英国、新たなフレキシブル・ワーキング法を制定 – 柔軟な働き方の普及が求められる理由
生産性向上のために最も重要なのは、労働時間に柔軟性を持たせることです。 Image: Unsplash/Lucabravo
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- 英国の新しい雇用関係法は、柔軟な働き方を要求する従業員の権利を拡大しました。
- フレキシブル・ワーキング法を導入している、もしくは法改正の検討を進めている国が増えてきています。
- 世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2023」によると、働く時間や場所に関する柔軟性を重視する人が増えてきています。
在宅勤務を意味する「WFH」という略語は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が残した最もレジリエントな遺産のひとつであると言えるでしょう。
自宅に設けた間に合わせのオフィスに人々を押し込めたロックダウンは、過去の出来事となりましたが、これをきっかけに変化した世界の何百万人もの人々の働き方は、より永続的なものとなりそうです。
英国で、2023年に制定された新しい雇用関係法(フレキシブル・ワーキング法)には、従業員が柔軟な勤務形態を要求することができる権利が追加されました。今後、労働者は、年に2回柔軟な働き方に関する要求を行うことができるようになり、雇用主は2カ月以内にその要求に応じなければなりません。これまで、要求を行う従業員に対し、勤務パターンの変更が組織に与える影響についての考えを詳細に説明することが求めてられていましたが、新法ではこの要件が削除されました。
法案が法律として署名された際、ビジネス・貿易大臣のケビン・ホリンレイク氏は、柔軟な働き方は従業員にとってもビジネスにとっても良い効果をもたらすとする様々な研究に言及しました。「柔軟な働き方は、学校の送迎、勉強、友人や家族の世話など、個人が仕事と私生活での役割とを両立する手助けとなるだけでなく、企業がより多くの有能な人材を惹きつけ、人材の定着率を高め、労働力の多様性を向上させるためにも有益であり、ビジネスの観点からも理にかなっています」と主張しました。
世界の働き方の現状
フィンランドでは、1996年にフレキシブル・ワーキング法が制定されました。同国が導入している労働時間法では、従業員は職場での労働において、始業・終業時刻を3時間前倒しまたは後ろ倒しすることが認められています。また、2020年の法改正に伴い、労働者は、労働時間の半分の働く場所を自由に選ぶことができるようになりました。
ポルトガルは、柔軟な働き方におけるパイオニア的存在です。同国では、8歳までの子供を持つ親に対して、雇用主と交渉することなく自宅で働く権利を与えています。また、企業へは、在宅勤務者が負担する電気代やインターネット代などの費用を負担する義務が課されています。
チャイナ・ブリーフィングによると、中国では、固定の時間帯に縛られず、1日または1週間あたり一定の時間を、自分の都合のいい時間帯に分散させて働くことが許可されています。また、日本も、フレックスタイム制や週休4日制の見直しを検討している段階にあります。
米国では、公正労働基準法がフレックスタイム制に対応していないため、雇用主と従業員との間で労働時間の柔軟性に関して合意がなされる必要があります。
国際労働機関(ILO)は、より柔軟な労働時間の取り決めは、経済、企業、労働者に利益をもたらし、より健全なワークライフバランスの実現に役立つとしています。
グローバルな労働力、優先順位に変化が
KPMGは、2022年のグローバル調査において、リモートワークのトレンドについての調査を実施しました。調査対象となった世界の企業530社のうち、89%がリモートワーク戦略を導入している、または、導入を検討していることがわかりました。
従業員の要望がリモートワーク導入の主な原動力となっており、25%の人がリモートワークに興味を示しています。
柔軟な働き方への移行に影響を与えるその他の要因には、有能な人材の獲得と維持、事業運営における柔軟性の必要性、コスト削減、持続可能性などが挙げられます。
フォーブス・アドバイザーに掲載された研究によると、米国では、現在40%以上の労働者が柔軟な働き方をしています。統計によると、フルタイムの従業員の12.7%が在宅勤務をしており、28.2%が、在宅勤務とオフィスワークを組み合わせたハイブリット型の働き方をしています。また、16%の企業が、完全リモートで運営されていることも明らかになりました。
世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2023」で引用されている研究によると、83%の人が働く時間の柔軟性を、71%の人が働く場所の柔軟性を最も重視しています。多くの雇用主が、従業員のオフィス復帰を推進しているものの、週の大半を在宅勤務とすることを希望する人は大多数を占めています。
柔軟な働き方は生産性を向上させる
多くの労働者は、柔軟な働き方によって生産性が高まると考えています。ITアドバイザリ企業のガートナーによる調査では、回答者の約43%が、労働時間に関する柔軟性が生産性を向上させる理由の第1位であると答えています。
さらに、回答者の30%は、通勤時間が短いほど、仕事ができる時間が増えると答えています。
柔軟な働き方は、転職希望者にとっても大きな魅力です。ガートナーの調査では、回答者の59%が、希望の勤務地で働ける仕事のみを検討すると答え、64%が、フレックスタイム制で働ける仕事をより選びたいとしています。
働く人の希望とビジネスの現実
パンデミックが起きて以来、パワーバランスは労働者に傾いていますが、ある調査によれば必ずしも彼らの希望が叶えられているわけではないようです。
「労働環境のグローバル調査2023(Global Survey of Working Arrangements 2023)」によると、多くの人が希望する時間の半分しか在宅勤務を実現できていないことがわかりました。
調査対象となった英語圏とラテンアメリカでは、従業員は、週の半分を在宅勤務とすることを望んでいます。しかし、英語圏の国々のフルタイムで働く従業員の平均在宅勤務日数は週1.4日に過ぎず、ラテンアメリカでは週0.9日というのが現状です。
柔軟性と平等
柔軟な働き方がより普及すれば、世界の労働市場における男女格差を縮小することができるでしょう。世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2023」によると、現在の進捗率では、全体的なジェンダーギャップを埋めるには131年かかるとされています。
多くの企業が、より女性が働きやすい環境の整備を優先的に進めているということも明らかになっています。世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2023」によると、79%の企業が、多様性、公平性、インクルージョンの取り組みにおいて女性を優先しています。
世界経済フォーラムの「グッド・ワーク・フレームワーク(Good Work Framework)」イニシアチブは、仕事の未来に向けた新たなアジェンダを示しています。
このアジェンダは、柔軟な労働条件の提供、多様性・公平性・インクルージョンの拡大などを含む、5つの柱で示されています。女性に柔軟な勤務パターンを提供することは、包括的な労働参加を可能にする重要な一歩となるでしょう。
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