテスト飛行を実施した。今年8月に発表した結果によると、パイロットが飛行ルートを調整することで、飛行機雲の発生をを54%減少させることができ、その際の追加燃料の消費は2%だったという。

既存のデータを使用した予測では、CO2e (二酸化炭素換算) トンあたり約5~25ドルで飛行機雲を大規模に回避できることになり、ここでも費用効果が非常に高い気候変動対策ということが証明された。

Image: Getty Images/iStockphoto

欧米では、鉄道などに比べCO2排出量が多い航空機に乗るのは恥ずかしいという「フライトシェイム」の声が高まっている。今月初めには、欧州最大手の格安航空会社ライアンエアの社長が、環境活動家から顔面にクリームケーキを投げつけられる事件もあった。

人間が出すCO2排出量の約2%の要因とされている航空産業は、その排出量を削減すべく、持続可能な航空燃料や、燃料消費率向上を担うソフトウェア開発、航空機のハイブリッド電動化、水素燃料など様々な取り組みを行っている。今年の6月に開催された国際航空運送協会(IATA)の年次総会では、初めて飛行機雲の地球温暖化への影響が議題に上がったという。

今まで注力していたCO2排出とは別の視点で、気候変動への影響を削減することができる可能性は、他の産業にとっても発想転換のきっかけになるだろう。ましてや、それがコストがかからず効果が高い方法ならばなおさらだ。

持続可能な旅を心がけても、費用や時間の制約の中では飛行機の利便性が高い場合もあるだろう。そんなときに、フライトシェイムを感じずに移動できる日は、意外と近いかもしれない。

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Shunichi Miyanaga

2024年1月11日

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