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ふるさと納税から考える税のあり方

ふるさと納税は、都市部と地方自治体の税収格差を緩和し、地方再生を図る目的で誕生した国の制度です。

ふるさと納税は、都市部と地方自治体の税収格差を緩和し、地方再生を図る目的で誕生した国の制度です。 Image: Unsplash/Namito Yokota

Naoko Kutty
Writer, Forum Agenda
Naoko Tochibayashi
Communications Lead, Japan, World Economic Forum
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  • ふるさと納税は、都市部と地方自治体の税収格差を緩和し、地方再生を図る目的で誕生した国の制度です。
  • 利用者は、寄付をした自治体から寄付金額の最大30%相当の返礼品が贈られることで、この制度は広く普及しました。
  • しかし、ふるさと納税による都市部の自治体の財源流出は、住民への公共サービスの低下が懸念されるほど深刻な課題となっています。

欧米に多く見られる1月から12月を会計年度とするのに対し、4月を年度初めとする日本独特の「3月締め」の時期を目前に、今年も、確定申告の季節がやってきました。1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、そこに課せられる所得税額を計算して確定させ、翌年3月中旬までに申告を求められる所得税の確定申告。昨年一年間に行なった「ふるさと納税」の控除申請もここで行うことになります。

ふるさと納税は、人口一極集中による、東京都をはじめとした都市部と地方自治体の税収格差を緩和し、地方再生を図る目的で、2008年に誕生した国の制度。納税者が、自分の選んだ自治体に寄付をすると、ほぼそれと同額の住民税や所得税が免除される仕組みとなっているこの制度、2021年度には740万余りの国民が利用しました。寄付総額は過去最高額となる8,302億円に達し、国の制度として広く定着してきています。

最も大きなメリットは、ほとんどの自治体から、実質的な自己負担額2,000円で寄付額の最大30%相当の返礼品と称する魅力的な商品を寄付者が受け取ることができるという点。利用者にとっては、もともと支払うべき納税総額のうち、決められた上限額までを自分が住む場所以外の自治体に「納税」すると、各地の郷土色豊かなグルメや特産品などをもらえるため、利用しないと損とも言われるほどのサービスに成長したのです。

ふるさと納税で拡大する自治体の事業

2021年に寄付額が最も多かった上位5の自治体のうち、3つを占めたのは北海道の自治体。魚介類や海産物をはじめとする美味しい特産物が豊富なことから、「食材の宝庫」と呼ばれる北海道ですが、全国首位となった紋別市には、約153億円の寄付が集まりました。寄付受け入れ額から控除額や経費を差し引いた分が、自治体の手元に残る実質収支になりますが、同市は76.9億円という、多額の黒字を確保しました。

ふるさと納税で得られた資金を使い、自治体は事業を拡大しています。町内にサントリーのビール工場を持ち、同社のビール生産量の半分近くを生産している群馬県千代田町は、サントリービールの主力商品を返礼品に取り入れることで、ビールの町としての売り込みを強化しました。この戦略が奏功し、2022年度の寄付額は30億円に達する見込みです。同町は、これを原資に充て、新たに1億円の予算を設け、子育て支援や移住促進、キャッシュレス決済の推進など、などの施策を積極的に展開する方針を示しています

子育て支援には、紙おむつやミルクなどの育児養親の購入費の助成対象を、満1歳から満3歳までに引き上げた上、年間の助成上限額を現在の3倍の3万6000円に増加。また、小中学校入学時に祝い金5万円を支給するなど、家計の負担軽減の具体策が盛り込まれています。

都市部と地方が抱えるそれぞれの課題

都市部の住民が、地方の自治体に寄付をする傾向が強いふるさと納税。税収が大幅に向上する地方自治体が増える一方で、都市部の自治体は本体ならば得られる税収を失い苦悩しています。東京23区全体では、2021年度に540億円以上が他自治体に流出しました。最も減収額が大きかったのは、人口と世帯数が東京23区の中で最も多い世田谷区の83億9,600万円。これは、区内の小学校の改築2校分以上にあたります。

また、三重県の四日市市は、年収1,000万円でふるさと納税のシティープロモーション戦略プロデューサーを公募し、話題を集めています。地方自治体の職員としては厚遇の求人を四日市市が募集した背景には、2012年以降10年連続してふるさと納税で赤字が続き、2021年度にはその額が年間8億円に達した同市の抱える厳しい状況があります。

都市部の自治体が財源流出に苦しむ一方で、その流出金額が地方の自治体にそのまま入るかというとそうではありません。少しでも多く寄付を確保するために、自治体間の返礼品競争が激化しており、ふるさと納税を受け取る自治体は、支払われた金額のおよそ半分を、返礼品やその広告費・事務処理費として使用しているのです。

税収が減少している都市部では住民への公共サービスの低下が懸念され、税収が増大したもののその半分の額を公共サービス以外のものに充てている地方自治体においても、税金の使われ方が問われます。こうした中、ふるさと納税は、税制度のあり方そのものを改めて検証する機会にもなり得るでしょう。

社会課題の解決や人々の暮らしを支えるための行政サービスとのバランスと、持続可能な地域振興の両方の観点から、本来の税の意味に則り、より良い税の使い道を見直す時がきているかもしれません。

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