Health and Healthcare Systems

なぜ、ミレニアム世代のがん罹患率が急増しているのか

若年層における早期発症がんのリスクが高まっています。

若年層における早期発症がんのリスクが高まっています。 Image: REUTERS/Nir Elias

Gabi Thesing
Senior Writer, Forum Agenda
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加工食品の摂取や座りっぱなしの日常が、健康に良くないことは以前から知られていることですが、うしたライフスタイルが、ミレニアル世代における早期発症がんの急増に関連していることが、新たな研究で明らかになりました。

フィナンシャル・タイムズ紙によると、過去30年間で、G20諸国の25歳から29歳のがん罹患率は、他のどの年齢層よりも急増しており、1990年から2019年の間に22%も増加しています。英紙は、ワシントン大学医学部の保険指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation)のデータを分析し、欧米諸国における20歳から34歳のがん診断が過去30年間で最高水準に達していることを明らかにしました。一方、75歳以上のがん患者は2005年以降減少しています。

このような早期発症は、悲劇的な健康被害であると同時に、長期的な政策的影響ももたらしています。2020年から2050年までの世界のがんによる推定コストは、2017年の実質価格で252億ドルになります。研究者たちによると、これは、世界の国内総生産に対する年間0.55%の税金に相当します。

なぜミレニアル世代に、がん患者が増えているのか

がんをより早期発見できるようになったということも、若年層におけるがん罹患率の急増の一因でもありますが、フィナンシャル・タイムズ紙の分析や複数の研究によると、加工食品を多く食べるようになったこと、日常的に座っている時間が長くなっていること、毒素などの環境リスク要因にさらされるようになったことなどが、若者の栄養状態に大きな変化を起こしているようです。

欧米のライフスタイルは、1950年代から60年代にかけて劇的に変化し、それ以降に生まれた子供たちは幼い頃からこうした変化にさらされてきました。科学者たちはこれを「出生コホート効果」と呼んでおり、世代が進むごとに、後年になってがんを発症するリスクが高くなる現象が起きているのです。

ハーバード・チャン・スクールおよびハーバード・メディカル・スクールの教授であり、早期発症がんに関する画期的な研究論文の共著者である荻野周史氏は、「1960年生まれの人々は、1950年生まれの人々よりも50歳未満でがんを発症するリスクが高く、このリスクレベルは若い世代ほど高くなると予測している」と語っています。

早期発症がんが増加している背景には、食生活の乱れと座りっぱなしの生活習慣が影響している可能性があります。
早期発症がんが増加している背景には、食生活の乱れと座りっぱなしの生活習慣が影響している可能性があります。 Image: Nature

食事がどのように関与しているか

荻野氏らが、若年層で増加傾向にある14種類のがんに関する世界のデータを分析したところ、早期発症がんの危険因子として、超加工食品と、甘い飲み物やアルコールの摂取が増加していることが特定されました

超加工食品が、マイクロバイオーム(ヒトの体に共生する微生物の総体)に与える影響に関する専門家であるティム・スペクター教授とクリス・ファン・トゥルケン博士によると、アメリカでは、現在、人々の摂取カロリーの60%以上が、イギリスでは、ヨーロッパで最も高い57%が、超加工食品です。マイクロバイオームは、ビタミンを生成し、免疫システムを調整し、食べ物の消化を助ける働きをしています。

荻野氏の研究によれば、食事、ライフスタイル、抗生物質の使用によって、健康に害を及ぼすものに変化してしまったマイクロバイオームは、「腫瘍発生のもう一つの顕著な要因」であるとされています。14種類の早期発症がんのうち、8つが消化器系に関連しており、そのことが「口腔マイクロバイオームと腸内マイクロバイオームの病原性の重要性を示している」と言います。

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フィナンシャル・タイムズ紙の分析によると、開発途上国が豊かになるにつれて、欧米式の食生活やライフスタイルが取り入れられるようになり、そのことが、50歳未満のがん罹患率の上昇につながっているといいます。1990年から2019年にかけて、ブラジル、ロシア、中国、南アフリカなどの高中所得国では、15歳から39歳のがん罹患率が、高所得国に比べて大幅に増加しました。

早期発症がんの増加に対抗するには、共同アプローチが有効です。
早期発症がんの増加に対抗するには、共同アプローチが有効です。 Image: Nature

急がれる政策的介入と官民連携

介入措置や予防策がなければ、将来の世代への影響は拡大するばかりです。すでに現在の若年層は、中高年層よりも早期発症のがんのリスクが高いのです。

荻野氏の研究では、健康的なライフスタイルと食生活の利点について、より多くの研究と意識向上を呼びかけるだけでなく、タバコ、超加工食品、飲料を生産する産業への規制といった政策的介入が必要だと言及されています。

また、一部の臨床医は、がん検診の対象年齢の引き下げを求めている、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じています。

現在、世界で毎年4,100万人もの人が、がんを含む非感染性疾患で命を落としています。世界経済フォーラムは、ステークホルダー、産業、国、部門が、連携して共通のヘルスとヘルスケアの目標を達成するために努力することが極めて重要であると、報告書「グローバルヘルスとヘルスケア戦略展望:ヘルスとヘルスケアの未来を形作る(Global Health and Healthcare Strategic Outlook: Shaping the Future of Health and Healthcare」で、強調しています。

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